FEATURE-REVIEW

人生、山おり谷おり

MONO NO AWARE

人生、山おり谷おり


Check

text by BOY 奥冨直人

折ったり開いたり、変幻自在のノスタルジーミュージック

東京・八丈島出身のメンバーを中心に結成された男女4人組・MONO NO AWARE(モノノアワレ)。
僕とメンバーとの出会いのきっかけになったFUJI ROCK FES.’16への出演や、
新宿・下北沢を中心にステージを重ね、着々と支持を得ていた彼らの待望のデビュー盤がリリースされた。

タイトルは、”人生、山おり谷おり”。チャーミングでありながらも、
まさに人生は折り紙の様に表裏一体かもしれない..なんて考えさせられる奥深さがあるネーミング。
冒頭を飾る”井戸育ち”から、搔きむしったギターサウンドと共に人生という旅が始まる。
井の中の蛙が外の世界に跳び出したいウズウズした感情に対して、vo.&Gt.玉置が優しく語る様に歌い上げる。

玉置が生み出す歌詞は、郷愁を感じさせる表現が盛り込まれていて、なおかつ文学的で風情がある。
日常に転がっている言葉を、束にしたり放り投げたりしながら、楽曲の印象をより濃厚なものにしている様に感じるのだ。
それを、捻くれたメロディーとエモーショナルなバンドサウンドにサラリと重ねてしまうのは、
彼らが持ち合わせた圧倒的なバランス感覚と美的感覚だと思う。

2000年代中盤、イギリスを中心に巻き起きたポストパンクリバイバルを通った世代としては、
この捻くれと美意識の感覚が非常に心地良いし、The CribsやFranz Ferdinandに夢中になっていた青春期を彷彿させる高揚がある。
シングルとして先行リリースされた”イワンコッチャナイ”は、和的なダンスパンクとしての成立が何とも見事で、アルバム後半の”To(gen)kyo”では、テムズビートの要素を感じさせるという音幅の広さ。
個人的に一推しの”ブーゲンビリア”は、繊細さと哀愁が入り交じる楽曲にポップ性とロック性が絶妙なバランスで調合されている。
そんな山も谷も越えたカラフルな旅の終点・ラストナンバー”駆け落ち”では、マスロック/ポストロックの影響も感じさせる変則的で緊迫感のあるサウンドを打ち出し、クライマックスに向かって一気に疾走していく。
1stアルバムにして、これだけの音色を楽しめる作品は稀有ではないだろうか。

彼らのモノ作りは、アートワーク一つとっても丁寧である。
玉置・加藤と同郷で八丈島出身のデザイナー・沖山哲弥が、ライヴスケジュールを各月でポスターデザインしたり、シンボリックなロゴ、そして今回のアルバムパッケージデザインも担当している。
タイトルから連想させる折り紙を、各楽曲ごとに合った折り方で表現していて、なんともノスタルジックな気持ちにさせられた。
玉置の生み出す歌詞はもちろん、デザインを含めて何度も開きたくなる歌詞カードである。
一貫したデザインイメージがバンドサウンドとフィットするのも、同郷ゆえの何か感覚的なモノなのかもしれない。

そう思うと、八丈島という場所にもとても興味が湧いてきて、1度訪ねてみたいなと思った。
その時は、旅のお供にこのアルバムをバッグに詰めたい。
旅に出るならいっそ、山おりも谷おりも楽しんでみたい。