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いろいろなひとたちに会って、音を作るべきだなというのがあって

 先行して同タイトルシングルを、そして満を持して7月14日にアルバム『サンシャイン』をリリースしたHiGE。キャッチーなギミックの散りばめられたサウンドや歌詞、色合い豊かな作品たちは邦楽ロックシーンで多大なる指示を受けている。しかし今作『サンシャイン』ではいままで纏っていた印象を脱ぎ捨て、新しい一歩を踏み出した。お得意のフックも、ファニーなサウンドも一瞬鳴りを潜め、ふと射した陽光のように、耳だけで留まることなく自然と心の奥まで心地よく入り込んでくる。いまいちどHiGEの楽曲のすばらしさをシンプルに強く感じることのできるアルバムだ。多くのゲスト・ミュージシャン、プロデューサーを迎えていながら、こんなにも「HiGEらしさ」が強く表れているのにも驚かされる。どのような流れで産み落とされたのか、はたして『サンシャイン』はどのように作りあげられたのか。
 8月31日のLIQUIDROOM 6th ANNIVERSARY公演にて、アルバムにも参加している金子ノブアキ率いるRIZEとの対バンも決定しているHiGEの須藤寿に新作『サンシャイン』を中心に語ってもらった。







── アイゴン(會田茂一)さんの加入の経緯を教えていただければと思うんですが。

須藤加入は本当にユルい理由というか……アイゴンさんと大阪のフェスのときにバックステージで会って話したんですけど「夢のなかで髭に入って6人でやってるの見たんだよね。そういうところなんじゃないかな、これからは!」とか言ってて。どういうところなんだろうなぁ、と(笑)。で、その話を持ち帰って、それから2週間後にスタジオで5人でやってて迷った時期もあったから、なんか指南役というかリーダーとして呼んだというか。5人だとなんかぐちゃぐちゃしてたんで。





── 「兄貴まとめて下さい!」的な(笑)。

須藤そうそう、まとめてくださいって。そしたらアイゴンさんがすごく楽しんでくれて、いまとなってはもう同列ぐらいで。スタジオのなかでもすごい面白いひとで。





── アイゴンさん、土屋(昌巳)さん、(奥田)民生さんとか、ひとつ、ふたつぐらい上の世代のアーティストと今回は作り上げたわけですが、彼らとの共同作業はいかがでしたか?

須藤それこそ10代のときから見てたロック・ミュージシャンだから、プロデューサーとしてつき合ったというよりも、憧れのミュージシャンと音を鳴らしてたという感じが近いかな。そういう意味では、すごく刺激というか。





── アルバムの場合、プロデュースは1枚を通してひとりのプロデューサーに任せることが多いと思うんですが、こういう感じで何人ものひとに頼んだのはどうしてでしょう?

須藤まったくこれといった意図はなくて。でもアルバムは誰かにプロデューサーを頼もうとは思ってたんだけど……。今回はドラマーではRIZEのアックン(金子ノブアキ)、ユニコーンの川西(幸一)さん、民生さんにも叩いてもらってるし。そうやってプロデューサーに関わらず、いろんな人と一緒に作りたいなというのがあって。前作の『D.I.Y.H.i.G.E.』が5人でしっかり作ったものだったから、今回は自分のなかではいろんな人と出会って吸収したいという時期に来てて。それがメイン・コンセプトのひとつになってて、無軌道に「やってみたいな」とか言ってたら、普通に叶っちゃったというのがあって。だから逆に言うと、アルバム全体を見てなかったというか……。そのくらい自分たちの曲というよりかは、自分たちはいろいろなひとたちに会って音を作るべきだなというのがあって。





── ゲストを迎えてもHiGEというバンドのかたちで音楽をやってみよう、というのは何故なんでしょう? 別の方向性、例えば弾き語りのものを突然作ってみるとか。

須藤気持ちとしては弾き語りとかないなぁ。よく言われるんだけどないんだよね。まわりのバンド仲間で、ヴォーカルのやつがいると必ず弾き語りするよね。なんだろうね。1回も弾き語りで作りたいって思ったことない。そういうタイプなのかもね。





── バンドとして音を出すほうが自分には合ってると。

須藤そうなのかなぁ。そこまでも考えたことない。





── 話は少し戻りますが、『サンシャイン』で迎えた方々の印象的なエピソードとかありますか?

