MASONNA / 後藤まりこ / MO’SOME TONEBENDER / BO NINGEN
鼓膜と心を突き破った轟音の夜
轟音祭と呼びたいほどに、猛々しいサウンド&大音量の競演!LIQUIDROOMの9周年を記念したイベント「UNDER THE INFLUENCE」が行われた。MASONNA、後藤まりこ、MO’SOME TONEBENDER、急遽参戦が決まったBO NINGENというクセのある4アーティストが集結し、それぞれの「轟音」をそれぞれの表現で展開してくれた。
まずはBO NINGENが登場。イギリスを拠点に活動し、現地でも高い評価を得ているバンドだが、まず見た目から異様を放つ。全員長髪で民族衣装のような服装をまとっている。音がまた見た目のインパクトに負けないくらい強烈。繰り返されるフレーズと、轟音と共に拡張していくサイケデリックな世界観で、聴くほどに陶酔させてくれる。ハードロックのようなドライヴィンなサウンドも表現すれば、インプロのような即興性に溢れた楽曲も披露する。まさに音の幻術師たち。その得体の知れないポテンシャルを存分に見せ付けてくれた。
後藤まりこは登場するなり「よろしくお願いします」と、謙虚に挨拶。関西弁のイントネーションがなんとも可愛らしい。彼女が作り出す楽曲には個性的としか言いようのない独特な世界観が存在しており、なおかつどの曲もクオリティが高い。ポストロック的アプローチのサウンドを、バンド編成で聴かせていたが、支えるバックミュージシャンたちの技量も抜群。その摩訶不思議な世界観を見事に表現していた。そして小さな体からしぼり出される歌声には、ハードコアの気概が満載。ステージ上で叫び、飛び跳ね、時には祈りのように座り込む姿には、もっと見ていたいと思わせる狂気が宿っている。狂ったら、あとは魂にまかせて歌うダケ。つかめそうでつかめない、そんな神秘性と危うさが彼女の魅力なのだ。
MO’SOME TONEBENDERは初っ端から驚愕の展開。ベースの武井靖典が般若の面を被り、「祭」と書かれた大きな団扇を持って客席袖から登場し、観客の間を練り歩きながらステージへと上がる。その時点で観客の心をすっかり鷲掴み。ロックンロール、ガレージ、エレクトロなど、様々なテイストの楽曲を圧倒的な音量で畳み掛けてくる。その楽曲の変遷は、バンドとして常に挑戦的かつ実験的であることの証。幅広いナンバーをステージで表現できるのは、貪欲なまでに「生」を追求する正真正銘のライヴバンドであるからだ。この日一番の大声援が、彼らのパフォーマンスの凄まじさを物語っていた。
そしてトリを飾るのはMASONNA。洪水のようにとめどないノイズサウンドが会場全体の空気を一変させ、その空間の中を高く飛び、転び、喚く。そのステージング時間、わずか1分ほどの刹那。例えばウルトラマンが3分しか地球にいられないように、膨大過ぎるエネルギーの放出は短時間勝負を必要とするのだ。脅威の瞬発力で見せる、あまりにも孤高の闘い。しかし、あっけに取られるのとは違う、何か強烈な意思を受け取った瞬間。それはえも言われぬ心地よい高揚感を与え、世の中の嫌なことをなにもかも忘れさせてくれる。マゾさんはノイズ星雲から、地球の危機を救うためにやってきたヒーローなのだと、この日確信。そして、正義の味方は颯爽と去っていった。