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ART-SCHOOL

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10月から始まったART-SCHOOLの全国ツアー「ILLMATIC BABY TOUR 2008」のファイナルとなったこの日、LIQUID ROOMは超満員。開場から開演までの一時間はなんだかそわそわしてしまうファンの心を宥め落ち着かせるような、片平実による優しいDJがフロアを満たしていた。

開演予定時間を5分程回った頃にゆっくりと照明が落ち、ステージに登場したART-SCHOOLの面々。ツアータイトルにもなった最新ミニアルバム『ILLMATIC BABY』に収録された『BROKEN WHITE』からのライブスタートとなった。そこから『夜の子供たち』『foolish』『ジェニファー’88』『FADE TO BLACK』と一気に駆け抜ける。
ここでVo.&Gt.木下が「こんばんは、ART-SCOOLといいます」とMC。ワンマンライブにも関わらずのいつもの挨拶に緊張が少し緩む。息を呑むようなライブと、見ているこっちがもどかしくなってしまうようなMCの、空気感のギャップももはやご愛嬌だ。
MCで一呼吸落ち着けてからも、またもや新譜から『エミール』そして『DIVA』『左ききのキキ』『ロリータキルズミー』と新旧織り交ぜてのART- SCHOOLの代表曲とも言える楽曲を立て続けに演奏。特に『ロリータキルズミー』の研ぎ澄まされた集中力と高揚感のせめぎあうようなステージは圧倒的でさえあった。
「えー、ここからちょっと静かな曲を連発して…どんよりしてください」と木下から紹介を受けて『ステートオブグレース』『1965』『LOST IN THE AIR』とスローテンポな楽曲が続く。『斜陽』では涙を流すファンの姿も伺えるくらい、ぐっと胸につまされるフレーズに心が揺れる。続くMCでは「なんか喋れば?せっかくだしね」と木下に振られたBa.宇野が珍しくMCをする場面も。木下が「今日のために生きてきたようなところありますから僕等…みなさんのために、今日は死ぬ気でやります。」と宣言すると拍手が起こり、会場は暖かい雰囲気だ。
ライブ後半では『Real Love/Slow Dawn』、そして新譜の表題作である『ILLMATIC BABY』と、身体が気持ちよく揺れてしまうダンサブルな楽曲を連発。ART-SCHOOLのオーディエンスは曲に合わせて拳を上げたりするよりも静かに立ち尽くすようにステージを見つめる人が圧倒的に多いのだが、ここでは自然と手拍子が会場中に広がりフロアを揺らした。『ILLMATIC BABY』では木下がシンセサイザーを弾きながら唄う場面もあり、バンドの新境地を感じさせる。その後は『サッドマシーン』『UNDER MY SKIN』『あと10秒で』と畳み掛けるかのような演奏で会場の温度を一気に上げたところで本編終了。

アンコールは「もうね、生きることで限界ですよ。2004年くらいから、鬱病みたいな曲しか書いてなかったんですけど、それが実ってきてる気がするんです。」と木下のMCで始まった。「…最近よくトップランナー出たいと思ってます」という告白には開場からは笑いと拍手が沸き起こる。それはなんだか微笑ましくも頼もしい、嬉しい光景であった。その後は『君はいま光の中に』『Boy Meets Girl』『スカーレット』『SWAN SONG』と、息をつく間も無い演奏でステージを去る。
ダブルアンコールで登場した木下が再びMC、「ずっと同じことをやってるイメージが僕らにあったと思うんですけど、変わりたいなって。それは、ファンを置き去りにするってことじゃなくて。そっちの方が楽しいと思ったんですよ。」という誠実な言葉にオーディエンスは静かに耳を傾けていた。最後は『しとやかな獣』。美しくも儚い楽曲は加速的に切なさを増し、圧巻のラストとなった。

この夜はベストアルバムの発売もあってか、聴きたい曲は大体全部やってくれた大満足なセットリスト、そして今回初の試みとして何曲かにVJを取り入れるなど、確実なバンドの変化の兆しを覗かせる印象的なアクトであった。しかし変わるもの・変わらないものがあったとしても、それでも木下が叫び続ける限り、ART-SCHOOLは孤高のバンドとして存在し続けるのだろう。彼等のこれからに更に期待を寄せずにはいられなくなる、素晴らしい一夜だった。

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