須藤土屋さんはスタジオ入りが誰よりも早いんだよ。それは俺も失礼なんだけど、12時に集合って言ったら12時にはしっかりいるんだよね。若干遅れて12時5分とかに行っても、すでにいるみたいな感じで。スタジオに行くと、早速、ストーンズとかビートルズ、ツェッペリンのアルバムを聴いてて。「この音がいいよな」って言いながら。すっごく繊細なひとだなぁと思いましたね。そういう音のひとつひとつを汲み取って、温故知新っていうか古い音源から学びとって、自分はなにを乗せていけば良いのかを綿密に考えてる感じで。民生さんは逆に、はじめてのリハーサル入ったときに、集合時間より遅れて来て。「なにすれば良いんだろう」という感じで、民生さんが遅れて入ってきて、なかなか俺たちとも話さないし「アレ?」って感じで。どうするのかなと思ったら、じょじょに喋っていって。まずはいろいろやってみなっていう感じの放任主義というか。で、いろいろやったあとに「それで良いじゃん」みたいな(笑)。おっきい人でしたね。アックンはね、2時間くらいストレッチしてたね。時間通りに入るんだけど、2時間ストレッチしてたね(笑)。川西さんも早かったなぁ。って、時間の印象ばかりで申し訳ないんだけど。みんな時間が独特でさ、その部分の印象があるかな。あとはみんなと沢山話した。沢山呑みにも行ったし、そういう部分が大事だったかな。会って、いろんな音を鳴らしたいっていうのはあったんだけど、会いたかったひとたちに会えたというのがすごい楽しかったかな。





── ふたりもドラマーがいるのに、民生さんに叩いてもらったのはどんな感じで決まったんですか?

須藤それも完全なノリで。もともと民生さんに頼む曲が2曲くらいってこと以外は決まってなくて。1曲は“サンシャイン”。その曲は迷うことなく、すっといくんだろうなと思ってて。もう1曲は“ローラー・コースター”という初回限定のほうに入ってる曲があるんだけど「これは民生さんが居ても、きっと頓挫するだろうな」とか思ってて。それで民生さんと嫌な空気になるの嫌だなと思ってて。もう1曲、保険で“オニオン・ソング”持って行ってて、空気がまずくなったときに民生さんに叩いてもらおうって考えた曲で。で、やっぱり“ローラー・コースター”はやっぱり、やってて滞ったときがあったから、「民生さん叩きます?」って訊いたら「ドラマーいるじゃん?」って。でも「じゃあ、ドラマーは歌えば良いじゃないですか」という感じのノリで(笑)。





── ドラマーが歌って、その部分でドラムをやらないってことに関してはOKなんですか?

須藤それはね、3年くらい前にクリアした(笑)。『PEANUTS FOREVER』で、アナログ・フィッシュの州一郎に叩いてもらって。あのときくらいからはじまって。もう「俺が歌うんでしょ?」くらいでさ(笑)。「うわ、もうヴォーカルだなぁ」って感じで。俺よりも堂に入ってると思う。





── バンドではありながら、いわゆるロック以外にも広い音楽性を持ったバンドだと思うんですが、今回のアルバムではストレートに良い曲を集めたという感じがすごく出ていると思うのですが。

須藤それはね、時間が経ったんだな思うんだけど、自分たち的にもこのアルバムに対してはそういう感想で。曲を書いて歌を歌うということに対して、シンプルに気持ちが向いていってるというか。いままでのHiGEの持ってたバンドの持ってるバンドのダイナミズムとか、エクスプロージョンとか化学反応みたいなものを楽しむっていうのはひとつのコンセプトだったし、作りやすさだと思うんだけど。なんかここにきてプロデューサーがいたというのも大きいと思うんだけど。もっと自己完結した曲を持っていっても良いのかな、と。いままでだと、曲の一部だけを持って行って、それをバンドに持っていって、そのなかで得たインスピレーションなりで歌詞なりメロディなりを付けてたんだけど。今回は、曲をまるっと1曲書いて行ったから。フォーキーな感覚の曲が多いのはそこだと思う。家のなかで完全に書ききってるというか。





── 作り終わってみて、聴き直してみて、さらに今後、広げてみたいと思ったことはありますか?

須藤やっぱりこの路線ですね。フォーキーなところというか。ここに来て歌詞というか日本人的な心の細かい機微を歌うというのが、すごくグッときたりするというか。もちろん外国人には外国人のそういうところはあると思うんだけど、日本人にも日本人にだけわかる細かいところってあるじゃないですか? 副詞とかだけでわからせるというか。そういう言葉のコミニケーションみたいな部分が自分のなかで大きくなってきてるような気がしてて。いままでだと多少、突き放してでも自分の世界とか、HiGEの世界観を提示できてれば良い気がしてたんだけど、いまはその世界というよりも割とコミニケーションというか、聴いてくれている側のことも気にしているというか気になっちゃってる。それはすごく歌詞にも出てると思うし。人のことが気になってるんだなぁと思ってて。この歌詞を聴いて、ちょっとでも背中を押せたら、それはそれで良いんじゃないかなと思って。前はそういうことは自分たちの音楽に求めてなかったというか。妙に励ましたりするのもなんか柄じゃないなぁ、とか性に合わないなと思ってたんだけど。それはそれで仕方がないじゃんという感じで気が楽になってきた。





── そう思えるようになったのは、いつからだと思いますか?

