FEATURE

INTERVIEW

SIMI LAB

SIMI LAB

twitter facebook

巨大な染みが人の形となって君と握手——ついにファースト・アルバムをリリースする注目のヒップホップ集団

 神奈川は相模原を中心に活動を広げる流動的不定形クルー、SIMI LABが満を持して発表したファースト・アルバム『Page 1:ANATOMY OF INSANE』。先行して発表されたQNやDyyPRIDE、SIMI LABの別働隊であるJ.T.Fのアルバム、もしくは数々のフリー・ダウンロード楽曲からも予見できる通り、本作も個性的なキャラクターたちによるアクの強いラップが印象的な好盤となっている。そんな彼らが12月3日、LIQUID LOFTで予定する本作のリリース・パーティーはバズワードであるSIMI LABというクルーの実態を掴む絶好のチャンスである。イヴェントに先駆けてメンバー(参加したのはQN、OMSB’Eats、DyyPRIDE、MARIA、DJ Hi’ Specの5人)のインタビューをお送りしよう。</br>

── そもそもSIMI LABっていうクルーは謎が多いですよね。まずは結成のタイミングから伺いたいんですが。

QN SIMI LABって名前自体は4年くらい前から使ってるんですよ。でも現在みたいな形になったのは……1年半くらい前かな?

OMSB’Eats 最初は俺とQNっすね。QNとはもともと別のクルーだったんですけど、たまたま〈SAG DOWN〉(町田VOXにてNORIKIYO率いるSD JUNKSTAが主宰するイベント)で出会って。“遊びに来てよ”って言われて、イベェントのフライヤーをもらったのを覚えてる。で、とくに期待もせずに行ったんですよ。そしたら意外と楽しくって。しかも、俺、はじめてステージに上がったのもそのイヴェントで。急にQNが“ヤバいフリースタイルできるヤツいるから”ってマイク渡してきて! あれ、完全に無茶振りだったべ?

QN いや、もう当時からオムスのキャラを把握してたんだよね。“コイツならできるだろう”って。



── ちなみにお互いの第一印象は?
OMSB’Eats これ、言っていいのかわかんないんだけど、第一印象は“オカマっぽいやつだな”っていう……。

QN おい、それ完全にNGじゃね? まぁ、俺は“なに、あのニガー。恐っ!”って思ってたけど。そんな第一印象だったけど、なぜか仲良くなって、お互いの家に遊びに行ったりしはじめたのが4年前くらい。当時、俺がやってたグループもグダグダな感じになっちゃってたし、オムスがなんか持ってる感じは直感であったから、一緒にやろうって話を持ち掛けたっすね。で、そこから活動をはじめたんだけど、2年くらい前にHi’ Spec、DyyPRIDE、MARIAって立て続けにメンバーが増えていって、それでかたちになったって感じですね。



── Hi’ Spec君はどういった経緯で?
DJ Hi’ Spec本厚木で友だちのやってるパーティーにDJで出てて、そこでオムスに会ったのが最初っすね。



── DyyPRIDE君は?
DyyPRIDE 俺はmixi経由ですね。

OMSB’Eats mixiってひさびさに聞いたなぁ。

DyyPRIDE mixiで“黒人”“ラップ”ってキーワードで検索したらオムスが引っ掛かって。それでメッセージ送ったら“とりあえず来なよ”って言われて。最初は“は?”って思ったけど“来ればわかるから”って。それがきっかけ。

MARIA その後にわたしが横須賀のクラブでDyyPRIDEに会ったんだよね。カッコいいなと思って声を掛けたんだけど。で、“ラップやってるんだけど”って話をしたら、QNとかオムスを紹介してくれて、って流れですね。2回目にみんなと会ったときには“WALK MAN”のトラック渡されて“ラップしてよ”って言われて



── なるほど。その“WALK MAN”はYoutubeにアップされて話題を集めましたね。率直な感想は?
OMSB’Eats “おおっ!”とは思ったっすけど、同時に“こんなもんでも話題になるんだ”って気持ちも正直ありましたね。





── “自分たちはまだまだこんなもんじゃないんだけど”みたいな?
OMSB’Eats そうっすね。



── あとメンバー各々の精神的役割みたいなものも訊いておきたいんですが。
OMSB’Eats この前、決めたんすよ。QNがリーダーで、俺が親分、MARIAが母親。

MARIA わたし、完全に母親だね。こないだもメンバー全員分の親子丼作って食べさせたり。

DyyPRIDE あれ、俺とHi’ Specがハブられてね?

