FEATURE

INTERVIEW

五味岳久(LOSTAGE)

五味岳久(LOSTAGE)

twitter facebook

五味アイコン――人と人、そして音楽を結ぶSNS時代のユルめムーヴメント(?)  ツイッター上のタイムラインに増えていく、ユルめな愛嬌と、本人の特徴を捉えた妙な味を持った似顔絵のモノクロ・アイコンたち……一部のアーティストたちのアイコンがなぜか、どんどんそんなアイコンに変わっていく。このアイコンをせっせと作っているのはバンド、LOSATAGEの五味岳久。彼が作る通称“五味アイコン”は、彼の近しいバンドマンから、音楽関係者、先輩アーティスト、果ては女優までを巻き込んで、人をつなぎ、やがてはイヴェントに、そしてついにはアイコンを集めた書籍『#oshare in DICTIONARY 五味アイコンブック』まで刊行されてしまったのだ。  おそらく数年前では考えられない、盛り上がるツイッターの力というのを、ある意味で象徴しているような出来事でもある。そしてきたる12月10日には、このアイコンブックのリリースを記念してリキッドルームで〈LOSTAGE & SPACE SHOWER TV present #oshare in LIQUIDROOM〉が開かれる。わずか数百ピクセルのアイコンの力で集められたと言ったら嘘のような豪華メンツが揃っている(詳細はインタヴュー最後に)。  さて、この前代未聞のムーヴメント(?)を作り出してしまった五味岳久に話を訊いてみよう。 ── 最初は自分のアイコンからだと思うんですが、そもそも自分のアイコンをイラストにしたのは? 五味自分の顔写真とかを、使うのって難しいじゃないですか。最初、僕は昔の自分のアルバムのジャケットにしてたんですけど、それだと個人として特定しにくいなと思って。それでいろいろ探してたんですけど、しっくり来なくて自分で描いて。あんまり意図はないです(笑)。 ── イラストとかは好きだったんですか? 五味幼稚園のときから絵は習ってて、美大受験とかもして。美大には行ってないですけど。描くのは好きですね。 ── この本によれば、2人目は大阪のレコードショップ〈FLAKE RECORDS〉のDAWAさんのようですが。 五味はっきりは憶えてないですけど、「その感じがイイから」ってことで描いてって言われた様な気がしますね。DAWAさんも昔のメタルの人の写真使ったり、やっぱり自分の写真使えなかったみたいで。 ── ちなみに、そういえばもともとはどのくらい前からやってたんですか? 五味2年前くらいですかね。 ── で、そのDAWAさんとのTwitter上でのやりとりから徐々に増えて行ったという感じですか? 五味そうですね。まわりの人たちもおもしろ半分で。 ── 本には、横山健さんと他の方のやりとりのなかから、横山さんのアイコンができる様がTwitterのやりとりで描かれてますが、大抵の方ってああいう感じだったんですか? 五味そうですね。だれかとからんでて、そういうことになるときもあるし、直接相互にフォローしてたらダイレクトメッセージが来るときもあるし。あとは実際に現場で会って、そこで言われることもあるし、いろんなパターンがありますね。 ── いちばん書いてて悩んだのって誰のアイコンですか? 五味女優さんとかはたいてい悩みますよ。例えばですけど、タレントの加藤紀子さんですかね。チャーベ(CUBISMO GRAFICO)さんが仲良くて、描いてって言ってるから描いてって写真が送られてきたんですけど、それがわりと普段の加藤さんという感じの写真で、僕のイメージのなかのテレビに出ている加藤紀子さんではなかったんですよ。僕の知っている加藤紀子さんではないなと思いながら、その写真を元に描いて。パブリック・イメージもあるだろうしという感じで大変でしたね。 ── LOSTAGEのグッズとかはそもそもやられてると思うんですが、ここからはじまってイラストの仕事とかもあるみたいですか。 五味けっこうありましたね。具体的に言うと亀田の柿の種と、あとは金麦とか。オレンジページの編集さんがどっかから僕のことを見つけてきて、柿の種のキャラクターを作ってきてくれとか。あとは全日本女子のバレーのさおりん……木村沙織さんの似顔絵のキーホルダー作るから、その原画を描いてほしいとか。あとは映画の『モテキ』ですね。toeの山嵜さん経由で監督の大根(仁)さんから話が来て。そのほかは『自転車は左側を走ろう、Keep Left』みたいなアサヒ・サイクルさんっていう自転車屋と自転車協会のキャンペーンとか、音楽と関係ないオファーもたまに来ますね。 ── アイコンやっててより親密に繋がったアーティストとかもいると思うんですけど、音楽の方でおもしろい動きってあったりしましたか? 今回の12月10日のイヴェントが最たるものかとは思いますが。 五味せっかく描いてて、それきっかけで知り合ったんで、ライヴとか現場に還元したいと思ってて。