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対談:かせきさいだぁ X カジヒデキ

対談:かせきさいだぁ X カジヒデキ

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いよいよ、開催! ハグトンフェスDX


 いよいよ、5月4日に開催の迫った〈ハグトンフェスDX〉。主宰となるかせきさいだぁはもちろんのこと、ライヴにはカジヒデキ、小島麻由美、スペシャル・ゲストは堀込高樹(キリンジ)。DJには川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)、木暮晋也(ヒックスヴィル)。そして、さらにトーク・ゲストにはみうらじゅんといとうせいこうの、“スライドショー”なふたりが登場(スライドショーではありません)するという鉄壁の布陣。さらに会場にはフード以外にもさまざまな屋台や写真の展示などが立ち並ぶ、まさにフェス状態となる予定。この催しの全貌をつかむべく、その主宰のかせきさいだぁ、そしてデビュー当時からお互いの作品やライヴで共演し、これまで大小さまざまな会場でも行われてきた〈ハグトンフェス〉にも参加してきたカジヒデキの対談を! デビュー当時の懐かしの話から最近の話、〈ハグトンフェスDX〉の話、そしてそこで配られるというジンの内容(カジヒデキ武勇伝も!)まで濃密にお届けいたします!



── おふたりってかなり古いというか、下北沢の〈スリッツ〉(注1)時代からということでってことは20年ぐらいの仲ですよね?

かせきはじめに、かせきさいだぁになったばっかりのときに、〈ラヴ・パレード(注2)〉に一緒に出たときかな。

カジそうじゃないかな……だったかな。

かさき店長の山下さんが「かせきくんは、そんなにヒップホップ、ヒップホップしていないからいろんなイヴェントに出たら良いよ」って言ってくれて、いろんなイヴェントに出してくれたんですよ。たしかはじめに会ったときは、会場に入ったら、すでにカジくんがリハをやってて、それを終わってから「どうも」って感じで。

── ブリッジ時代ですか?

カジまだブリッジもやってたけど、後半の頃はたまに〈スリッツ〉でひとりでたまにやらせてもらってて。その当時、ソロはカジップルズっていう名前でやってた。

かせきそうだ、カジップルズだ。で、その次にリハで“冬へと走り出そう”をやったら、カジくんが飛んできて「なんでヒップホップの人がネオアコやってるんですか? なんでアズテック・カメラを!」って言われて(笑)。

── 「僕の領域を!」って(笑)。

かせきそうそう、詰め寄って来て、すぐに知り合いになって。

── 「クレームからはじまる出会い(笑)。

カジいやいや、すばらしいなと思って(笑)。

かせきニコニコ顔で、うれしそうに話しかけてくれて。いまは結構楽曲のなかでも歌ってますけど、当時はほとんどラップだったんで、ちゃんと伝わってるんだと思って。

カジとにかく〈スリッツ〉のリハで出会えたことが大事件だった! 確か、かせきさいだぁって人が今面白いぐらいの事を〈スリッツ〉の人から聞いてて、でも音とか予備知識とか無い頃だったんじゃないかな。あ、米国音楽のイヴェントだったかもしれない。

かせきああ、米国音楽のやつかも。たしかおまけ用の音源とったりしたよね。

カジブリッジの後半は、ソロでも活動しようかと準備し始めた時期だったので、歌詞の部分、特に日本語の詩というところで、意識を強く持ち出した頃だったから、「この人の詩には勝てないなぁ」って、でもこういう風に作れたらと凄く思いましたね。

かせきちょうど、僕がラップはじめた頃は世間的には「バンドやろうぜ」みたいな時期というか、イカ天とかの時期だったから、「俺はああいうのではないんだよな」という感じで。でも楽器もできないから「なんかヒップホップでどうやってやるのかわからないけどやってみよう」みたいなところで考えて。で、カジくんたちみたいにネオアコの人を見ると「ああいうのがイイ」とは思ってて。ヒップホップだしなぁ、と。

カジ僕らとかフリッパーズとかのネオアコ寄りのひとたちはスチャダラパーとか、LB(注3)の人たちがやってることは、ヒップホップなんだけどいろいろなものが入っててお洒落で、ユーモアのセンスがあって、かっこいいと思ってて。

