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田我流 × フラワーカンパニーズ

田我流 × フラワーカンパニーズ

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9月にオープンから9周年を迎える恵比寿LIQUIDROOM。そのアニバーサリー月間を記念して、9月17日に異色の対バン・ライヴが行われる。名乗りを上げたのは、映画『サウダーヂ』主演を務め、セカンド・アルバム『B級映画のように2』のリリースを携えて、地元の山梨県一宮町から全国区へと進出したラップ・アーティスト、田我流。相対するのは、バンド結成25周年を来年に控え、最新シングル『夜空の太陽』と共に何度目かの絶頂期を迎えつつある日本屈指のライヴ・バンド、フラワーカンパニーズ。何故、この2組は同じステージに立つことになったのか? 対バン前の初顔合わせを兼ねた両者の対談には熱い思いの高まりと、そして、深いところで両者を繋げるいくつもの共通点があった。



「死ぬまで音楽をやり続けるという田我流くんの夢は俺たちと一緒だよ」(鈴木圭介)


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── 今回、LIQUIDROOMでの対バンが決まった田我流くんとフラワーカンパニーズはどう考えても異色の組み合わせですよね。

グレートマエカワ(以下マエカワ)「明らかに、そうですね(笑)」

田我流「でも、自分がフラワーカンパニーズとやりたくて、今回、声を掛けさせてもらったんですよ。まず、俺はeastern youthが超好きで、3月に渋谷QUATTROでやった「極東最前線」と7月に地元山梨で対バンが実現したので、じゃあ、次はフラカンだなって」

マエカワ「はははは。いきなり話が飛ぶなぁ」

鈴木圭介(以下圭介)「あのね、俺ら、eastern youthと対バンしたこともあるけど、リスナー的にeasternから俺らっていう流れはあんまりないことなんだよね(笑)」

マエカワ「話を整理すると、LIQUIDROOMのスタッフから「田我流さんから9月に対バンをお願い出来ないかという話がありまして……」っていう連絡があって。その時点では申し訳ないけど、田我流くんの作品を聴いたことがなかったから、まずはチェックさせてもらいつつ、うちらのスタッフのなかに田我流くんの音楽が好きな人がおって、「絶対面白いと思うよ」って。田我流くんがなんで俺らと一緒にやりたいのかは分からなかったんだけど、分からないなりに俺らのなかでも「これは絶対面白いに違いない」って話になった」

圭介「でも、「ギャングスタだったら、ちょっとマズいから、ギャングスタかどうか確認しようよ」って(笑)。で、周りからは「違う違う!」って言われたんだけど、田我流くんの写真を見たら、「やっぱり、ギャングスタなんじゃないの?」って(笑)。実は話をもらった時点ですでに俺は『ヒップホップの詩人たち』(都築響一著)って本を読んでて、その本のインタビューにトップバッターで出てきてたのは知ってたんだけど、アメリカに行って、会った黒人が麻薬の売人だったとか、そういうエピソードが出てきてたから、「それ、本人がギャングスタじゃないって言ってるだけでしょ」って思ってたの(笑)。でも、6月に出た(ライヴ・ドキュメンタリーDVD)『B級TOUR -日本編-』を観させてもらったら、「あ、違う!」って、ようやく分かった(笑)」

田我流「はははは。俺はリベラルな人間なんですけどね」

圭介「あのDVDを観たら、ゆるい感じのドキュメンタリーなのかと思いきや、一貫して流れるヒップホップのリズムに合わせて、パンパンって、映像が切り替わっていくし、フィクションだったり、笑いの要素がちょいちょい入ってくるから、一気に観ちゃったんだよね。あと、一番新しいアルバム『B級映画のように2』は震災や原発についての強いメッセージが込められていて、ライヴのMCでもそういうことを話しているんだけど、ちゃんと話にオチがあって、田我流くんの人の良さが伝わってきたんだよね」

田我流「危なかったすねー。DVD観てもらえなかったら、この対談はギャング相手ってことで始まってた、と(笑)」

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── はははは。田我流くんのなかで、eastern youthの次がフラカンっていうのは、どういう流れなんですかね?

