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在日ファンク

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「良いマッサージに行くつもりで来てくれれば。心も体も軽くなると思いますよ(仰木)」

「笑うな」をはじめ、「場 (MURO’S GENBA REMIX)」など、作品をCDだけではなくアナログでもカットする在日ファンク。ニューアルバムとなる「レインボー」もこれまでと同様、アナログ盤としてリリースされる運びとなった。今回は在日ファンク・メンバー(浜野/仰木/永田)に加えて、美空ひばりや都はるみなど、数々のコロムビア作品を手がけ、今作でもアナログ・リマスターとカッティングを手がけた名匠:武沢茂氏、そして在日ファンク・ディレクターの庄司氏を迎え、アナログの制作作業やアナログ盤への思い、そしてアナログのリリース・パーティとして、DJにSEX山口を迎えて行われる「ば vol.3」についても伺った。

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── 新作となる「レインボー」もアナログ・カットされる事となりましたが、根本的な質問として、作品をアナログにする理由からお教え願えればと。

庄司在日ファンクがコロムビアに移籍するのと同時に、作品をアナログ化していて。もともと僕自身、ブラック・ミュージックが好きで、レコードも集めていたいう経緯もあって、在日ファンクの作品がアナログになったらどう聴こえるのかに興味があったんですよね。そして、コロムビアには武沢さんもいるし、アナログを作れる環境がある。それなら作ろうっていう、単純な理由ですね。

浜野僕も前からファンクのアナログを買っていたし、メンバーもアナログが好きな人間が多いので。

永田アナログは聴いてて疲れないですよね。CDは通して聴くのにちょっと体力がいる時もあるけど、アナログだと音質的にも疲れないし、一旦は片面で終わるから、続けるにしろ止めるにしろ、自分のペースで聴くことが出来るんですよね。あと、自分で針を下ろして聴く、上げて止めるっていうアクション自体も好きですね。

仰木あれ?永田さんちのプレーヤーは自動再生出来るやつでしたよね?

永田でも、レコードが最後まで行かないで針が上がっちゃったり(笑)

武沢それでクレームが来る時があるんですよ。コロムビアはJIS規格の範囲内でレコードに溝を切ってるから、規格上は大丈夫なはずなんだけど、『最後まで行かないで針が上がっちゃう、レコードがおかしいんじゃないか』っていうクレームを受けた事があって。

永田ウチのは9割のレコードが途中で止まっちゃうんで、たぶんウチの機材の方が故障してるんだと思いますね(笑)

浜野ウチの間取りを考える時に、サウンド・システムを整えて、ちゃんとした音で聴けるようにセッティングして。自分の人生に必要な間取りを考えた時に、そこにレコード・プレーヤーが必要だったという。

永田ちょっと格好つけ過ぎじゃない?(笑)

浜野ターンテーブルをちゃんとスピーカーに繋いで、ソファーでレコードを聴く……最高ですね。

武沢レコードのサウンド・システムは基本的に持ち運びできないから、家の中で定位置で聴くっていうのもミソですよね。「自分の空間で聴く」のがレコードの魅力でもあると思う

浜野CDやiTunesだと曲を飛ばせるけど、レコードはそれが面倒くさいじゃないですか。だから、レコードを聴くのと時間が進むのは、平行してると思うんですよね。レコードと、音楽と、一緒に流れていく時間、というか……良い事言った(笑)。音楽史の文脈的にも、レコードによってライヴじゃなくても音楽が聴けるようになって、音楽が大量生産されるようになった。だから、レコードに収録された音楽は膨大な数に上るし、CDからの世代である僕らからするとそこには、まだ踏み入れてない大地があるって事に気付かされたりもして。音楽の聴き方が淘汰されていく中で、こんな広いフィールドがまだあったんだって感じるし、アナログを再発掘する事で、再発見する事も多くて。僕らもファンクを再発掘のつもりでやってるから、そこは繋がってると思いますね。

永田再発掘、再利用というかね。

浜野いまでこそCDにアーカイブされる盤も少なくはないけど、それでも、ファンクは自分で掘らないと探せない音楽だと思うし、掘るのはやっぱりレコードですよね。

── 在日ファンク音源のアナログ化は武沢さんが手がけられていますが、在日ファンクを手がけられての印象は?

武沢一番最初に聴かせて貰った時から、馴染みがある、ほっとする音だと感じましたね。音も今のポップスみたいに(ダイナミックレンジに音が)詰まってないから、アナログ化する時に楽しいんですよね。レコーディング/マスタリング・エンジニアの方も、そういった音を在日ファンクに求めてるんだなって。

浜野音の情報量的にも、あまり詰め込むと高揚感が削がれちゃうのかなって。その時の演奏の息遣いみたいなモノをパッケージしたいというか。

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── 今の、特にエレクトロ系のポップスは、音を波形で見るとレンジいっぱいまで詰まっている場合が多いですが、在日ファンクの音は、波形で見てもしっかり山が出来ていますよね。その方がレコードに切る時にも面白いということですね。

武沢そうですね。まず、音源そのままの音をラッカー盤に切るという事自体が、まず難しいんですよね。

浜野というのは?

