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シネマスタッフ<br>愛とリスペクトに満ちた対バンで、シネマの未来が見えた<br/>

シネマスタッフ
愛とリスペクトに満ちた対バンで、シネマの未来が見えた

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cinema staff「デビュー10周年記念ライブシリーズ two strike to(2) night~平成終幕編」

 

 cinema staffが10周年を自ら祝う企画ライブ「デビュー10周年記念ライブシリーズ two strike to(2) night」。昨年6月から9mm Parabellum Bullet、Saucy Dog、GOOD ON THE REEL、夜の本気ダンス、KEYTALK、BRAHMANという錚々たる面々を迎えて展開してきたこのシリーズが、いよいよ最終局面を迎えた。「平成終幕編」と銘打たれた3月21日の岐阜club-G公演、そして3月24日のLIQUIDROOM公演のゲストとして招かれたのはcinema staffのメンバーも敬愛してやまないTHE BACK HORNだ。THE BACK HORNは昨年20周年を盛大に打ち上げたばかりなので、キャリアにしてその差はじつに10年となる先輩・後輩の両者。すでに岐阜で熱い対バンを繰り広げてきた両者が恵比寿で愛とリスペクトの火花を撒き散らした一夜をレポートする。

 

 先攻はTHE BACK HORN、1曲目「情景泥棒」でじんわりと空気を掴んでいくと、「シンフォニア」で「いこうぜリキッド!」と叫ぶ山田将司(Vo)のエモーショナルな歌が爆発する。岡峰光舟(B)のスラップベース、菅波栄純(G)の切れ味鋭いギターリフ、松田晋二(Ds)のパワフルなビート。いきなりぐぐっとフロアの温度が上がるのを感じる。3曲目「真夜中のライオン」を終えたところで、松田がマイクに向かって口を開く。「(cinema staffから)ずっとオファーを頂いていて、でもタイミングが合わずに……やっと実現しました。最高の夜にしましょう!」という言葉に大歓声が巻き起こる。

 

 「生命線」「白夜」、そして「美しい名前」と静かな激情が心の淵からせり上がってくるような楽曲を重ね、リキッドルームのフロアを圧倒的な世界観で包み込んでいくTHE BACK HORN。静と動のコントラスト、そしてシンプルなアンサンブルながら感情のグラデーションを饒舌に語り出すバンドサウンドこそ彼らの真骨頂だが、この短いセットでもそれをしっかりプレゼンテーションしてくるところはさすがだ。ここで松田がcinema staffとの馴れ初めを語りだす。10年前くらいに広島で自分たちの企画ライブに出てもらったこと、そのときのライブで、結成したてのシネマの音楽が生み出す情景感に「自分たちと通じる部分がある」と感じたこと。それを受けて山田が「ますます増幅する愛情、どうしたらいい!」と叫んだ。

 

 「暗闇でダンスを」ではフロアから幾本もの手が上がりゆらゆらとリズムに合わせて揺れて一体感を醸し出すと、「ハナレバナレ」を経て、THE BACK HORN屈指の大名曲「コバルトブルー」を投下。全身で歌い叫ぶ山田の声に呼応するようにバンドの音もエモーショナルに沸騰し、それに感化されるように大声のコーラスがフロアから鳴り響く。この光景、もう何度も観ているが、何度観ても鳥肌が立つ。最後は山田の「また会おうぜ!」という言葉から「刃」へ。フロアに向けられたマイクにありったけの声を張り上げるオーディエンス。最後までライブバンドとしての貫禄をしっかり見せつけたTHE BACK HORNだった。

 

THE BACK HORN

 

 

 

 そしていよいよcinema staffの出番だ。飯田瑞規(Vo・G)のオーバーワークによる喉の不調で昨年12月から一時的にライブ活動を休止していた彼ら。3月に活動再開したばかりで、バンド自身はもちろん集まったファンたちも飢えている状態。しかもTHE BACK HORNとの対バン。いつも以上にエモーショナルなライブになるであろうことは容易に想像できたが、その想像以上にものすごいライブだった。

 

 ライブの幕を切って落とした「pulse」から、飯田の艷やかな声と切っ先鋭いアンサンブルが空気をビリビリと震わせていく。続く「シャドウ」で美しいメロディとともに一気に飛翔してみせると、久野洋平(Ds)の叩き出すダンスビートと辻友貴(G)の幻想的なギターリフ、そしてコーラスワークが美しく融合した「AIMAI VISION」でリキッドルーム全体を踊らせる。緻密なアレンジワークでカラフルな情景を描き出しながら、同時にその緻密さを凌駕するエモーションが熱く吹き出す、これぞcinema staffというロックが鮮やかに展開する。

 

「ご心配おかけしまして。待っててくれてありがとうございます。復帰して3本目、本当に尊敬するTHE BACK HORNと一緒にやれて嬉しいです。あの、すごく飢えてたんで、一緒に楽しもう。最後までよろしく!」。飯田のそんな言葉に大きな拍手が送られると、ここからは怒涛の展開。三島想平(B)のシャウトがほとばしる「蜘蛛の巣」からメロディの美しさが際立つ「西南西の虹」へという流れでシネマの両極を見せつけると、力強いビートとギターのフィードバックノイズが牽引するスケールの大きな新曲を披露。進化し続けるバンドの姿をこのリキッドルームに刻みつける。

 

 ここで再びMC。飯田は先ほどのライブでTHE BACK HORNの松田が回想していた広島での共演時のことを「終わってからヘコんじゃうくらい」最低のライブだった、と振り返る。それから月日を経て一緒にできている喜びを口にした上で、飯田の話は2月に行われたTHE BACK HORNの武道館公演の話題へ。活動休止中ふさぎ込んでいた飯田が、久々にライブを観に行ったのがその武道館だったのだという。「本当にかっこよくて、とんでもない熱量で。体が熱くなって手が震えちゃうくらい。そのタイミングで本物のバンドを観れたというのは僕らにとってとても大事なことで。引き上げてもらったような気がしました」。そう語る飯田の目はきらきらと輝いている。不測のライブ休止を経て、確かにcinema staffは強くなったのかもしれない。「この(休止)期間が意味のあるものだったと、これからの活動で必ず示すんで、これからもよろしく。それから言い忘れてたけど、俺たちも本物なんで」。

 

 その飯田の言葉は、それからの数曲で確かに証明された。熱のこもった歌が心に響いた「first song(at the terminal)」、「僕たちはうまくやれる」という歌詞がまた違う意味合いをもって聞こえてきた「skeleton」、そして――「最後一緒に歌ってくれますか」という飯田の呼びかけから万感のシンガロングが広がった「HYPER CHANT」。辻はステージ前の柵に立って声を張り上げる。再びライブの最前線に帰ってきた喜びが爆発する、感動的な光景が広がった。

 

 アンコールでは5月29日にニューシングル(アニメ『進撃の巨人』のエンディングテーマ)のリリースと3年ぶりとなるワンマンツアーの開催を発表し、「GATE」で大団円。再び巻き起こった大合唱が、10周年を超え新たな未来へ突き進む彼らを盛大に祝福していた。

 

 

 

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