田我流「自分の判断基準はスタイルに関係なく、どこまでいい歌詞なのかっていうことなんですよね。そういう意味でeastern youthの歌詞もとんでもないし、フラカンに関しては、『B級映画のように2』っていうアルバムを作っている時にすごい悩んでて、「もうダメだ。アルバム出来ないかもしれない」って考えながら、YouTubeで映像をあれこれ観てたんですよ。で、「そういえば、フラワーカンパニーズって聴いたことないから、ちょっと聴いてみようかな」って思い立って検索したら、「はぐれ者賛歌」って曲が出てきて、「これ、タイトルいいじゃねえか」って」

マエカワ「はははは!」

田我流「で、聴いてみたら、その時の俺の心境を完璧に代弁してくれた曲だったというか、スパーンときてしまって。その後、立て続けに「深夜高速」を聴いたら、「俺もこの曲と同じように「生きててよかった」っていう瞬間をひたすら求めて生きてるぞ」って。その後、リリックが書けないし、金もないっていうギリギリな状況で製作を続けながら、朝方、その2曲をかけて車を爆走させてたっていうプロセスを経て、アルバムが完成したんです。そういう経緯がありつつ、自分の夢を叶えていかないと、このままじゃ、音楽が面白くなくなっていっちゃうから、自分がやりたい人たちとどんどんライヴをやっていこうと。そうしたら、LIQUIDROOMから声が掛かったので、「フラカンとの対バンは無理ですか?」ってリクエストして、今回のミラクルが起きたっていう」

圭介「それはうれしいなー」

マエカワ「そして、YouTubeって、ありがたいし、いいチョイスしてくれたなって思うよ(笑)」

圭介「しかし、『B級映画のように2』っていうアルバムは、徹底的に突き詰めないと出てこない作品というか」

田我流「実際、頭にハゲが出来ちゃいましたからね」

圭介「熱量の入り方がハンパないもんね」

田我流「でも、俺も「深夜高速」を聴いた時、「これは相当なところまでいかないとこんな曲書けねぇよな」って思いましたよ」

マエカワ「曽我部(恵一)くんもね、彼はあの曲をどこかのコンビニで聴いたらしいんだけど、「圭介くんは恐ろしい。俺、あんな風には思えない」って言ってたんだけど、聴く人によってはそう思うみたいだね。俺らのなかでは(圭介との)距離が近すぎるから、そういう風には思えなかったというか、もちろん、いい曲だとは思ったよ。でも、メンバーの間では「この曲はちょっと痛すぎるんじゃねえか?」って感じだったもん」

圭介「あの曲を書いた時、大変な状況を乗り越えて、精神状態は落ち着いてたんだけど……」

マエカワ「乗り越えてなかったんじゃないの?(笑)」

圭介「(笑)そういうことなのかもね。未だに同じようなところにいる気はする」

田我流「バンドマンだろうが、ヒップホップやってる人だろうが、結局は同じで、自分から動かない限り安定はつかめないし、金も入ってこないじゃないですか。ずっと同じことを淡々と繰り返しながら、それでも前に進んでアップデートしていかなきゃっていう、そういう焦燥感が自分の心境とドンピシャだったし、それを理路整然とした歌詞にしているところがうらやましくも思ったんですよね。俺、歌は歌えないし、言葉数を費やして長い曲を書いてますけど、あんな理路整然としたものがパーンと出てて、「生きててよかった」っていう一言があれば、それで終わるじゃんって。フラカンは「はぐれ者賛歌」しかり、「この胸の中だけ」しかり、みんなが日々感じてることをなんて上手く表現するんだろうって思うし、それに対するバンド・サウンドも徹底してストレートで無駄がないじゃないですか」

圭介「俺は俺で、『ヒップホップの詩人たち』のインタビューを読んでたら、田我流くんは「ずっと音楽で食えたら、それが一番いいけど、食えなくなったとしても、死ぬまで音楽をやり続けるのが一番の夢だから」って言ってたじゃない? その発言を読みながら、「俺と完全に一緒だな」って思って」

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