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その日の思い出は消えたとしても、絵や日記は残ります。
そして、明日の僕を勇気づけてくれます。


 あの事故の後、曖昧な“記憶”との葛藤、混乱のなかで、彼は不思議なことにディジュリドゥではなく、まずはじめに絵を無心で描き出した。そして、絵を描くという行為が身体に宿る表現の記憶を呼び覚ましたのではないだろうか? その後、家族の助けとともに懸命にリハビリに励み、仲 間たちとの再開を経て、彼はディジュリドゥの演奏を取り戻し、2011年春より、音楽活動を再開することになる。その顛末は話題となったドキュメンタリー映画『フラッシュバックメモリーズ3D』に詳しい。その映画、そして、実際にその絵を目の前にしたとき、その絵の圧倒的なエネルギーを浴びると、絵を描くという表現行為が、復活へと繋がる重要なファクターであったように思えてならない。

 現在〈KATA〉にて開催中の個展「ひかり」にて、体感して欲しい。



── 今回の個展のタイトルに「ひかり」というタイトルを付けたのはどのような意味があるんでしょうか? なにかモチーフになった経験などがあるんでしょうか?

GOMA意識が無かったときに見ていた“光”。その“光”がそこに無かったら、この世界に戻って来れなかったかもしれない。いまでは光がすべての源のように感じます。

── 映画『フラッシュバックメモリーズ3D』のなかでも、事故直後の記憶として象徴的にその“光”の話が出てきていましたが、そのときの記憶の再現というか、その経験が絵を描くということにつながっていったんでしょうか?

GOMAそうだと思います。いまをかたち作るすべてのものは過去の記憶のもとに成り立っています。


── いわゆる点描画という手法になるかと思いますが、これも無意識にでてきたのでしょうか? ひとつGOMAさんに関係があるもので思いつくのは、よくディジュリドゥなどに描かれているアポリジニーのアートが、同じ様な点描画ですが。

GOMA事故後、しばらくは5分前、10分前の記憶も消えていたので、どうやって書き出したのかいまだに自分でもわかりません。最初から線で描くのではなく、点で描いていたようです。オーストラリアに住んでいた頃の記憶がそうさせたんだと思います。

── 絵を最初に描くということを思いついたとき、ほぼ無意識だったようなことが映画内で語られていましたが、現在は例えば1日のなかで、どのようなときに「絵を描こう」と思うのですか?

GOMA画像がフラッシュバックしてきたとき。いつかはわかりません。浮かんで来たら、描きます。

── 絵を描き続けることで、事故後から自分自身のなかで変化したことはありますか?



GOMAその日の生きた証を残すことで、不安が解消され、気持ちが前向きになります。その日の思い出は消えたとしても、絵や日記は残ります。そして、明日の僕を勇気づけてくれます。

── 映画『フラッシュバックメモリーズ3D』の視角表現に関して、GOMAさんの経験などを監督さんと話して、表現に生かされている部分などは あるのでしょうか?

GOMA(映画は)過去、現在、未来が分離してしまった僕の脳が視覚的に再現されていると思います。脳損傷後におこるパターンのひとつを少し体感して頂けると思います。

── 映画でも描かれていた、音楽活動再開のきっかけとなった、事故後はじめて、The Jungle Rhythm Sectionの方々と音を出したときのことで、印象的だったことがあれば教えて下さい。

GOMA最近メンバーに聴いたのですが、ドラムキットの音の迫力にビックリしていたようです。まだまだ笑える話もたくさんありますが、また別の機会に。

── 音楽を取り戻したことで、他のさまざまな生活などの記憶が戻る、もしくは日々の生活が改善に向かったなどはありましたか?

GOMA事故前の自分に少し近づけた気がしました。そして、待ってくれている人がいる事を認識できたので、さらにリハビリに立ち向かう勇気 をもらいました。

── 差し支えなければお答えください。以前のようなPCを利用したライヴや音楽制作というのはやはり、いま現在は難しい状況でしょうか?

GOMA難しい現状です。何度かトライしていますが、コンピューター画面に脳がついていけないのが現実です。けどチャレンジは続けていきた いと思います。

── すぐには難しいと思いますが、ぜひとも新しい音楽作品をリリースして欲しいなと思います。今後、その予定などはありますでしょうか?もしくは展望のようなものでもかまいません。

GOMAいまの僕の脳でしか作れない音像があるように思いますので、それをどうすれば現実化できるのか探りたいです。

── いま、絵を描く、ディジュリドゥを演奏するということ以外で、最も楽しいひとときとはなんでしょうか?

GOMA走る、ヨガ、サーフィン、コーヒー、赤ワイン。すべて現実さえも忘れさせてくれる瞬間があるから。

── 最後にひとつ質問ですが、“ひかり”と聞いて思いつくことをなんでも書いて下さい。

GOMA太陽、月、花火

1303g-22

GOMA 記憶展 第三章「ひかり」
日程:2013/03/09(土)~3/20(水祝)
時間:月-金 12:00-21:30 土日祝 13:00-21:30
料金:入場無料
http://www.kata-gallery.net/

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