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菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール

菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール

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カルペンティエル地下文学賞と銘打たれたこの日のイベント。菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールとworld’s end girlfriend&BLACK HOLE CARNIVALという圧倒的な世界観を持つ二組の激突である。

開場と同時にまずはこの日の首謀者である菊地成孔のDJタイム。前衛的な、独特で何処か破壊的なプレイでフロアに揺さぶりを掛ける。

そしてworld’s end girlfriend&BLACK HOLE CARNIVALが登場してライブスタート。ツインギターにツインドラム、サックスという異色の編成で、打ち込みを多用しつつも凄まじい音圧を伴った生音で迫ってくる。演奏時間である60分間一時たりとも無音という状態の無い、集中力の高いライブ。それはクラシックの組曲を彷彿とさせるような構成で、賛美歌のような神々しさを放ちながら壮大なスケールで会場を包み込んでいった。静寂と轟音を内包したバンドサウンドが、再生と破壊、あるいは生と死、そんな対比するありとあらゆるものを包括しながら光と闇の隙間に解き放たれる。その渦中に潜む美しさに心を揺さぶられた人も多かっただろう。

その後、日向さやかによる美しく緩やかなDJでクールダウンした所で、菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールの登場である。黒いスーツに身を包み、蝶ネクタイを結んだ菊地成孔を筆頭に、それぞれスーツやドレスで正装をしたバンドメンバーの姿が現れる。ハープ、バンドネオン、ストリングスカルテット、ツインパーカッション、ピアノ、ウッドベース、そして菊池によるサックスとボーカルという総勢11名がステージに上ると、それはもうバンドというよりもオーケストラという方がしっくりくるようだ。昨年10月にリリースされた『New York Hell Sonic Ballet』からの楽曲を中心としたセットリストで、途中にはゲストとしてソプラノ歌手である林正子がゲストボーカルとして参加。菊地が新譜の作成時に雇ったマニュピュレーターが実はアラブ音楽の演奏家だったそうで、彼も急遽ダルブッカでの参加となった。

菊地成孔の音楽は文学的であり、混沌としているのだが、身体の細胞を突き抜けて行く。どこか挑発的で挑戦的な部分もあるのだが、それでいて品がある。すごく複雑で繊細なことをスマートにやってのけてしまう。それを支えているのはやはりその正統派な高い技術であろう。綿密に練り上げられたリズムがぐいぐいと迫り、息を飲むような緊張感と思わず鳥肌が立つような感動を伴ったアンサンブルが響き渡る、至福の時。全くもって刺激に満ち溢れた、正に圧巻のステージであった。

撮影:井筒千恵子

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