武沢デジタルだとマスタリング作業した音がほぼそのまま反映されるけど、アナログはラッカー盤を切る時のカッターのカーブ比だったり、カッター・ヘッドの圧力だったり、いろんな条件があって、それによって音にも変化が出るんですよね。その時に、音自体に山がしっかりあったほうが、どの音を上げて、どこまでレベルを上げれば、アナログとして理想の音になるのかが作れる面白みがあるんですよね。

浜野今回はカッティングのマスタリングの時にも高音をつっこんで貰いましたね。

武沢山があるとそれが出来るんですよね。あと、仰木さんはスゴく耳がいいんですよ。0.5デシベル上げたのも気づいて。

仰木分かっちゃったんですよね~(笑)。アナログ用にマスタリングしてもらって、その一曲ごとにラッカー盤に切って、それを聴いてレベルをどうしましょうかって作業を何回も繰り返して。でも、アナログだとヴォリュームが上がったのがスゴく分かりやすかった。

武沢アナログは音のレンジが広いし、他の帯域にも影響するので、デジタルよりわかりやすいかも知れないですね。

── なるほど。

浜野武沢さんは在日ファンクの他にどんな方のエンジニアをされてきたんですか?

武沢本当に色んな方を手がけさせて貰ってきましたけど、アナログが全盛の頃だと、美空ひばりさんや島倉千代子さん、都はるみさんなどですね。いま、在日ファンクのメンバーが座ってるソファは、赤坂の1スタから持ってきたソファーなので島倉さんや美空さんも座られてますよ。

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── 在日ファンクは作品がアナログになる事を意識されてますか?

永田バンド側はそんなに意識はしてないですね。僕らよりもエンジニアが意識して、そういうミックスにしてくれてます。今回の「レインボー」はレコーディングも一発撮りみたいな形が多かった。後から修正はほとんど加えないで作ってます。昔よりもレコーディングに対しては厳しくなってますね。

仰木曲によっては、楽器ごとに分かれてるレコーディング・ブースのドアを開けて一斉に録ってるものもあります。他の楽器の音が混ざるから、後から楽器ごとの録り直しが出来ないんですよね。

永田つらいよね(笑)

仰木つらい(笑)。でも、その方が緊張感があるし、ファンクらしい空気感がパッケージされますね

浜野例えば、楽器ごとの波形のちょっとのズレをPro Tools上で合わせても、全然良くならないんですよね。だから、実はそのズレがノリの肝になってるんだろうし、そこに生の感覚がパックされるのかなって。

仰木最近の在日ファンクはレコーディングの仕方もそうだけど、機材的にも時代をさかのぼっている感じもするよね。後関さんなんかは1930年代のサックス使ってたり。

永田仰木もビンテージのギター使ってたり。前は大衆食堂だったのが、ちょっと素材にも拘るようにもなってるのかな(笑)

── 実際にアナログ化されたモノを聴いての感触は?

永田やっぱりアナログで聞くといいですね。音も太くなるし。

浜野CDの音の太さとアナログの音の太さは感触が違いますね。

仰木「ば」も迫ってるし、ライヴで形にするのが楽しみです。

── そんな「ば」ですが、久々の開催ですね。

浜野一年ぶりぐらいになっちゃいましたね。本当はもっとコンスタントにやりたいんだけど、ちょっと難しくて。

── 一回目のMUROさん、二回目のOL Killerに続いて、今回はSEX山口さんがDJに登場します。

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浜野RIP SLYMEのイベント(2015年出演の「真夏のWOW」)で一緒になって、その時に聴いたセク山さんのDJがスゴく気持ち良くて。それから「SEXY MUSIC ~FANTASY~」とか「Chill Japanese」とか、セク山さんのミックスCDが車の中でヘビーローテーションになってて。

永田なんかジェントル久保田と波長が合いそうな感じがするよね。

浜野わかる。ノリもスゴく良いし、スゲえ変な人だけど、でも安心できる変な人っていう(笑)。DJでも音楽の気持ちよさで盛り上げてくれそうですね。オーダーとしても、いつも通りのセク山さんで、普段通りに盛り上げて下さいって。「ば」は張り切る場所っていうよりも、会社帰りに一杯呑みに来る感じの場にしたいんで。僕らも気負わないで、普段通りやろうと思ってますね。

仰木素の在日ファンクを出せればなと。

浜野武沢さんもお時間があれば是非。

武沢そうですね。是非。

浜野若者と一緒にテキーラにまみれて貰って(笑)。普段のライヴでは出来ないアプローチもあると思うんで、僕らも楽しみですね。

永田自分たちのやりたい事をやる「ば」なんで。見てる人の気持ちいい所を押せるようなライヴになれば良いよね。

浜野整体気分で来て貰って(笑)

永田体と心をほぐしに来てもらえれば。

仰木良いマッサージに行くつもりで来てくれれば。心も体も軽くなると思いますよ。

出演:在日ファンク / SPECIAL GUEST DJ:SEX山口
日時:2016年7月4日(月曜日)開場/開演 19:30/20:00
会場名:リキッドルーム
前売券(発売中):3,000円[税込・1ドリンク代(500円)別途]
前売券取り扱い箇所:チケットぴあ[Pコード 296-883]、ローソンチケット[Lコード 71035]、イープラス

公演詳細はコチラから
https://www.liquidroom.net/schedule/20160704/28974/

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