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LIQUIDROOM presents D.A.N. × ペトロールズ<br>D.A.N.とペトロールズが体現した、音楽の自由と深淵

LIQUIDROOM presents D.A.N. × ペトロールズ
D.A.N.とペトロールズが体現した、音楽の自由と深淵

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Text by 飯嶋藍子
Photo by 細川比呂志

2020年2月12日、会場最後方まで超満員の恵比寿リキッドルームにて、「LIQUIDROOM presents D.A.N. × ペトロールズ」が開催された。まず、小林うてなとSohei Shinozaki(FLATPLAY)を迎えた5人編成のD.A.N.が登場。深いリバーブのかかった櫻木大悟の幽玄的な歌声が染み入るように響き渡り、“Aechmea”で幕を開けた。穏やかな水面を細かく振動させるような川上輝のドラミング、市川仁也のエレキチェロが揺らすビートの狭間に、一気に引き込まれていく。打って変わって、“Sundance”では、一定のリズムから生まれる不律、音数の変化や伸びで、世界をどんどん変化させていく。

 

 

ここで、「D.A.N.はじめて観る人、どれくらいいます?」と観客に挙手をあおぐ櫻木。挙手の多かった様子を見て、「ありがとうございます。みんなハッピーになってもらえるよう頑張ります」とMCを挟み、“Bend”へ。曲を浮遊させるかのように拡張していくベースライン、それに対して地に張り巡らされた大木の根を彷彿とさせる肉体性を帯びたタイトなドラム、叫び声にも似た歌声……一本の糸の上に成り立っているかのような美しい緊張感が会場を包んでいく。黄泉の国の祝祭のような軽やかなギターとスチールパンがこだまする“Tempest”、巨大な生き物かのごとくベースがうねる”Pendulum“など、その阿吽の呼吸と均一性が決壊する瞬間の美しさ、そのあとに訪れる静寂への畏怖のコントラストに心を掴まれる。

 

 

 

5月に行われる東京大阪でのワンマンライブのアナウンスをして、アップビートなドラムがオーディエンスをさらいながら“Borderland”へ。息もつかせぬ緩急で、常に渦と波を生みながら会場の空気を掌握してみせる。ここで小林うてなとSohei Shinozakiが舞台から去り、最後はD.A.N.の3人のみで“Orange”を演奏。日常会話のように他愛もなく、しかし大切なものを手のひらで包むようなあたたかな温度が、聴く者の体内に流れ込む。これまでの張り詰めた美しさとは少し違う、音の全てに身を委ねられるような安心感、バンドという生身の健やかさが充溢する圧巻の演奏だった。

 

 

すでに熱を帯びたリキッドルーム。ステージの幕の裏、サウンドチェックからフェードインするように突然ドラムが鳴り響き会場の熱量がさらに増してゆく。ゆっくりと幕が上がり、そのまま1曲目 “Reverb”へ。緻密に構築された音の隙間に宿る息遣い、コーラスワークで織りなされる遠近感、プリズムのように光る音が、会場の空気を一変させる。間髪入れずに“闖入者”へなだれ込み、心地よい四つ打ちのビートに乗るベースとギターの旋律がオーディエンスとともに踊り出していく。その勢いのまま演奏された “not in service”は、アイコニックなギターリフにフロアがゆらゆらと波打ち、ミニマムでありながらもその音の重なりが何層にもなって会場を押し広げていくようだ。その波紋の広がりがどんどん加速していき、“表現”に突入したところで大歓声が上がる。長岡亮介、三浦淳悟、河村俊秀、それぞれのソロの掛け合い、そこに溢れる遊び心が絡み合い、サウンドが七変化していく。

 

 

一度深く息を吸い込むようにして、 “amber”へ。それまでの熱のこもった空気が、日暮れ時のようにひんやりとし、さらに深いところへと“KA・MO・NE”が誘う。深部にあたたかさが宿るような、丸い空気が会場全体を撫でていく。大きな拍手が巻き起こったあと、河村のカウントから“SEKKINSEN”へ。“KA・MO・NE”で潜り込んだ先でじゃれあうような、触れそうで触れないような距離感で、3人が紡ぎ出す音がオーディエンスの間を遊んで回る。次の“コメカミ”では、息遣いのような、繊細で、灯火を宿したようなサウンドに、胸がつまりそうなあの甘酸っぱい感覚が呼び起こされる。その静かな火を残したまま、ステージだけが妖艶に照らされるなかで演奏される “Talassa”の無骨なベースラインとギターのカッティングが心地よく耳をくすぐり、サビでパッと会場全体の照明がつくと同時に、風通しの良いサウンドが会場に一気に充溢する。語りかけるようなギターソロが琴線に触れ、全ての音の粒が祝福のように降り注ぎ、オーディエンスの体を幸せに揺らす。

 

 

 

続く“止まれ見よ”のイントロが鳴るやいなや大歓声。アグレッシブなビートで一気に会場が大きく揺れ、完璧なつなぎで突入した“TANOC”で、この日一番の歓声があがる。身も心も音にまみれた多幸感のなか、一切MCなしで本編が終了するも、すぐに熱烈なアンコールが巻き起こった。リラックスしたようにステージに舞い戻り、「久しぶりでしたね、ぎこちなかったでしょ?」と長岡。「D.A.N.さんも私たちも動きがないバンドですよね」とライブが2ヶ月ぶりであることを振り返り、「今年もよろしくお願いします」と“Fuel”を演奏。ゆったりと味わうように聴き入っていたオーディエンスも、サビでは「ヘイ!」と力強く手をあげる。ラストのサビではメンバーがオーディエンスを誘い大合唱に。ステージ、フロア、そこにいる人々の笑顔で包まれ、大団円を迎えた。

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