FEATURE-REVIEW

ABS+STUTS

Alfred Beach Sandal + STUTS

ABS+STUTS


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text by BOY 奥冨直人

盟友タッグによる、日常に寄り添うサマーアンセム

御互いの作品でコラボレーションを続けていたAlfred Beach SandalとSTUTSのグルーヴィーなタッグによる、 サマーアンセムがたっぷり詰まったEP”ABS+STUTS”が発表された。
振れ幅のある音楽性で独自の地位を築いている両者のコラボとなれば、それだけで聴く前から”間違いない”1枚という確信さえ持てる。その位、現在の両者への創作期待値が高いのも事実だ。
そんな期待に応えるリード曲”Horizon”は、アナログ感のあるトロピカルなSTUTSのトラックに、Alfred Beach Sandalの甘い歌声とメロディーが絡み合い、セクシーかつキュートな2017年を代表するであろうサマーアンセムに仕上がっている。同楽曲には、cero荒川佑がローズピアノ、ミツメnakayaanがベースを担当しており、彼らの参加がこの楽曲をより彩り鮮やかなものにした。
”The Chase”や”Daylight Avenue”では、スモーキーなソウルミュージックを見事ポップスに消化し、嫌みの無いクールなサマーチューンを生み出している。何処かドリーミーなサウンドが悪戯の様に突如跳び出てきたりと、遊び心も満載。全6曲というコンパクトな内容の中で、存分に互いの感性をごちゃ混ぜにしながら、各々の持ち味を相乗的に引き出し合った作品だ。
往年のサマーチューンと言えば、波打ち際の海岸を若者が全力で駆け巡りはしゃぐ様なハイライト的楽曲やアッパーでハイテンションな楽曲が多い印象だが、この近年に関しては、暑さでとろけてしまいそうなシチュエーションにメロウで優しいトラックが弾きあう、リラックスした音景の楽曲が多い様に感じている。所謂”無理していない”空気感を支持するリスナーも増えてきている。肩の力が抜けていて、何処か日常的で、けれど圧倒的に音のキャンバスを独自のスタイルとスタンスで彩るアーティストに引き付けられていく。
特に印象的だったのは、ceroが2015年に発表したアルバム”Obscure Ride”で、テクニカルなポップミュージックかつ、和的にブラックミュージックを取り込んだこの作品のヒットの影響は、日本の音楽シーン全体に拡がっていく事になった。
お茶の間まで浸透し、今後のポップミュージックの可能性さえ大きく変えていく様子が見えた。
キャンプフェスやビーチフェス等の賑わいも、こうしたバンドが拡げた音楽や環境の存在が大きく影響している。この音楽をこのロケーションで聴きたいと思い、ぴったりな会場に足を運ぶ事は、至って自然の流れだ。
”ABS+STUTS”に関しても、様々なロケーションで聴きたいと思うのは勿論、聴いているだけでどんな喧騒の中でもオアシスに変えてしまう、音楽の魔法がかかっている。
”Daylight Avenue”の中で歌われる[こんなに脆くて 淡い寂しさは 行き交う人の中で紛らわそう]というフレーズが、まさにそんな魔法を言葉で表しているんではないだろうか。
日常からほんの少しでも非日常に連れ出してくれる、ソッと寄り添う様に優しい音楽。
今回のリリースにあたり、台湾と東京でのライヴ公演が決定し、のちに全国ツアーも予定しているとの事。
それぞれの旅先が彼らの音楽に染まる景色を、是非目の当たりにしたい。