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try∴angle

『try∴angle』

TOKYO No.1 SOUL SET

[label: avex trax/2013]

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黄金のトライアングルが生み出す唯一無比の世界がここに!

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text by 小野田雄

 振り返ると、90年代のSOUL SETはニューウェイヴやレアグルーヴ、レゲエ、ヒップホップといった音楽を土台にしながら、オリジナルな存在であろうという狂気的な熱量がその音と言葉に渦巻いていた。当時の制作現場がどんな様子だったか知る由もないが、作品制作が難航しているという噂は何度となく耳にしていたし、個人的には再生した途端に向かう先のよく分からない音の塊に巻き込まれるスリリングなリスニング体験は気の遠くなるような試行錯誤から生まれたものなのだろうと想像しながら、彼らの作品を繰り返し聴いていた。
 しかし、現在の彼らは以前の彼らではない。川辺ヒロシのトラックはサンプル・フレーズそのものを用いるのではなく、サンプリングで構築した完成度の高いデモをオリジナルの音に差し替えるプロダクションへと移行。そのトラックにさらに渡辺俊美が生楽器やメロディーを加えて変化させ、BIKKEのリリックも思索のカオスから絞り出すのではなく、思いついたままの言葉をほとんど直すことなく吐き出すことで、より力強くストレートな作風へとシフト。そうして生まれた近年の作品からは、かつての試行錯誤が、自然体でオリジナルな作品を生む体勢へと昇華され、その制作スタイルも定まったことで、3人の歯車ががっちりと噛み合い、グループとしての推進力が高まっている強い印象を受ける。
 そんなSOUL SETの新作アルバム『try∴angle』は3人の定まった立ち位置を掘り下げ、前作『Grinding Sound』で感じられたエモーショナルな熱を音と言葉に塗り込めることで、深みや豊潤な味わいをぐっと引き立たせている。表層的に現行の音楽トレンドを反映させることはせず、長年に渡って培ってきたクラシックなブレイクビーツに、第4のメンバーであるSLY MONGOOSEのベーシスト、笹沼位吉や前作から引き続き参加しているマルチ・インスト奏者の上田禎、ハンマー・ダルシマー奏者の藤澤宙一らが集結。彼らのプレイヤーらしい現場感覚が加わることで高まった楽曲のリアリズムはこのアルバムの大きな魅力だ。
 また、クロスオーバーな音楽性を熟成させる一方で、彼らは前作から引き続きミックス・エンジニアにILLICIT TSUBOIを起用。時空を歪ませる卓さばきによって作品に鋭利な要素を加味し、さらに長年親交があった砂原良徳との初コラボ曲「One Day」ではSOUL SETのメロディ・センスや生音と砂原のエレクトリックなプロダクションを融合。既存のヒップホップ、R&Bの枠から図らずもはみ出してしまっている楽曲の個性は地図を持たずに行く先を切り開く現在のソウルセットを象徴しているかのようだ。変わらぬものと変わりゆくものの狭間で、依然として孤高の道を歩む彼らの背中が遥か先に見える本作は、多くの後続リスナーや音楽家に勇気を与えてくれる、そんな頼もしいアルバムである。

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毎年年末恒例となったTOKYO No.1 SOUL SET主催によるイベントが今年も開催決定!

LINE UP:TOKYO No.1 SOUL SET、鎮座DOPENESS & DOPING BAND-EXTRA SESSION STYLE-without 柿沼和成(DRUMS)、Houribe LOU
DJ:荒川良々

12/29の公演詳細はコチラから

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