かせき俺たちはアアしかできないだけだから(笑)。こっちはこっちでカジくんとかフリッパーズ見て「スマートであっちがイイ」って。

── 両方無いものねだりで(笑)。

かせきターンテーブルでやると、そのレコード以上の音は出ないっていう。

── その後は、それぞれの作品に参加されたりで交流は続くわけですが。

かせき「さいだぁぶる~す」を録音しているときに、トラック作ってくれててDJもやってくれてるイリシット・ツボイくんが、突然ベースが欲しいって言い出して。「知り合いにベース弾ける人いない?」って、でも当時のヒップホップの人脈にそんな人いないですよ。いまだったらいますけど。で、「あ、ひとりいるぞ」ってカジくんのこと思い出して、丁度近くにいたとかで、すぐに来てくれて、弾いてくれて。

── その日のオファーで?

かせきそうそう。頼んだ1時間後くらいにきてくれて。ヒップホップはああだこうだしなきゃいけないところを、ミュージシャンはすぐに弾いてできるから、うらやましいなと。

カジ「さいだぁぶる~す」はクラウドベリー・ジャムの曲をサンプリングしてて、簡単にって言うと失礼だけど、あの音の感覚とかフレーズがすぐに出せて良いなと思ってて。もちろん曲も実際すごい良くて。

かせきみんなバンドの人たちはクラウドベリー・ジャムみたいな曲を作りたいって言ってがんばってるのに、俺らはサンプリングしたらできちゃうっていう(笑)。

カジそれはうらやましいなと(笑)。

かせきクラウドベリー・ジャム自体はすごくヒップホップに興味があって「ぜひ使ってくれ」って。

カジ自分のソロのデビューの際、かせきさいだぁの影響は結構あるかも。

かせき「カジヒデキを生んだのはかせきさいだぁ」、全然、そんなことないよ(笑)。

カジでもブリッジを解散したのが95年の夏で、それから1年くらいしてソロ・デビューしたんだけど、その間にかせきさいだぁのバックとかやってるんだよね。

かせきほんとだ、バックやってもらってたよね! 

カジホフディランのふたりと、何曲かやったよね。

かせきそのとき、バック・バンドがホフディランだったんですよ。逆に彼らがやるときはバック・コーラスとか、振り付けとかやって。ホフディランもまだデビュー前だからまだそんなにありがたみがない(笑)。

カジそういうことも含めて、すごく良い影響を貰ったな。

かせきソロ・デビュー前だったんだ。ソロ・デビューって勇気いるよね。

カジそうそう。怖かったよ。ソロを準備しているときも結局半年くらいは怖くて、なにも進まなくて。曲は作るんだけど「こんな曲で良いのかな」って。

かせき誰にも相談できないしね。ソロで出たときはちょっとびっくりしたもん。「バンド組むのかな」ってぼんやり思ってたから。自分がメインでも、バンドという体裁と取るのかなと。“カジヒデキ”ってカタカナのソロ・アーティストになったときはびっくりした。はじめの炎のロゴのTシャツとかびっくりしたもん。「あんなお洒落な人が火事って……」(笑)。

カジソロ・デビューに関しては、そのへんは振り切ろうと思ってて。もう、その当時は「渋谷系、おしゃれ」みたいなのは売れないっていうか、それ以上いくためにはなにかを捨てないといけないと思って(笑)。

かせきあれは勝手にレコード会社の人が「これでどうですか?」って作ったの「ハイ!」ってやっちゃったんだと思って。

カジ名前でやるのが良いのか“コーネリアス”みたいなプロジェクト名にした方が良いのか。最後まで凄く悩みましたよ。友人を集めて、名前会議をやったりして。一応、カジップルズが最後まで残ってたけど、結論としては“カジヒデキ”にしたんだよね。

かせき“かせきさいだぁ”は“コーネリアス”みたいな名前というか、バンド名のつもりで。人が増えても良いように。でも増えなかったから、僕の名前になっちゃった。本当は「かせきさいだぁの加藤くん」だけど。

── それが96年とかの話だと思うんで、もう16年とかいろいろと。

かせき共通の友だちも多いから、イヴェントとかでなんだかんだ会うんだよね。「あ、カジくん!」みたいな。

カジいろいろやらせてもらったりとか。

── お互いの印象みたいなものってどうですか?

