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LEN FAKI

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すべてのものは変化するものだろう? それが人生の美しいところでもある――レン・ファキ来日直前インタヴュー

 10月23日開催の〈HOUSE OF LIQUID〉にてプレイするレン・ファキ。テクノ・シーンにおいてナンバーワンと言われているベルリンのクラブ〈ベルクハイン〉のレジデントDJとして活動し、またクリエイターとしても、そのダーク&エネルギッシュなトラックで、大きな人気を集めているアーティストだ。2年前の〈WIRE09〉のメイン・フロアでのDJプレイも話題になり、それ以来というのだからまさに待望の来日。そして、ここ数ヶ月の間、同じく〈ベルクハイン〉のレジデントDJたちの多くが来日し、ここ日本のフロアを揺らし大きな話題を集めるているなか、ついに本丸の登場といったところでもある。また〈HOUSE OF LIQUID〉では共演に、テクノ・シーンを長らく牽引し続け、〈WIRE〉を主宰し、多くの聴衆にレンを紹介した張本人、石野卓球。そして4月には現地〈ベルクハイン〉でのDJ、そしてマルセル・デットマンら〈ベルクハイン〉レジデントDJたちと、ここ日本で数多く共演しているDJ NOBU。まさにテクノの最前線の一端を、そこで体感できるだろう。
 10月23日開催の〈HOUSE OF LIQUID〉直前、ぎりぎりのタイミングで返答のあったレン・ファキのメール・インタヴューをお届けする。







── あなたのキャリアを語る上で、やはりベルリンという都市へと活動の拠点を移したことが大きな転機となったようですが、具体的にどんな部分に影響 を与えたと思いますか?

レンいま考えると、それ以前のことはすべて下積み、自分が踏み出すための土台作りだったんだと思うね。音楽的にも個人的にも、準備期間だったように思う。一人前になって、ベルリンという街とそこにある可能性とチャレンジに飛び込む覚悟ができた。街、人、アーティストたち、そのすべてが私の視野を広げ、そして可能性を感じさせてくれた。ベルリンに移った、私という存在そのものにとても大きな影響を与えたし、いまも与え続けているよ。8年も住んでいるからさすがに慣れて来た部分はあるけれど、ドイツの他の都市に住むことはまだ考えられないね。





── クリエイターとしてもサウンド的に、〈ベルクハイン〉のレジデントになってからかなり変化した思うのですが、どんな部分に留意し て音楽を作るようになりましたか?

レン〈ベルクハイン〉は間違いなく私のDJセットには影響を与えた。でもプロダクションについてはそんなことはないと思う。当然、ときとともに私のサウンドは変化してきたけれど、それは意図的あるいは意識的に変えようと思って起こることではない。自然に起こったこと。すべてのものは変化するものだろう? それが人生の美しいところでもある。私のなかから生まれる音楽は、私の中にあるもの、その時々に私が好きだと思うサウンドだ。私は実験することが好きなので、なぜそのサウンドが出来上がったのか論理的に説明することは出来ない。つねにさまざまなものの影響を受けているので、なにかに特定することはできないんだ。パーティーだって世界の様々な場所で、毎晩異なるからね。





── ベールに包まれていてしゃべりニクい部分もあると思いますが〈ベルクハイン〉の場所としての魅力はどこにあるのでしょうか?

レン私にとっては、もう6年もレジデントを務めているのである種の“ホーム”だと感じている。古い友人たち、新しい友人たちとの出会いの場であり、楽しい時間を共有する場所。私がとくに好きなのは、音楽に没頭しているお客さんだけになる朝から昼くらいの時間帯。それを楽しみ、祝福し、吸収しているから。あれはとても特別なヴァイブだし雰囲気だね。もっと全体の印象を言えば、エッジーで直接的、オープン・マインドでありながらリラックスしている。(周りに迷惑をかけなければ)なんでも好きなことをしていい場所で、とにかく楽しい時間を過ごすためだけにある。これからも変わらずに、そうあり続けて欲しいね。





── ではもっと広げてベルリンという街の魅力とは?

