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ZAZEN BOYS/凛として時雨

ZAZEN BOYS/凛として時雨

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ZAZEN BOYSと凛として時雨という2組による待望の競演。じりじりと焦げ付くようなオーディエンスの熱気に包まれ、夏の終わりの一発に相応しい夜となった。

「マツリスタジオからMATSURI SESSIONをウナりあげてやって来ました、ザゼンボーイズ!」という向井のMCで始まった先攻、ZAZEN BOYS。一発目は『MATSURI SESSION』、そう、この日のライブはフリーセッションからのスタートとなった。向井が右手で感覚的なキーボードを奏でつつ指揮者のように左手を振り下ろすと、その合図に合わせてか操られてか、他のメンバーも見事に呼吸を合わせ鬩ぎ合う。ステージ上で睨み合うメンバー達から滲む集中力に感化されて会場の空気もがらりと変わり、そこは張り詰めた、静かな興奮で満ちていった。セッションから間髪入れずに『COLD BEAT』へと雪崩れ込み、曲の後半はセッションの空気を引き継いで、何度もブレイクを挟んでの即興度の高い演奏を披露。更に畳み掛けるテンションで『RIFF MAN』へ。続いての『I Don’t Wanna Be With You』では、それまでとはうって変わってエレクトロの要素を取り込んだ世界観を見事に構築していた。しかし何処をどう切り取ってもZAZEN的、というのがこのバンドの凄みであり強みである。その後も強固なグルーブ、凄まじい演奏力でオーディエンスを踊らせ、圧倒し、ライブ後半に披露された『DARUMA』でテンションは最高潮に。ラストはスローダウン、そしてリラックスといった具合に『The City Dreaming』、そして『Asobi』。リズムに乗って手拍子やコール&レスポンスも起こり、ステージの4 人からは笑顔さえ零れていた。熱気と狂気、歓喜が一体になったビートが一音一音気持ち良くもずっしりと響く。この、重みを持った心地良さこそが、彼等の音が私達にリアルに届く所以なのだろう。「カンパイ!」と向井が缶ビールを高らかに掲げ、4人はステージを去っていった。

後攻となった凛として時雨の一曲目は『想像のSecurity』。相変わらず切れの良い鉄壁のアンサンブル、そしてスリーピースであるにも関わらずの物凄い音圧。熱を帯びた演奏に応えるようにオーディエンスも思い思いに揺れ、拳が上がる。畳み掛けるかのように『テレキャスターの真実』、『CRAZY 感情STYLE』とキラーチューンが続く。勢いそのままに『DISCO FLIGHT』が披露されると、Gt.&Vo.TKの「凛として時雨です」という短いMCが入り、ここでやっと一息。トレモロの効いたギターのアルペジオが切なく美しく響き、『ターボチャージャーON』が始まる。この曲では会場の集中力も高まり、じっくりと聴き入るオーディエンスが多かったように思う。更に深まる夜に誘う様なミドルテンポなナンバー『moment A rhythm』では何度も時が止まるような錯覚に陥り、息が詰まりそうになる。三人によって創り出される音像は確実に、実際的に、心の奥底にぐっと揺さぶりをかけてくるのだ。TKとBa.&Vo.345の声の切迫感、そして揺らぎはそのまま私達の芯のところまで伝染するのである。
後半、最も印象的だったのは『Telecastic fake show』から『nakano kill you』へと続く怒涛の流れであろう。ステージとフロアの距離を縮めつつも、より攻撃的に疾走し続ける三人の奏でる音像は、ハードでありつつも繊細で、どこか危ういのに確固としていた。まるで彼等の楽曲の中で生きる光と影のように。ラストは『傍観』。丁寧に、囁くように紡がれるメロディーは美しくも切なく、憂いをもって壮大に響き渡る。“ボクは知らない。ボクは見えない。ボクは汚い。ボクは消えたい”という歌詞を繰り返すTKの唄。普段はあまり顔色を変えずに、どちらかといえば淡々と演奏するTKが最後のフレーズで絶叫し、その後、震えながら悲鳴のようなギターを掻き鳴らしていた。言葉にならない言葉を、声にならない声を。きっとそんな、手で触れられない全てのことを。正に圧巻のステージであった。

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