OMSB’Eats ふたりはそうやって文句言う係なんだよね。あ、でもHi’ Specは思いやりがあるから、SIMI LABの優しさ担当。これ、浸透させていきたい。

QN もう家族みたいな感じっすよね。集まるのも、制作も、だいたい俺の家なんで、素の部分も全部見られてるんすね。それに慣れてるから、みんなには全部思ってること話しちゃう感じですね。



── SIMI LABってラッパーやDJ以外も含めた大所帯ですが、大人数のクルーへの憧れもありましたか?
QN それはありますね。地元のSD JUNKSTAの存在もデカいし。でもやっぱりウータン・クランの影響が強いかも。



── たとえばウータンのポジションを自分たちに準えるとするなら?
OMSB’Eats 俺はRZAって言ってますけどね、自分で。

QN 俺はメソッドマンかな。DyyPRIDEはODBっしょ。

OMSB’Eats あとUSOWAがマスター・キラーかな。そうなるとHi’ Specはインスペクター・デックだな。いちばん美味しいとこ持ってくタイプ。

MARIA ウータン、女いないじゃん!



── さて、そろそろアルバムの話題に移りましょう。今回のアルバムはSIMI LABにとってのデビュー作になるわけですが、事前にどんな構想がありました?
QN 俺はまだオムスのビートメイカーとしての才能が、あんまり世間に知られてないって思ってて。だから制作当初からオムスのトラック中心のアルバムにしようってのはあった。
DJ Hi’ Spec あとは自分たちだけでどれだけできるか。客演とかも入れずにクルー内で完結したアルバムにしようって話はしてましたね。

OMSB’Eats あと、甘ったるい作品にはしたくなかったっすね。もしかしたらSIMI LABって世間的にゆるいイメージがあるんじゃないかって個人的に思ってて。だから、そうじゃない別の側面も示したかったんです。



── 初作ということで難航した楽曲もあるんじゃないですか?
MARIA わたしは“Get Drowned”かなぁ。CDに収録されてるテイクにいくまでにけっこう悩んだんだよね。自分の納得のいくタイム感がなかなか出せなくって。

OMSB’Eats 俺もこの曲は書き直したな。最初は全然音に乗らなかったもん。

DyyPRIDE “Get Drowned”はサクッと書けたんだけど、“Brave New World”はマジ大変だった。曲のテーマは“もうすぐ世界が終わるかも”って内容なんだけど、俺にとっては“それで?”みたいな。

QN 身も蓋もねぇよ!

DyyPRIDE そうなんだけどさぁ、終わるときは終わるじゃん? その一言で済ましちゃったら成立しないから、結果、いろいろ無理矢理こねくり回したけどさ。



── では、このアルバムのベスト・パンチラインを各々挙げるなら?
MARIA 「パンチラインじゃないけど“Twisted”の自分のリリックは気に入ってますね。誰からも好かれようとするような女っているじゃないですか? わたしはそういう女がほんっと嫌いで。この曲ではそんな女に対してひねくれた角度から文句を言ってますね。あとは“The Blues”も好き。慎ましく生きよう、塵も積もれば……って気持ちで書きました。

QN あぁ、その2曲は俺も気に入ってる。書いてる段階ではそんなつもりなかったんだけど、結果的にポピュラーなリリックになったと思いますね。自分でもよく書いたなと思ったのは“ビッグになるって決めたんだろ、自分で”ってライン。自分自身に言い聞かせてるような感じがして、ふいに思い出すんだろうなぁ。フロウでフレッシュだと思うのは“Get Drowned”と“Moonbeam”っすね。特に後者は最近やりたいと思ってたスタイルでできたと思うっす。

OMSB’Eats 俺、DyyPRIDEのラインで好きなのあるわ。“目は口ほどにものを言う/どんなにごまかそうと見え透いたFuck You”ってやつ。自分のだったら“出ばな端折ってサクッとGo On/No Joke、とっととBlow Job Yo Yo”ってとこかなぁ。下ネタだけど。



── Hi’ Spec君はアルバムで気に入ってるラインはあります?
DJ Hi’ Spec たくさんあるけど、いちばん印象に残ったのはMARIAの“そのころから好きだったね、オナニーとヒップホップは”ってラインっすね。すごいインパクトがあった。

MARIA マジ? でも“Show Off”録ったときはすごいテンション高かったんだよね。

OMSB’Eats あと“巨大な染みが人の形となって君と握手”ってリリックはSIMI LAB的だし、絵が浮かぶなぁって思います。



── で、このアルバムを引っ提げて12月3日にはLIQUID LOFTでリリース・パーティーが開催されるということで、ライヴの話も伺いましょう。これまでのSIMI LABでのライヴで印象に残っているものは?
QN 俺は7月の京都でのライヴが印象に残ってますね。あのときのライヴはヤバかった。