レンベルリンとドイツは別ものだ、とよく言われるのを知っているかな? ベルリンは間違いなく、ドイツの他の大都市とは全く異なる街だ。私にとっては完全に独立したユニークな空間。何百万人という人口を抱える大都市でありながら、そう感じさせない。もし人が多くてゴミゴミしたところが好きなら、そういう場所もある。地区によってスタイルやひとびとの生活が違うので、全体としてはとてもリラックスした空気があって小さな町が集まって大きな街を形成しているような感じがする。私はいろいろな雰囲気の異なる地区に行ってみるのが好きなんだ。ひとつのエリアではベビーカーを押した若い家族ばかりかと思えば、隣の地区はビジネスマンばかり、もうひとつのところでは学生や若者がいっぱい、という風にね。特に、いまでも東(私が住んでいる方)と西との違いがあるところもおもしろい。この街の魅力についてなら、いつまでも喋っていられるよ! 可能性がたくさんある街でもあるしね。アート、音楽、演劇といったシーンも素晴らしい。世界中からアーティストたちが集まっている。あれ、私はここの生活を愛してるってことってすでに言ったっけ(笑)





── 話は変わりますが、あなたとクラブ・ミュージックの出会いはどんなものだったんでしょうか?

レン私は幼い頃から音楽オタクだった。クラブ・ミュージックとの出会いは、むしろ偶然のようなものだった。若い頃はなんでも聴いていたからね。ある週末に、友だちと遊びに行って、この音楽と出会った。その頃はアシッドだったよ。それが大ブームになっていたときだった。私は即座にヤラれてしまって、その夜から夢中になった。





── とくにテクノやハウスのアーティストにフォーカスすると最も影響を受けたアーティストは誰でしょうか?

レンうーん、ちょっと考えさせてくれ。いまではすばらしいアーティストや同僚がたくさん居過ぎて選ぶのが難しいよ。誰かを忘れてしまっていたら嫌だからな。基本的には、私は自分に忠実で成長/進歩を止めないアーティストが好きだ。しっかりと地に足を着けながらも、頭はパラレル・ワールドの音の中に突っ込んでいる人。





── あとはDJプレイということで影響を受けたDJは?

レン私が十代後半の頃は、毎週末地元のクラブに通っていた。そこでプレイしていたのがDJマルコ・ザファラーノという人で、本当にいいDJだった。テクノをプレイしていて、僕にとっては街中で一番カッコいい人物だったよ。地元のヒーローだ。彼の影響で、自分もDJになることを夢見出したね。その後大規模なレイヴにも行くようになったんだけど、その頃はスヴェン・フェイトに勝るDJはいなかったし、彼を見て感動しインスパイアされないひとはいなかったよ。





── 逆にテクノやハウスのアーティスト以外で影響を受けたアーティストは誰でしょうか?その理由も含めてお教えください。

レン人によっては、何十年も憧れ続けるヒーローがいるものだけど、私の場合はそうじゃないんだ。もちろんすべてのジャンルで尊敬するミュージシャンは無数にいる。実は、自分の家や車ではダンス・ミュージック以外のものを聴く。かなり幅広く、いろんなものを聴くんだ。フュージョン・ファンクからロックから、その間にあるものすべて。いまはパール・ジャムの新しいアルバムをすごく気に入ってるよ(ベルリンでのコンサートは見逃してしまって悔しい)。あとブロンド・レッドヘッドの作品も好き。





── あなたのレーベルでリリースされている日本人アーティスト、A.Mochiの魅力とは?

レン彼はすばらしいアーティストでとてもリスペクトしている。彼は少ないサウンドを選び出し、(最善の方法で)シンプルにまとめながら、爆弾のようなトラックを作り出す。それにあのベースの重さ。私はベース好きなのでね! それを選りすぐりの要素で組み合わせていく手腕は……ただすごいよ!





── 1年前の〈WIRE〉のメインフロアでのプレイで印象に残ってることはありますか?

レン最高だった! 個人的なベスト・ナイトに数えられるね。鳥肌、緊張感、そしてアドレナリン。あのお客さんはプライスレスだね。とても暖かく、応援してくれて、しかもパーティーの仕方も良く分かってる! 素晴らしいエネルギーが押し寄せてくるのを感じたよ。ステージとオーディエンス感の完璧な交流があった。





── 今後のリリース予定などについて教えてください。

レンいま、A. Mochiのファースト・アルバムを仕上げているところだ。もう数週間のうちに発売されるよ。その次は、久しぶりに私自身のリミックスを〈Figure〉から出す。それに月末にダブルCD/レコード7枚組でリリースされる、〈Ostgut-Ton〉の5周年記念コンピレーションに私もエクスクルーシヴのトラックを提供しているよ。そんんなわけでいいものがたくさん控えているから、よろしくね。楽しんで聴いてくれ!

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