自分のレコ発ツアーにCUBISMO GRAFICO FIVEに出てもらったりとか……大阪で〈生活〉って主催イヴェントをやって、これまで直接の交流なかった人を呼んでやったりとか。結構おもしろかったんですね、ツイッターで絡んでるのをお客さんとかも見てるから。 ── 妙な一体感が共有できると。 五味それを経てこうなっているというのがみんなわかってるからおもしろいですね。今度、12月10日はまさにその集大成というか。これまでって、アーティストが音源作るときに、レコーディング期間に入るとか、そういうときってあまりメディアに出ないじゃないですか。はじめて作品が完成してプロモーション期間になって出てくるだけで。でも、いまだとツイッターってリアルタイムでみんな書くから、レコーディングはじまる前とかにそういう雰囲気も出るじゃないですか? そこで、1曲コーラス入れるとか、行って1曲演奏するとかそういうやりとりがスムーズになってて。前の音源も、前の前の音源もゲストで参加してもらってる人がいるんですけど、ツイッターとか似顔絵とかでつながってやってもらったのが印象的というか。 ── LOSTAGEのバンド的にも、ここ数年って、自身レーベルを立ち上げたりとか、ファンとの目線がある意味で一気に近くなった時期で、そのツールのひとつがツイッターで、そこから見えてきてる風景も違ってきてるのかなと。 五味自分たちに関して、みんなが思ってたイメージと違うと思った人もいるみたいですけど、それはそれでいいなというか、親しみやすいと思ってて、距離も近い感じがするし。謎めいた感じで、そういうのをやらない方がいい人もいるとは思うんですけど、僕とかは自分でリリースもやってる。自分の思ったことを書けて、それにダイレクトに反応があった方がやりやすいし、自分には向いているというか。この前のミニ・アルバムもほとんどノー・プロモーションで出しても、ツイッターがあったから、それなりに手応えがあって。そういうことを考えると僕らは向いているかなと。 ── しかも、そのとっかかりにこのアイコンがあったというのは大きいですよね? 五味それは大きいですね。 ── でも、まさか本になるとはって感じですよね。 五味ほんま落書きみたいなところからはじまって、ちょっとずつマウスの扱いにも慣れるようになって、無茶苦茶うまいとかではないんですけど。もちろん、まわりにいる手伝ってくれる人たちがいてできたわけですけど。こうなるとは思ってなかったですね。 ── ちなみにどんな経緯で本に? 五味そもそも東京で、何度か場所借りて、アイコンの展示をやってたんですよ。で、そのなかでスペシャダイナーでやったときに、この本作った編集の幸山さんと作業してたんですよ。そのときに幸山さんのアイコンも描いて、仲良くなって。で、その後もどんどん似顔絵アイコンも増えていって、いろいろツイッターとかでワイワイやってるなかで本にまとめたらおもしろいって感じで。もう、ノリで作った本ですよ。ある意味で。 ── でも、これがLOASTAGEというバンドの音を知るきっかけになったら良いですよね。 五味そう、きっかけになればいちばん良いですね。 ── ちなみに、これってなにで描いてるんですか? イラレ? 五味これは……はてなダイアリーでブログを前にやってて、いまはツイッターが中心になってあまりブログを書かなくなったんですけど。ブログの記事に写真とかイラストとかを上げる機能のなかに、簡単なイラストを描くやつがあって、それで描いてるんですよ。筆の種類も3つくらいしかないような……。 ── でも、このタッチはそれでないと出せないと。 五味イラレとかだと、細かく過ぎて……。 ── はてなのそのサーヴィス無くなったら書けなくなるっていう(笑)。 五味そうなんですよ! ── まわりの方の反応とかどうですか? 例えばメンバーとか。 五味メンバー、最初はツイッターとかちょっと気持ち悪いとか言ってたのに、いまはやってますけど。やってない人はあの楽しみみたいなものってわからないじゃないですか? それは当たり前なんですが、最初気持ちワルがられてて。有名な人のアイコンを描いて、その人が使ってるとうれしいじゃないですか? 例えばいとうせいこうさんの似顔絵描いて喜んでても、他のメンバーがツイッターやってないときはなんのことだかわからないわけですよ(笑)。だから、その温度差はありましたけどね。あと本になったのと、映画の『モテキ』にアイコンが出たりして、おかんがすごい喜んでました。 ── ここで五味さんのLOSTAGE本体のお話も聴きたいんですけど、ミニ・アルバムを8月にリリースされていますが、新作のご予定は? 五味いま作っていて、来年の2月からレコーディングして6月ぐらいに出せたらと思って、いま準備してます。その前に中尾憲太郎のクリプトシティとLOSTAGEのスプリットの7インチが出て、2月か3月ぐらいにツアーを回ろうっていう感じですね。タイトなスケジュールでしっかり動いてますね。 ── 最後にリキッドルームで開かれる12月10日のリリース・イヴェントに関して訊きたいんですけど、こういう形のイヴェントにしようと思ったのはなにかあるんですか? 