FEATURE-REVIEW

GOTTA-NI

二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band

GOTTA-NI


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text by VIDEOTAPEMUSIC

「ビッグバンドと回路」

今年の8月に受けたとあるインタビューの中で“回路”という言葉がでた。
あちらとこちら、分断されていると思っていた物、時代や空間、人種、趣味嗜好などを交通させるきっかけとなる何か。強いて言えばそんなニュアンス。
何気ない街の風景の中にも沢山の回路はある。路地裏の古びたスナックの看板のフォント、いつからあるかわからない錆びた不法投棄のゴミ、昭和の香りをわずかに残すモダンなマンションの窓枠の曲線、伸びすぎた棕櫚の木、そういった物の中に過去と現在を繋ぐ回路があったりする。
こちらから向こうを見るための窓みたいなものだ。
逆に向こうからこちらは見えているのだろうか、見えていたとしてどの様に見えているのだろうかと考えたりもする。

同じく今年の8月の事、恵比寿リキッドルームで二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Bandのライブを観た。
21名のビッグバンドの物理的にも迫力ある音圧と、その上で様々な声色を操り自由に歌うニカさんのパフォーマンスは圧巻だった。
ビッグバンドが奏でるジャズは30年代~40年代にかけて生まれた物だが、それは過去の物というよりも、もはや老若男女にとってもスタンダードな音楽のスタイルであるはず。
現代のライブハウスの中も、居間のテレビの中で観た歌謡ショーも、古いミュージカル映画の中のダンスパーティーも、老人も大人も子供も、そして過去も現在も未来もすべてに開かれた、まさに回路の様な音楽。
様々な声を憑依させるかの様に変幻自在なニカさんのボーカルもさらにそれを後押しする。
何者にもなれると同時に、まぎれもなく唯一無二な存在だと改めて感じた。
めくるめくビッグバンドのサウンドにのせ様々なシーンが頭の中に思い浮かぶ。自分が今どこにいて何を観ているのか分からなくなって目眩がしそうだったが、体は自然と踊っていた。
2016年の夏の恵比寿の記憶。

そしてアルバム「GOTTA-NI」がリリースされた。ビッグバンドでアレンジされたニカさんの既存の曲は新たな魅力に溢れ、ライブの感動と同じく心を躍らせてくれる。
さらに2曲の書き下ろしの新曲が収められている。ひとつはライブでも特に衝撃の大きかった「Nica’s Band」。この編成での真骨頂。自然と体がスイングするダンスミュージックとしての側面も強く感じる。
もう1曲は最後に収められた「いとしい気持ち」。その中で“そっと誰かを思う”と歌われる“誰か”の指す範囲はとてつもなく広く感じた。その広さはそのまま二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Bandの懐の深さ。何処にでも誰にでも届く回路。多くの人に聴いてもらいたいアルバムです。