FEATURE-INTERVIEW

THEO PARRISH

インタヴュー:河村祐介/翻訳:渡辺志保/取材協力:AHB PRODUCTION

そう、レコードを扱えるというのはスペシャリストとしての証なのだ。

 7月18日、恵比寿LIQUIDROOM6周年、そして10周年を迎える〈メタモルフォーゼ〉プレ・パーティ(今年は9月4日の開催!)として、モーリス・フルトンとともに襲来するセオ・パリッシュ。1990年代後半、ムーディーマンとともに、デトロイトのアンダーグラウンド・シーンから現れ、アーティストとしての存在感はもちろん、その卓越したDJスキルでいまやデトロイトのハウス・シーンを代表するトップDJとしての評価は揺るぎないものになっている。そのプレイでは、シカゴ・ハウスやディープ・ハウス、ディスコのダーティなグルーヴの上に、ジャズ、ファンク、ソウル、R&B、ヒップホップなど、数多のブラック・ミュージックが渾然一体となった小宇宙が展開していく。そのプレイはまさにブラック・ミュージックの歴史の集大成であるとも言えるだろう。さらに共演は、異形のファンクネスをまとったモーリス・フルトンである。ハウス、テクノ・ファンなどクラブ・ミュージックもちろん、ファンクやソウル、ジャズなど様々なブラック・ミュージック好きにもぜひ体験して欲しい一夜だ。
 さて、この来日を記念して、セオ・パリッシュのメール・インタヴューを試みた。短いながら彼のヴァイナルへの愛情、そしてDJとしての姿勢が言葉に示されている。







── あなたはDJという表現手段に対してものすごく強い思い入れがあるのではないかと思うのですが、これまであなたがDJを志すのに、最も影響があった出来事とはなんでしょうか?

セオこれまでに多くのことに影響を受けてきたし、これからもそうだ。特別に大きな出来事、巨大なイヴェントに影響を受けたわけではなくて、むしろひとつひとつのこと、密度の濃い小さなパーティにより強く影響を受けていると言えるかな。





── DJに最も必要な資質とはなんだと思いますか?

セオ音楽への愛と、あとは身体と音楽の密接なつながりを認識することだね。





── あなたはいままで、そのDJプレイなどを通じて、メジャー、マイナー含めて、さまざまなディスコ・クラシックスを紹介し、若い世代にもその魅力を伝えてきました。さて、あなたにとってベストと言えるようなディスコ・クラシックとはなんでしょうか?

セオ俺の意見はつねに変わるものだ、“ベスト”と言い切れる曲は無いな……。おそらく、このインタヴューが文字になってアップされる頃には、俺の意見はまた変わってるだろうからね。(DJプレイのなかで)良いタイミングで良い曲をかけること。俺にとっては、それができるのならば、それこそがベストということなんだよ。





── ここ最近でプレイしておもしろかった場所はどこでしょうか? 理由も含めてお知らせください。

セオどの場所も毎回新鮮だよ。お客さんの反応も毎回違うし、いろいろな要因も関係してくるしね。





── デトロイトの音楽シーンはいまどんな状態でしょうか? 率直に言って良い状況でしょうか? 悪い状況でしょうか? 理由も含めてお聞かせください。

セオちょっとこの質問に答えるのは難しいかな……。やっぱりデトロイトには自分の身近なシーン以外にもたくさんの“シーン”がある。だから同時にすべてのシーンに根ざしていないと答えられない質問だね。本に主題があるように、なにかの特定のシーンに対するもので、同時にそれに対して客観性を備えていないと的確には答えられないな。





── 最近のリリースについて、〈サウンド・シグネイチャー〉のリリースで、気になったリリースがあったのですが、あなたの作品やオマーSといった現在のアーティストに混ざって、少し前に突然、80年代のアシッド・ハウス・アーティスト、レロン・カールソンの楽曲(1987-88年に録音されたもの)を突然リリースされましたよね? あの音源はどのようにして発掘されたものなのでしょうか?

セオ別に俺が音源を“見つけた”ってわけじゃないんだ。カールソンはシカゴ時代の旧友で、彼にお願いしていたんだけど、数年経ったある日、あの音源の入ったテープを直接渡してくれたんだ。
*編集注:セオはCDJがいまほど普及する以前はテープ・プレイヤー(ピッチ・コントローラー付き)も使ってDJしていたようで、上記のレロンのような友人の楽曲や自分の曲もテープ音源でかけていたそうだ。初来日の機材リストにもピッチ・コントローラー付きのカセットテープ・プレイヤーのリクエストがあったそうです。





── あなたやムーディーマンはヴァイナルでリリースすることに対して強い意志を感じます。が、しかしテクノやハウス、クラブ・ミュージックのシーンにおいて、すべての人がそのような強い意志を持っているような状況でもなさそうです。ヴァイナル・カルチャーの衰退についてご意見をお聞かせください。

セオただ言えるのは、セレクターとして、芸術と向き合うことに対して、献身的では無くなっているということだ。ヴァイナルなどフィジカルな音源でプレイするには限られた曲しか現場でプレイできないというリスクもあるが、そうした状況下だからこそ生まれるチャンスや突如のひらめきによる即興性を与えてくれる。どんな愚かものでもコンピューターを使えば、パーティを盛り上げるためのプレイリストを作ることはできる。そう、レコードを扱えるというのはスペシャリストとしての証(あかし)なのだ。特別なマテリアルを駆使し、それにともなうトラブルも厭わないようなスペシャリストの為の道具なのさ。時代はじょじょに安価なデジタル音源へとシフトするのが主流になっていっているけど、これは温め直すだけのお手軽なマクドナルドを選ぶか、新鮮な素材で作られた栄養満点のシェフの手間ひまかけた料理を選ぶのか、にも似ていることだ。





── 今回LIQUIDROOMでの公演はモーリス・フルトンとの共演になります。彼についてはどう思いますか?

セオモーリスとは数年前に知り合った。それからはずっといい友人、同志だと思っているよ。





── 近く、あなたの作品のリリースなどはありますか?

セオ“Sketches. limited 4×12”
*編集注:地元デトロイトとドイツはベルリンのレコード店〈HARDWAX〉)(http://hardwax.com/)だけで販売されている模様。





── 最後に、あなたが音楽以外で注目している趣味などはありますか?

セオ澄んだ夜に俺の宇宙船、テルマ(ムスタング)を操縦することさ。
*編集注:彼は車、カー・レースが好き。来日時でもよく車の写真撮っているらしい。

■Theo Parrish (Sound Signature)
デトロイトに拠点をおくプロデューサー、DJ。ワシントンDCに生まれ、年少期をシカゴで育つ。またその後カンザスシティー、Kansas City Art InstituteではSound Sculpture(音の彫刻)を専攻。1994年、音楽の都デトロイトに移住する。1997年、レーベル〈Sound Signature〉を立ち上げ、常に新しい発想と自由な表現で次々に作品を世に送り出す。また3Chairs、The Rotating Assembly、TOM Projectとしても活動する。現在Plastic People(London)にて毎月第一土曜日のレギュラーパーティーをもつ。

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