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JAMES CHANCE

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ジェームス・チャンス来日。聞くだに期待の高まる一夜が幕を開けた。

 オープニングアクトのSADY&MADYはaota、VICTIM 2(MUROCHIN X MASATO)DRUM BATTLE、柳澤正典(SANDADA)を迎え、「Guitar×+Drum×+Sax+Sampler+Scream」という構成での演奏となった。植田のギターとボーカルに沿うようなサンプラーの音が静かに響く。二台のドラムは力強く絡み合い、ギターの歪みと神経質なサックスが合流すれば音もフロアも一気に熱を帯びていく。濃密にフロアを惹き込んではオープニングアクトとは思えない存在感を残してステージを去っていった。

 閉じた幕の向こうから漏れるサウンドチェックの音にすら歓声の上がフリクションは、第一音がまぎれてしまいそうなぐらいの声援に迎えられてのスタート。凶暴に歪んだ重低音が繰り出すリフが、荒々しいドラミングと渾然一体となる様は圧巻。ギターレス、そしてふたりで演奏しているとは思えないほどの音圧で見るものを圧倒しつつ次々に曲を繰り出していく。掛け合うようにレックがドラムへと近寄っていっては、中村達也と即興のような応酬を繰り広げる。生々しい音のやり取りに大きな、惜しみない拍手が送られた。

 そして今宵、会場中の期待を受けて登場したジェームス・チャンス。幕が開けると落とされた照明の中、怪しい紫やオレンジの光で控えめに照らされたステージの中央に君臨しているかと思いきや、センター脇に配されたキーボードに白いジャケット姿が向かっているのにすぐに目を奪われる。そしてすぐに立ち上がってバンドの演奏の真っ只中で音楽を全身で表現している。ロボットダンスのようなぎこちなさを感じる動き、耳を覆うような右手と音に向けて伸ばされたかのような左手、首や肩でリズムを取るような不自然にも見える動き、足元で刻まれるステップ。音にあわせて動かされた全身の隅から隅までがあまりにも存分にジェームス・チャンスだった。ひとしきり乗った後でサックスに持ち替えると中央のマイクに向かう。ルックスは多少変わっていたものの、当時と変わらぬ不機嫌な攻撃性を湛えたボーカルは今なお現役以上の迫力と切れ味。サックスの音色も甲高く、空間を裂くように響き渡り、その精力的な姿に大きな歓声が沸き起こった。登場してものの数分、既に会場が東京の恵比寿とは思わせないほど、濃密な空気にすっかり変わってしまった。サックス片手に空いた手でバンドに合図をする姿はマエストロのようなでもあった。その手から合図を受けたバンドはタイトなドラムとファンキーさを感じるベースがしっかりと絡み合い、その上で無秩序なギターとキーボードが雑然と動きまわってはグルーヴを生んでいく。ジェームス・チャンスはキーボードに細かい指示を出しながら、サックスを置いてはキーボードの前に座るなど自らも楽器を持ち替え色々な音を奏でていた。

 1980年代にニューヨークで活動していたジェームス・チャンスが当時同じバンドのメンバーであったレックをゲストに迎え、当時と遜色ない、それ以上に魅力的な演奏を30年後の今見られたということ。そしてどちらも現役で活躍しているというのは素晴しいことだと感じた。ジェームス・チャンスには今後も、ただひたすらにパンクでアヴァンギャルドな格好よさに溢れた存在でい続けて欲しい。そう思いながら次の来日へと思いを馳せずにはいられない、終わってしまうのが惜しくてならないほどに魅力的な一夜だった。(渡邉祐子)

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