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AIR/LOST IN TIME

AIR/LOST IN TIME

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リキッドルームが満を持して送るイベント、題して“INTERSECT”。直訳すると“交差する”と名付けられた夜に、今回出演となったのはLOST IN TIMEとAIR。両者アコースティックセットでのライブとなったこの日、普段は違うベクトルを歩む2組が交差した瞬間に、音楽による最高に至福な空間が生み出されることとなった。

「こんばんは、LOST IN TIMEです」というささやかな自己紹介で始まったステージ、ギターをサポートに迎え入れた3人編成で行われたこの日のLOST IN TIMEのライブの一曲目は『さあ旅を始めよう』。唄とアコースティックギターが優しく混ざり合い、それは確かな熱と少しの痛みを伴って聴き手の内側まで染み込んで来る。続けて演奏された『翼』も本来は疾走感に溢れたダイナミックな曲であるのだが、この日は若干のスローテンポでしっとりと唄い上げられた。「6月の曲を作ってきました」と披露された新曲『あじさい』は艶っぽく、メロディアスなベースラインが印象的だ。
Vo.海北の声には“伝えたい”という確固たる意思と決意が宿っている。そしてなんとも表現し難いのだが、全てを許すような、或いは全てに許しを求めるような、そんな唄声。繰り返される“君”と“僕”の物語にはきっと終わりなんて無くて、淋しい夜の綱渡りを一生続けなきゃいけない私たちは、きっと彼等の紡ぐ音楽に救われ続けるのだろう。暗い部屋で膝を抱え一人ぼっちで聴くように、微動だにせず一音一音を掬い上げるように聴き入っているオーディエンスの姿が多かった。
ライブのハイライトは後半、名曲『4:53am』からの流れ。続けて演奏された『柊』では軽快なリズムで逸る心をそのままに駆け抜け、ラストは友達の結婚の為に書いた曲だという『羽化』。曲中には海北から敬意のこもったメンバー紹介があったのだが、それは笑顔に溢れたとっても素敵な光景だった。

続いて暖かな拍手に迎えられてステージにひょっこりと登場したAIR。“The Bread Of Life”と名付けられた完全に一人の弾き語りスタイルでのライブとなった。
突然に早いアルペジオが鳴り響き、それに感応して会場の空気がふっと変わったのが分かる。聴き手の集中力が高まってきた所で、左足でリズムを取りながら『海へ行く』で軽やかなスタート。水色の照明が青空のように錯覚させられてしまうくらい、シンプルな音像がどんどん広がりを持って空間を染め上げていく。『Janaica』、『Surfriders』と立て続けに演奏、AIR得意の歪みとクリーンが同時に鳴らせる特注のアコースティックギターを使った、静と動が共存したかのような演奏にただただ息を呑む。ギターをワイゼンボーン(膝の上に乗せて弾くラップスティールギターのようなもの)に持ち替えての『The New Day Rising』と『Walk This Way』。伸びやかにスライドするワイゼンボーンの音色に優しくピュアな唄声が乗り、“流した涙に何ひとつむだはない”と高らかに唄う彼の姿は、些細な喜びも哀しみも柵も全部をひっくるめて自分なんだよ、と語りかけてくれる。
今のこの世界、物事はどんどん細分化されて、生きる手段もどんどん回りくどくなってきていて、様々な種類の真実で溢れている。なんだか息苦しい。だけどAIRの音楽は、とても自然で真っ直ぐな正しさに溢れている、故に心強く響き、そしてどこか安心するのだ。
「久しぶりのリキッドルーム、とても楽しみにしていました。」と短いMCの後に『Our Song』。そして打ち込みの音をループさせて、『Our Song』の終わりからそのまま『Starlet』のサビへと、まるで1曲のようにアレンジしての演奏。続けて『daybreak』、『Nayuta』。そしてラストとなった『Microcosm』では、バックトラックをループさせたところにアコースティックギターが重なり、芯の強いメロディーと唄声が壮大なスケールでもって会場を呑み込んだ。ループ音が残る中AIRはステージを去り、この日のライブは終了となった。
 
なんだか泣きそうになるような、とてもいい夜だった。

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