OMSB’Eats 新代田の〈FEVER〉でやった〈AVALANCHE〉(7月に行なわれたSIMI LABが所属するレーベル〈SUMMIT〉のレーベル・ショーケース)のライヴも楽しかったな。イヴェント最後のフリースタイルも面白かったし。MARIAの締めもウケたよね。

MARIA 全然参加する気なかったんだけどね! 楽屋のソファーでのほほんとしてたら、みんなが“MARIA、なにやってんだよ!”って無理やり連れていかれて。フリースタイルとか無理だから断ってたんだけど、“ムサい男ばっかだから締めてよ”って。

QN いや、バッチリだったでしょ。

DJ Hi’ Spec あとは渋谷の〈Glad〉でやったライブじゃない?

QN あぁ、たしかに。あのライブで掴んだ感じはあったね。それまで各々がソロで呼ばれて、合間にSIMI LABの曲をやるっていう構成だったんだけど、あのあたりからクルーでのライブ構成を考えだしたって感じで。だから〈Glad〉でのライヴで得た成果は大きかったんじゃないかと。



── ちなみに、洋邦問わずパフォーマンスで見本となるようなラッパーはいます?
DyyPRIDE 俺はスヌープ・ドッグですね。大げさに動くわけじゃないのに、すごく目を引くっていうか。ああいう感じはなかなか出せないっすからね。

MARIA ミーハーみたいだけど、やっぱりレディ・ガガのパフォーマンスはすごいと思います。とにかく自分が目立ちたいって意識が強いじゃないですか。ああいう精神は大事だなって。わたし、周りを気にしちゃうタイプなんですよ。でも、前にライブが終わった後、環ROYさんから“さっき声出なかったこと一瞬気にしたろ? 周りとか気にしてんじゃねぇよ。期待してんだから頼むよ”って怒られたことがあって。それからは自分がカッコいいって思うことを伝えることだけに集中できるようになれた。その経験はデカかったですね。

QN 俺が忘れられないのは、バスタ・ライムスの“Touch It”って曲のライブ。あのエミネムはハンパない。

OMSB’Eats 俺もその動画(http://www.youtube.com/watch?v=BLcUdYQVsbY)見たときは鳥肌たった! それ、“Touch It”のリミックスに客演したラッパーが全員参加してるんだけど、最後のヴァースでエミネムが登場するんですよ。

QN あの全部持っていっちゃう感じはヤバい。“やってやるぜ!”って感じが出てる。ああいった気持ちは毎回持ってライヴやってるっすね。



── 最後にリリース・パーティーに向けての意気込みを訊いて締めようと思います。
QN まだライブの構成を練ったりしてないんだけど、今年中に達成したい目標があって。俺、客席にダイブできるようなライブがしたくって。

OMSB’Eats 俺もダイブしたい!

QN 前にLIQUID LOFTでライヴしたときにダイブしようと思ってスピーカーによじ登ったら怒られちゃって。だからリリース・パーティーではスピーカー登ってダイブするのが目標ですね。

OMSB’Eats あとはHi’ Specにもマイク持たせたいよね。むしろHi’ Specにマイク持ってもらいたい。マイク型の帽子みたいなの被せて、その後ろの部分にマイク仕込んでさぁ。

MARIA それ、書いちゃったらネタバレになんない?

OMSB’Eats 大丈夫! 先に誰かにやられないように原稿に書いてもらおうよ。



── 了解しました。書いておきましょう。
QNあとはKYN君とかGAPPER、FIND MARKET、LowPassも出るんで、かなり楽しみっすね。遊びに来るひとは期待しちゃって全然問題ないと思います。


ファースト・アルバム『Page 1:ANATOMY OF INSANE』リリース・パーティ!
2011.12.03 SATURDAY
SIMI LAB “Page1:ANATOMY OF INSANE” Release Party
@LIQUID LOFT(LIQUIDROOM 2F)
Starring…SIMI LAB、KYN (SD JUNKSTA)、GAPPER (PSG)、FIND MARKET、LowPass、DJ April a.k.a. Jugarjiru & More SIMI DJ’s!!!!! and more!?

詳しい公演情報はコチラ

  • 『Page1:ANATOMY OF INSANE』(SUMMIT)
  • SIMI LAB

QN、Earth No Mad、DyyPRIDEなど、各メンバーのソロ・デビューを経て、待望のタイミングでリリースされたSIMI LAB、グループとしてのファースト・アルバム。インタヴュー中にもあるように、グループ内の人員のみで作られた、まさに純度100%のファースト・アルバム。


RECENT INTERVIEW

INTERVIEW TOP

RECENT INTERVIEW

INTERVIEW TOP