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LIFE ANEW

『LIFE ANEW』

高橋幸宏

[label: ユニバーサルミュージック/2013]

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新しく始まったVery Famous Yukihiro Sound!

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text by 渡辺克己

 「タカタッ、タカタッ。YMOは凄く切れのいいスネアドラムの音で終わる曲が多いよね。僕も影響を受けたよ」。そう語ったのは、この春に来日したヴァンパイア・ウィークエンドのドラマー、クリス・トムソン。もちろん、これは高橋幸宏のドラミングのことだ。フェイドアウトせず、切りのいいところで終わる高橋幸宏楽曲を、元ジャパンのスティーヴ・ジャンセンが“Very Famous Yukihiro Ending”と命名し、世界中にファンは多い。とはいえ、まだ20代のクリスからフェイヴァリットドラマーの名前として高橋幸宏の名前が出てきたのはかなり意外だ。youtube効果といえば話は早いが、改めて正確なドラミングやアレンジが、時を経ても色褪せない音なのだと実感させられた。
 4年振り通算23枚目の『LIFE ANEW』は、自身が60年代〜70年代に体験したロックサウンドを改めて捉え直した「ソロキャリア初のロックアルバム」。ここでは近年印象的だったエレクトリックなリズムは姿を潜め、ほぼ全曲自身でドラムを担当。ジェイムス・イハ(g)、高桑圭(b)、堀江博久(key)、ゴンドウトモヒコ(eupho)と共に新バンド In Phaseを結成している。さらに、ジェイムスと高桑は楽曲を提供するなど、パーマネントなバンド形態で制作されたアルバムともいえる。ロックというと、どうしても激しいロックンロールを想像しがちだが、さまざまな音楽を通過した『LIFE ANEW』は、肩肘張らない穏やかな楽曲、美しいメロディが耳に残る。ザ・ビートルズやビーチ・ボーイズetc。ファンキーなビートはモータウンやアトランタの影響だろうか。レジェンドたちが作った音楽を踏襲しながらも、意外とどれにも該当しない。サラっと新しいロックを作り上げてしまっている。
 キッズが作るロックンロールは、情熱やパッションが命。それがカッコいい。一方、大人のロックには経験と英知を身に付けても、なお自由であろうとするやんちゃさがある。そんな遊び心がオーガニックで、豊かな音楽となって、多くの人を惹き付ける。だから、どちらかというと大人が作るロックの方が、影響面で後を引くし、タチが悪いのかもしれない。もちろん、いい意味で。

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