須藤経つべき時間が経ったんだと思う。“Like A オジサン”というか(笑)。33歳だから、あと3~4年もすると、もう“Like A”が取れて、ただのオジサンになってくる。いまはその“Like A オジサン”の気持ちを大切にしたいというか。これがいまの自分というか。本当に2~3年前だったらこの気持ちって表現できなかったと思うんだよね。「まだおじさんじゃない」というか(笑)。そこでひととのズレを生ませてたというか。「ひとになんか優しくしない」とか、「そんなことしても意味ない!」とか。そういうことじゃないと思えるようになってきたというか。「お水、足ります?」とか言える感じになってきてると思うんだよね(笑)。音的にもひとを傷つける音が入ってないというか。いままではすごい低域と高域を使って、「耳痛い」とかそういう音でくすぐってたりしてたと思うんだけど。今回からは中域メインで、そこにもそういう気持ちが表れている気がする。





── 過去のアルバムの楽曲、さっき出たような例えば突き放していたタイプの曲をライヴでやるとき、お客さんの反応の違いとか感じますか?

須藤お客さんには感謝してて、いまの曲をやっても前の曲をやっても、違和感なく曲によって聴き方を変えてくれてて。ただ俺自身は“ダーティーな世界”とか“白い薔薇が白い薔薇であるように”とか、いまちょっと自分のなかで歌えなくなってる時期というか。ひとというか俺自身が、という部分で辻褄が合わないっていうかね。いまはなんかそういうタイミングなのかもしれない。もちろん、変わっていくものだし、ずっと転がって行くものだと思うけど。





── 今後やってみたいことはありますか?

須藤なんか20代の自分たちの作るかたち、5人で作るというかたちに終始してたと思うんだけど、いまの気持ちとしてはいろんなひととやってみたいなと思って。そのくらい開放的な感じですね。これを作ったから、またメンバーだけで作ってみようっていう感じでは、いまはないですね。もちろんまた3ヶ月後とかになったらメンバーだけで作りたいとかになってるかもしれないけど。そこはわからないんだけど。





── 最後に、8月にLIQUIDROOMの6周年公演にRIZEとともに出演されますが、LIQUIDROOMの印象を!

須藤大好きですよ。本当にそれこそ、新宿にあったときから好きだし、恵比寿に移ってからももちろん。なんかライヴハウス然としたライヴハウスというか。クールなライヴハウスっていうか。多分、俺のガキの頃からのイメージもある。「リキッドルームに行った」というか、そんなイメージはあるんじゃないかな。リキッドルームで見た! というので、アーティストがどうでもなっちゃうというか(笑)。





── RIZEとの対バンですが。

須藤やっぱりかっこいいバンドだと思うし、大好きだし。今回、参加してもらったり、こういうつながりでできたのは、よりライヴを一緒に、対バンを単純にやるというよりも関係性が見えてるし、より楽しいライヴになるんじゃないかなと思ってる。





── ライヴの失敗談ってなんかありますか?

須藤えっとね。音出ないっていうのは冷や汗でるよね。さすがに最近はないけど。あとはドラムのフィリポが汗だくになって叩いてて、バンドがセッションに入ったから、フィリポに頭から水をかけてやろうと思ってかけてやったら、それポカリスウェットで(笑)。ベットベトになって叩いてて。戻って来たら「あれ、ポカリだよ」って。ライヴ中なんてトランス状態といえば、トランス状態だから、あんまり見てなくて(笑)。

  • 『サンシャイン』
  • HiGE

會田”アイゴン”茂一加入後初となるニューアルバム。ACジャパンCMソング「青空」、奥田民生プロデュースの先行シングル「サンシャイン」、土屋昌巳プロデュース、ベストアルバム・リード曲「テキーラ!テキーラ!」含む10曲を収録。初回盤には奥田民生プロデュース「ローラーコースター」もボーナストラックとして収録。

HiGE
斉藤祐樹(Guitar)、須藤 寿(Vocal&Guitar)、宮川トモユキ(Bass)、川崎”フィリポ”裕利( Drums&Percussion)、佐藤”コテイスイ”康一(Percussion&Drums)、さらには今春、會田”アイゴン”茂一が電撃加入。2003年のインディ・デビューから、『サンシャイン』を含めて9枚のアルバムとベスト・アルバム『TEQUILA! TEQUILA! the BEST』や1ソング・アルバム『Electric』をリリース。エネルギッシュなロックンロールから、新作ではフォーキーでメロウな音楽性も披露するなど、広い音楽性を持ったバンド。





08.31.TUE
RIZE / HiGE
LIQUIDROOM 6th ANNIVERSARY

文中にも掲載のRIZEとの対バンによるLIQUIDROOM 6th ANNIVERSARYにも登場! 
公演詳細はコチラから

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