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OGRE YOU ASSHOLE vs DEERHOOF

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 Contrarede主催の「CHAMPION ROAD Vol.1」最終決戦の地として選ばれた恵比寿LIQUIDROOM。オウガ・ユー・アスホールの熱望によって実現したディアフーフという怪物との“異種格闘技戦”を観るため会場には沢山の人たちが集まった。

 19時を少し過ぎた辺りだろうか、暗転の後、眩いほどの歓声が上がる。“先攻”サンフランシスコの暴れ馬、ディアフーフの登場である。ジョン(Gt.)がまず現れ、ソリッドなギターのリフレインを奏でる。それに絡むようにエド(Gt.)、グレッグ(Dr.)、サトミ(Vo.Ba.)と次々参加し、4人の創り出す奇妙なグルーヴに固唾を飲んだ。嵐のようなセッションが突然止んだかと思いきや、キャッチーなメロディと超絶テクが光る“panda panda panda”にスライドしていく。イキナリの旧作(注1)からの選曲に会場の熱は一気に上がっていく。

 それだけで終わらない……いや、終わらせないのがディアフーフなのだろう。ジョンがフロントマイクの前に立ったかと思うと、聴きなれた、懐かしいコードを弾き鳴らした。曲名は“Gabba Gabba Hey”こと、“Pinhead”。そう、あのラモーンズのカヴァ−だった(注2)。
 予期せぬ飛び道具にオーディエンスは度肝を抜かれた。返す刀でグレッグがスティックをギターに持ち替え、サトミがドラムを叩くという一幕もあり、さらにオーディエンスを楽しませた。
 音もさながら、ステージ後ろには、田園のなかで輪になって踊る女の子……妖しげな金髪美女……ピエロ……ロンドンの騎兵隊……ドラキュラ……と、奇想天外な映像が次から次へと現れ、観る者を飽きさせない。
 ライヴ中盤のMCでは「会議ハジメル…サミットね」と、グレッグがメンバーを中央に集め、なにやらひそひそと密談しはじめた。そのままグレッグが続ける。「サミット…オワリ。スゴーイ安イネ、サミット」……さっきまでのスリリングな演奏で張り詰めていた緊張がここでピンと音を立てて切れた。
会場を一気に和ませるこんなミニコントもディアフーフのライヴが愛される所以だろう。
 演奏が終わる頃には得も言えぬ楽しさ、充実感で胸が満たされていた。「もう終わり~?」という声も頷けるほど濃密に圧縮された1時間が過ぎ去った。

 幸福な余韻をそのままに、照明が落とされステージ後方には大きな虹が架かる。幻想的な雰囲気を醸し出す。“後攻” オウガ・ユー・アスホールの登場だ。左手奥から、馬渕(Gt.)、勝浦(Dr.)、平出(Ba.)、少し遅れて出戸(Vo. Gt.)。静かな佇まいとは裏腹に、4人ははじめからギアをトップに入れる。オウガのひとつ目の牙、「ピンホール」のギターが流れ出した途端、4人の静かな激情を前に会場は一気に沸騰した。力強い、安定したベースとドラムに、繊細で煌びやかなギター2本がその上を縦横無尽に駆け巡り出戸の唄が脳に揺さぶりをかける。会場を見渡すと、ゆらゆらと体を振り子の様に揺らしている人が目に付いた。その“ゆらゆら”がフロアから、会場後方まで侵食するのはオウガのライヴの心地よさからいって必然であろう。
 出戸の鋭いギター・サウンドから放たれるダンスナンバー “advantage”が流れると、ライヴ終盤に差し掛からんとしたにも関わらず、フロアはあっさりダンスホールと化した。
 自主レーベルからの曲に、メジャーからのシングル、しっかりと踊れる曲まで配した彼らはツアーの集大成としてドリーミーで雄大な“ワイパー”で締め括る。しかし、鳴り止まない拍手と歓声にアンコールとして再度登場し、言葉少なげだが確かに、このツアーの感謝を送った。
 アンコールの“ステージ”ではいままで薄暗かった照明が一転、ステージの4人を明るく照らし出すと、たかだかと上げられた無数の手が4人を祝福する。そこには温かい空気だけが漂っていた。

 両雄とも癖ありで、ソリッドでクールなバンドという印象が強かったが、蓋を開ければ心が温かくなるような幸福感を覚えるライヴだった。後に残ったのは両雄が素晴らしい1つの空間を創り上げたという事実のみ。あえて勝者を挙げるとしたら主催のcontraredeだろう。次の試合はどんな驚きをもって楽しませてくれるのだろうか。もちろん、“全カード事実上の決戦”に違いない。(市川 雅史)

(注1)2003年リリース『Apple O’』収録曲
(注2)NYで1974年に結成されたニューヨーク・パンクを代表するロック・バンドのひとつ。その特徴的なサウンド・スタイルと、革ジャンにピチピチのジーンズというファッションが後のロンドン・パンクなどにも強い影響を与えた。文中の“Pinhead”は1977年のセカンド・アルバム『Leave Home』収録で彼らの代表曲のひとつ。“Pinhead”で歌われる“Gabba Gabba Hey”は彼らの代名詞でもある。

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