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時が奏でる

『時が奏でる』

蓮沼執太フィル

[label: BounDEE by SSNW/2014]

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奏でられた音に、光を見る

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text by 中山夏美

2014年1月15日、蓮沼フィル結成4年にして初めてフルアルバム「時が奏でる」がリリースされた。1曲目「ONEMAN」は、蓮沼とコーラス木下美紗都の歌から始まる。男女混合ボーカルのポップさのなかで、弦楽器やドラムが気持ちよく鳴っている。「これから音を奏でます」と言っているような、始まりを思わせる曲。つづく2曲目の「Earphone & Headphone in my Head-PLAY0」も蓮沼執太らしい、軽快で気持ちのいい曲だ。だから、3曲目の「ZERO CONCERTO」を聞いたとき、そしてMVを見たときの衝撃はとても大きい。2曲目までの爽やかで明るくて軽やかだった雰囲気が突然、暗闇から始まる。しかも、演者はみな、泣いている。11分の曲とともに流れる、新宿駅で始発と朝を待つ人のストーリー。曲が進むにつれて、ひとつだった音が重なり合い、大きな音を奏で始める。それがたまらなく切なくて、苦しい。悲しくて泣いているのでも、嬉しくて泣いているでもなく、ただただ涙がでる。自分でも理解できない感情に動かされるように、とにかくその曲をリピートしてしまう。
4曲目からは、再び希望への扉を開いていくように、きれいな音を奏で始める。聞けば聞くほど、15個の違う音があることに気づく。15人の音が重なり合っていくことが、すごく気持ちいい。
ラスト8曲目に収録されている「Hello Everything」は、“音楽を奏でる楽しさ”を集約したような曲だと思った。後半、環ROYのラップとともに力強くなる音の波。どんどん重なっていくことで大きくなった波が、すべてを飲み込んでいく。そして、パチっと曲が終わった瞬間、幸福感を連れてきてくれる。
8曲を聞き終えてもなお、私のなかでフィルの音が鳴っている。その音には感情があって、でもそれにつける言葉は見つからない。もう一度「ZERO CONCERTO」を聞く。ストーリーのラストに流れる「時が奏でる音楽に耳を傾けながら、滲んだひかりのなか私はそれを見た」という言葉に、その感情は喜びなのかもしれないと思った。

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