rei harakami
エレクトロニカって言うとどこか敷居が高そうな気がするけど、昨年発売された『lust』はエレクトロニカという区分の音楽を聞いている限られた人たちだ けでなく、街に生活する私たちの日常の耳にすうっと入って来た。そんなrei harakamiから1年ぶりに新作が届いた。タイトルは「わすれもの」。ハラカミ氏が10代だった’89年に作られた作品から’06年までの17年間も の彼のわすれられそうになっていた音のスケッチが集められたものだと言う。ならば何となく色々聞いてみますか、色々忘れないうちに! ということ で・・・。
── 前作『lust』から約1年余りで今回の新作『わすれもの』がリリースされる訳ですが、このアルバムがコンピレーションアルバムになった経緯を教えて下さい。
「仕事です(キッパリ)。
いやいや(笑)、去年1stと2ndの再発騒動がありまして、そのときに良かったらオマケの曲入れてくれってレーベルの方からあったんで。で、色々探した らアルバム分くらいあったってことに気付いて。ただリイシューの時に3曲分は出しちゃったんで、でもそれでもまだ40〜50分はあるなって思って。
まあ、言い出せばまだまだあるんですけど、でもまあ変な言い訳なく出せるとしたらこのぐらいかな〜って感じで。あとはアトムのコンピのために出した曲(M -2)とかどこに売ってるの?って聞かれたりすることも多かったんで、せっかくなんで一度まとめてみようかな。というのとかも含めてやったと。」
── 様々な年代の楽曲が入っていますよね。M-10の<さようなら>は1989年の楽曲ですが、新しい曲と一緒に入っていても全然違和感がないですね。
「そうですねー。作った後で手を加えたものもあるし作った時のままのもあるし。
<さようなら>はカセットでMTRの4チャンで作ったものです。いつか出したいって思ってたんですけどバランス感的に浮いちゃうっていうのがずっと続いて いて。でも別に聞けちゃうでしょ?全然別次元の存在の仕方っていうふうにはなってないから入れたって感じで。カチッとはまったっていうか。良くも悪くもこ うやって聞いちゃうとやってること変わってないっていうことが僕自身わかったんです。」
── じゃあ『わすれもの』はハラカミさんのアーカイブ的なアイテムということになるんでしょうか。
「言 えばまだまだ出していない曲なんて腐るほどありますけど・・・う〜ん、なんでしょうね?それこそ、だから本当の意味で『lust』とかつくったから出せ た、っていうイメージが自分としてはやっぱ強くて・・・。で、タイミングとしては『lust』とあんまり間を空けずにくらいの間隔で出せると僕なりにもひ と呼吸置く感じが自分の中でとれていいかな、と。そんなこといいから早く『lust』より良いアルバムつくってよ!っていうのが世のリクエストだったりす る訳ですよ(笑)。そんなね、1年やそこらで作れないから。『lust』を超えるものなんて。でも長いスパンでものを作っているからこれも有りかと。」
── 今回に限らずハラカミさんの楽曲ってエレクトロニカと称されるものの中でも際立って情感的、というか感情のヒダに訴えかけるものが多いと思うんです けど、だから他のものと比べて聞き手が感情移入しやすいんだと思うんですね。そういう意味ではインストではあるけど歌ものに限りなく近い気がするのでもっ とジャンルに捕われず受け入れられる可能性があるのではないかと思うのですが。
「ちょっとずつですけど、まあ広がってきているんだろうなぁ〜って感じはしてますけど。だから、もともとですけど自分の立ち位置ってどこなのか良く分からなくなっているのは確かなんですけど・・・。」
── 立ち位置はそんなに気にされていないような気が(笑)。
「いや、立ち位置は気に・・・しなざるを得ない。気にしないことにするしかないです。どうせどこ行ってもアウェイなんだから。」
── ハハハ。そんなこと全然ないと思います。話が変わりますけど、ここ1〜2年はくるりや矢野顕子さんに代表されるようにジャンルの異なるアーティスト の方とのコラボレーション(remixやライヴでの客演なども)が取り上げられることも多かったと思うのですが、ハラカミさん自身の考える自身の考える rei harakamiの音楽、そして音楽とは別にパーソナリティとしてのチャームポイントはそれぞれどのようなところだと思いますか。
「難しい質問ですね。なんて言うんですかね〜。そうですね、ライヴでいうと僕自身が僕の曲のイメージをぶっ壊していくっていうか。そのまま気持ち良くはさせません!みたいな・・・ところ?(笑)・・・いや、わからないです。」
── それでは次はご自身のチャームポイントを・・・
「僕が僕の魅力を語れってことですよね!?いや〜、それはわからないですよ。自分でっていうと。本当に正直なこというと別に人前に
出るの得意なほうじゃないですからね。別に喋るのは嫌いじゃないですけど、大勢の人前でたった一人でなんか(やる)とか・・・そんなのすごいどうしよう?って感じでしたからね・・・。ほんとは。」
── ライヴでマイクを持ってお話されている印象もあるからかもしれないですけど、こうやってお話してても社交的な印象すら受けますけど・・・(笑)
「いや、気むずかしいですよ!!!」
── 話を戻しますけど、ハラカミさん自身からこの人とやりたい!という想いを強く持ったり、ということはないのでしょうか。
「いや、だから思う前に色んな人からきちゃうんで。受けてるだけで平気で2年とか経っちゃうから・・・。」
── で、気付いたら35に?みたいな感じですか?(笑)
「ほんとそんな感じですよ!たぶん次に気付いたら40になってますよ。ヘタすると。でも曲作ってるだけだと完全に内向きな感じなんで、そういうの(他のアーティストとの仕事)でようやっとバランス取れてるみたいな感じですかね。」
── 最後に7月に予定されている初の単独ツアーについて聞かせて下さい。なにか既に構想があったりしますか。
「いつもとあんまり変わらないと思いますけどね(笑)。」
── ツアータイトルがとても素敵ですね。これはハラカミさんがつけられたのですか。
「ええっと・・・なんでしたっけ?ああ・・そう『ふっくらなのにしわしわライヴツアー』でした・・・ね。他にも『ものわすれ』とか『わすれました』とか色々あったんですけど。ろくなタイトル思いつかない人なんで・・・。」
── ハラカミさんのチャーミングな人柄がよく表れているタイトルだと思います。
「そうですか?あ〜、そういう部分である意味自分らしさみたいのが出てくるんでしょうけどね。」
── 今回、初の単独ツアーということですけど、当然イベントやフェスとかと違ってお客さんはみんなrei harakamiを観に来るわけじゃないですか?
「それが去年のLIQUID(2005年7月9日にLIQUIDROOMで行われたハラカミ氏初の単独公演)でもどんだけ重かったか!」
── 重いんですか!?嬉しくはないですか?
「だってグダグダなことしちゃったらどうしよう・・・とか、大変なことになっちゃったらどうしよう?とか…、全然満足いくようなものにならなかったらどうしよう?とか・・・・・」
── ハハハ。
「フェスとかでたまたま観てくれている人が多かった、というのだと意外と気が楽だったりするんですけど・・・。自分だけを観に来られるっていうのは重かったなぁ・・・。っていうか重い(苦笑)。」
── そんな!楽しみにしています。今日は有難うございました。
「ありがとうございます。頑張ります。・・・・・一応(笑)。」