かせきカジくんは本当にずっと同じことやってるのは、最近になって本当に噛み締めて思ってるんだよね。俺も変わってないって言われるけど、結構変わってると思うし。カジくんはデビューの頃からの路線をずっとやってる気がしてブレてない。カジくんの15周年のときに、ゲストが僕と小山田くんだったでしょ? リハのときも小山田くんと最初はどうでも良い話でもりあがってたんだけど、途中からカジくんの声が聴こえてきたら「変わってないのは本当にすごい、このブレてなさはすごい。変わってないつもりでも変わっちゃうじゃん」ってふたりでずっと話しはじめちゃって。見た目も変わらないってはじめは騒いでたら、音も変わってなくて。でも新鮮に聴こえて、無理してやってる感覚もないし。「すごいな、カジくん」って小山田くんとずっと。

カジありがとうございます(笑)。かせきさいだぁは、一番最初からスタイルやイメージが、ハイレヴェルで完成しているので、そういう意味で、どんな事をやっても一貫していると感じてますね。引用を用いた歌詞のセンスは、本当にすごいと思うし、音楽の部分のアプローチもいつも面白い。やっぱり、いつも新鮮な感じがするんだよね。

かせきでも、いまだにさっきの続きだとカジくんのかわいいアプローチにはびっくりさせられるよ。「なんでそんなかわいい言葉出てくるの!」という感じでさ。それは浮かばない。それでいて「前とは違うの出してきた!」っていう感じで、それは本当にびっくりする。ずっと同じだけど、飽きないみたいなところはソコだと思う。

カジでもそこはかせきくんとかの影響もあると思うな。小沢(健二)くんとかも本当にすごいし。やっぱりいまでもあの時にいた人達はすごいというか。

かせきいまでも「やってるなぁ」って思いますもん(笑)。家でみてて。

── というかここ数年でまた活発になってきましたよね。活動が。

かせき急に活発になりましたよね。

カジ僕としては、加藤くんがハグトーンズと活動をはじめたのは、かなりびっくりしたし、うれしかった!

かせきあれは2009年の夏ぐらいからはじめて、ライヴは9月くらい。

カジ僕はたぶんその頃ライブを観たんだけど、もちろんDJとのライブも好きだけど、バンドでもこういう風にできるんだと思って。すごく感動したなぁ。加藤くんはいい声をしていて歌もうまいから、歌ものが多めでも結構いけちゃうんだなって。

かせきやり方をずっと考えてて、サードができなかったというのもあるんだけど(笑)。2000年くらいはお金がいくらかかるかわからないから、「サンプリングはしちゃダメ」って言われて「どういう形態かなぁ。別のやり方だったらどうしたらいいんだ」って考えてて。(ワタナ)ベイビーと曲作ってたら、単なるBaby&CIDER≡になっちゃって。これはかせきさいだぁでもなんでもないって感じで。木暮さんともふたりでがっちり作ろうって言って作ってたら、木暮さん色も出て、たぶん、それはカジくんとも一緒の結果になってカジくん色がばっちり出て、そうやってかせきさいだぁじゃない、ふたりで作った他のバンドという感じになると思う。アクの強い同士やると(笑)。サードを作ろうと思ってたんだけど「アクの強すぎる人とやると違うバンドにできてしまう」っていうのに気づいて。あとは若い子とやるしかないなと思って。若い子とやるとちょっと引いてくれるでしょ? 

── パイセン・バンマスを立ててくれると(笑)。

かせきそうそう。でも、カジくんも若い人たちとか、いろんなのでやってるよね。ソロだから、毎回バックのメンバー変えようと思えば変えられるから。そういう意味では、とくにここ何年かは若返りというか。リディムサウンターの(古川)太一くんとやったりとか、そういうところはサウンドにも大きく反映するなと思ってて。 

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