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Open Reel Enesemble

『Open Reel Enesemble』

OPEN REEL ENSEMBLE

[label: commmons/2012]

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過去の機械から聴こえる未来の音

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文:河村祐介

 オープン・リール・テープ・デッキをその表現の中心にするライヴ・バンドという特異な編成で2009年より活動を続ける5人組のファースト・アルバム。若い方々にはその存在すらもすでに過去の異物として知られてすらいないであろうオープン・リールとは(といっても30に足をつっこみはじめた僕自身も使ったことなどない)、カセット・テープのようにカートリッジに入っていない大型の業務用のテープ/デッキのこと。その存在はぜひとも本作に付属している彼らのライヴ映像で確認してもらうのがてっとり早いが、70年代の音楽スタジオの映像や、SF映画のコンピューターで回っているあの映写機のフィルムのようなテープのこと。その音質の良さ、独自のスピード・コントロール性、編集性(直接テープを切り貼りする)などで、いわゆる録音機材を超えた創造の媒介として使われて来た。ポスト・ロックの元祖とも言えるCANの音源もオープン・リールの、その自由な編集能力で作られたというし(というかプログレ全体にそれはある)、80年代のDJたちはこの機材でリエデットを行いDJ発のリミックスの元祖とも言うべき行為を行った。そして鉄腕アトムの効果音などで知られる、本作にも参加している日本の電子音楽の第一人者、大野松雄などは、まさにそのコントロールでシンセサイザーのように未来の音を作り出した。そういえば一時期のボアダムズのステージでも使われていましたな。
 彼らは、このオープン・リールを数台、手動、もしくはコンピューター制御でコントロールし、ギターやベース、パーカッションなどともに楽器として“演奏”するのだ。そのコンセプチャルなサウンドは、音楽はもちろんこと、アート方面で高い評価を受けている。高橋幸宏、ビースティー・ボーイズなどとの共演で知られるマニー・マーク、前述の大野松雄、屋敷豪太、やくしまるえつこといった豪華ゲスト陣の参加。さらにはテープ・レコーダーを開発したソニーの創業者、井深大の語りもフィーチャー。
 もちろん、そのサウンドもすごいがぜひともライヴ映像を収録したDVDでその圧巻のパフォーマンスを観ていただきたい。ちなみにアルバムの真ん中にはコンセプチャルな“無音”、“Exchange”を収録。A面B面、いや、もうCDデータの1枚の収録時間など気にすることもなくなる時代がすぐそこに来ているいまの時代に聴こえる”無音“の良さがあります。

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