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Spangle call Lilli line

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会場に残された優しい余韻。ライヴ活動休止前、最後の一夜。

 1年半ぶりのスパングル・コール・リリ・ラインの東京ワンマン・ライヴである。チケットは即日ソールドアウト。しかしそんな状況とは裏腹に、なんとこの日をもって当面のライブ活動休止を宣言していた彼等。もともとコンスタントにライヴを行っていたバンドではない上にこの日を逃すと数年間はその機会もなくなってしまうということだ。ファンにとっては絶対に見逃すことのできないライヴである。

 開演前から、フロアの隅々までうまった会場には静かな熱気と期待が満ち満ちていたが、蓋を開けてみればどうだろう。本編16曲、アンコール1曲の全17曲。オーディエンスの高い期待を軽く凌駕してしまうすばらしいステージで、ライブ活動休止が本当に惜しまれる。とても素敵な一夜であった。

 この日のライヴはメンバー、サポートにベースとドラム、さらにストリングスや鍵盤、コーラスを迎えての最大10名という大世帯の編成で行われた。ライヴ自体は、かなりひさびさだったがはずだが、そんなブランクをまったく感じさせない美しいアンサンブル。豪華に彩られた煌びやかなバンドの音に、浮遊感と透明感が同居した大坪のしなやかなボーカルが映える。
 新旧曲がまんべんなく織り交ぜられたベスト盤的なセット・リストでライヴは進められた。1曲ごとに静かに沸き立つ会場。きらきらと浮遊しつつもキャッチーさとが随所に光る、その音楽性は本当に独特で心地良い。降り注ぐメロディーは、じんわりと会場に溶けていく。ステージ後方に設置されたスクリーンに映し出される幻想的な映像と控え目な照明も相まって、この日のステージはまるで儚く美しい映画のようだった。
 途中には相対性理論の永井聖一をゲストギターに迎えて“dreamer”を披露するひとまくもあり、オーディエンスをより盛り上げた。
 後半の“nano”“veek”、そしてアンコールの“E”という流れはまさに秀逸で、眩い光に溢れた、じんわりと心が満たされるような圧巻のラスト。彼らがステージから去ったあとも、会場にはいつまでも優しい余韻ばかりが残っていた。

 大坪は途中のMCで、ライヴ活動休止についてこう語っていた。
「音楽以外の場所で、いろんな人と会ったり美味しいものを食べたり……そういう心の休息が必要だと思って。いろんなものを吸収して、またみなさんの前に帰ってきたいと思っています」
そう笑顔で宣言してくれた。
ライヴ活動休止が決して消極的な意味では無いということを、なによりもこの日のライヴの素晴らしさが証明していた。

 彼等は今年に入ってシングル、アルバムを立て続けにリリースし、更に先日もう1枚のニュー・アルバム『forest at the head of a river』がリリースされた。その活発な活動や、この日のライヴからうかがえた“いま”のスパングル・コール・リリー・ラインのバンドとしての充実した姿は、素直に嬉しいのだ。自発的とは言えライヴ活動を休止し、ファンとしては非常に残念なことに変わりはないが、これからもバンドは絶対に続いていくのだろうし、またひょっこりとライヴ会場に帰ってきてくれることを信じて、次に届けられるであろう彼らの新しい音源を楽しみに待つとしよう。
(山田佳緒里)
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Photo by 豊田明生

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