五味大阪でアイコンきっかけで〈生活〉っていうイヴェントをやって、東京でもそういう感じのことをやろうって幸山さんと話してて、一緒にやるんだったらSPACE SHOWERにも手伝ってもらって。呼びたいバンドで、このアイコンきっかけで知りあった人たちを集めて大きいのやろうって。□□□は一緒にやるのははじめてなんで楽しみですね。 ── 出演バンドについてコメントを。まずはASPARAGUS。 五味アスパラ主催のツアーも一緒に回ったり、結構前からアイコン関係なくよくやってたんですけど。ひさしぶりに、この組み合わせ生きるところもあると思うんで。3ピースになってから、僕らが手本にしているバンドですね。 ── お次は、Idol Punch。 五味Idol Punchは……(笑)。 ── とりあえず笑顔が出る感じっすね。 五味飛び道具的なというか、想像を超えた可能性に期待しております。 ── なんかニヤつきながら。 五味説明しにくいですよね(笑)。でも、最近、Raccoさんとはいろいろやりとりしてたんでバンドとしてもやりたいなっていうところがあって。 ── 次は三浦康嗣×村田シゲ feat.□□□。 五味□□□ははじめてやるんですけど、本当はせいこうさんにもお願いしたかったんですけどスケジュールの都合で実現しなかったんですよ。でも、このふたりと僕らが一緒にやったりとか、8ottoとこのふたりが一緒にやったりとか、この日のために曲を作るみたいなのもあるんですよ。 ── 単純に対バン的に出るんではなくて、当時はコラボもあると。 五味ある瞬間はもの凄い人数が舞台にあがるところがあるかもしれないです。いま仕込みをやってて、いろいろしかけがあります。 ── 次は8otto。 五味そもそも、似顔絵アイコンのはじまりがDAWAさんと8ottoのベースのTORAだったので、DAWAさんと8ottoは、この本のリリース・イヴェントには呼ばんわけにはいかんなと。でも、8ottoはもともと好きなバンドなんでこうやって一緒にリキッドルームとかでできるのはうれしいですね。感慨深いっすね。 ── で、さきほども話が出てきたDAWAさんですが、この人がいなければこの事態にはならなかったというか。 五味「俺がやったった」みたいなオーラ出してきますからね。「関西をフックアップしてがんばっていこう」みたいな人なんで頼もしいですよね。 五味アイコン・ブック発売記念のアイコン展 2011.12.11.SUN〜12.18.SUN #oshare in Time out Café&Diner Gallery ——五味岳久(LOSTAGE)アイコン展—— @TIME OUT CAFE&DINER GALLERY(LIQUIDROOM2F) くわしい公演概要はコチラ 五味アイコンブック「#oshare in DICTIONARY」発売記念イヴェント! #oshare史上初となる展覧会とライヴのコラボイヴェント 2012.12.10.SAT LOSTAGE & SPACE SHOWER TV present #oshare in LIQUIDROOM LIVE:ASPARAGUS、IdolPunch、LOSTAGE、三浦康嗣×村田シゲ feat.□□□、8otto DJ : DAWA (FLAKE RECORDS) FOOD:RACCOS BURGER くわしい公演概要はコチラ 終演後にアフターパーティ(2部)もあり! 2012.12.10.SAT 『#oshare in LIQUIDLOFT(第2部)』 @LIQUIDLOFT (LIQUIDROOM 2F) OPEN/START 23:00予定 DJ:DJ苦笑爆笑 (五味岳久+TORA)、TGMX (FRONTIER BACKYARD)、JxJx(YOUR SONG IS GOOD)、NICO(Sawagi) LIVE:Ropes、KC(ex.Riddim Saunter) TALE:ギ LOVESONG ORCHESTRA(Racco+岡峰光舟) FOOD:RACCOS BURGER 本編「#oshare in LIQUIDROOM」のチケット持参で1,000円にて入場可能 ※未成年入場不可、入場の際に顔写真つき身分証明書にてID提示をお願いします。 くわしい公演概要はコチラ

ひょんなところから、アーティストや音楽業界関係者にまたたく間に広まった、五味岳久によるツイッターの似顔絵アイコン。300人以上のアイコンと描かれた本人のコメントを収録。またインタヴュー中にもある、横山健のアイコン制作秘話が詰まったその日のツイッター・タイムラインや後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、村田シゲ(□□□/CUBISMO GRAFICO FIVE)などとの対談もあり。五味アイコンの魅力と謎にせまる1冊。

RECENT INTERVIEW

INTERVIEW TOP

RECENT INTERVIEW

INTERVIEW TOP