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A Golden Wheel

『A Golden Wheel』

Predawn

[label: Pokhara Records / HIP LAND MUSIC/2013]

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text by:加藤将太 

本当に待ちに待った。僕を含め、Predawnの音楽に魅了される誰もが、彼女がアルバムをリリースするというニュースに心を弾ませた。記念すべき1stアルバムと、前作『手のなかの鳥』から2年9ヶ月ぶりという空白期間のインパクトも影響したのかもしれないが、アナウンスのあった当日は、「Predawn」の名前がTwitterのトレンドワードに載るという一幕も。大手レコード会社の所属ではない、いちインディーズのミュージシャンであるPredawnの吉報は、多くの音楽ファンが彼女の地道な音楽活動に注目していることを物語っていた。

Predawnといえば、透明感に満ちた柔らかな歌声に、ギターを弾き語る凛とした佇まいを思い浮かべるが、音源制作において、作詞、作曲、演奏、歌入れ、編曲、録音、これだけの工程を彼女一人で完結させていることはご存知だろうか。ライブでは、弾き語り以外に、サポートメンバーを迎えたバンドスタイルで音源を再現することもあるが、頭の中で鳴っている音を具現化したいという目的を達成させるために、Predawnは一人で何役もこなそうとする。今作『A Golden Wheel』においても、そのスタンスを貫き、温かい質感のアコースティックサウンドはそのままに、ギターをバイオリンの弓で弾くボウイング奏法を採り入れたり、サンプリングした音をアナログ盤にして、盤を歪ませてもう一度録音したりと、実験的な音作りに挑戦している。また、彼女が学生時代に発表した自主制作盤『10 minutes with Predawn』の収録曲も、当時打ち込みだったパートを全て生楽器で再録。自身が今でも好きな楽曲たちは、より有機的な響きの音楽に生まれ変わった。

ところで、『A Golden Wheel』というタイトルは、Predawnの名前の由来になっている童話作家・小川未明の短篇作品『金の輪』からインスピレーションを得たものだ。ひとえにゴールドといっても、その輝き方は千差万様。『A Golden Wheel』はどんな光を纏っているのだろうか。間違いなくネオン街のようなギラついた色合いではないし、例えるならば、ヨーロッパの蚤の市で売られているアンティーク雑貨のような、全体的に少しくすんだ色彩。1世紀以上の年月を積み重ねて深みを増した金色のごとく、信念を持ったPredawnの活動も、ゆっくりと大きな円を描こうとしている。これから彼女の活動がどこまで広がっていくのか、僕は見届けていきたい。

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