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前を向いて駆け出した、ランクヘッドの新たなスタート

 承転結起。終わりと、はじまり。

 今年4月、10年以上ともに歩んできたドラムスの石川が脱退し、3人で動きはじめたランクヘッド。「俺たちはまだ終わらない、前を向いて、またここからはじまってゆくんだ」という彼らの決意が込められた、3人になってはじめてのワンマン・ライヴ。彼らの新たなスタートを応援するかのように、この日は長かった梅雨も丁度終わりを告げて、元気な太陽が迎えてくれた。
 緊張感の張り巡らされた空気のまま、前作『V0X』の代表曲“WORLD IS MINE”で勢い良く幕を開け、“プリズム”“トライデント”で「それでも明日を信じていたい」「信じるまま進めばいい」と、これからの自分たちに自信を持って突き進もうという気合いとも見える曲を連発。
 MCもないまま、懐かしい、青くもどかしいイメージの曲が次々と奏でられる。しかし、彼らの眼にはもう、当時の儚さはない。必死でぎらぎらと燃えたぎっているようで、彼らのこれまでで積み重なってきた強さがじわじわと感じ取れた。“夏の匂い”では、これまでの緊張感がゆるくほぐれ、会場はのどかで爽やかな夏の香りに包まれる。マイクをオフにして生声で歌う小高の声が、心に響く。

 「まだまだやれんだろー!」と全体を煽ったあと、開放感を求めてもがくようにかき鳴らされされた“シューゲイザー”。「すごく緊張してるみたいだ……」と言っていた小高も、緊張の糸がブチ切れたように爆発。「大丈夫、まだ僕は走っていける」と歌う彼らに、こちらまで背中を押される。そして、“インディゴ”“HEART BEATER”で会場は一気にきらきらと明るい雰囲気に。

 かと思えば、山下以外の3人が捌け、ステージには彼ひとり。スタンドからマイクを外し、「俺はギターが好きだけど、ひとりで弾いてちゃ意味がない。聴いてくれるみんながいなければ俺はギターを弾く意味がないって気づいたんだ。だから、俺にギターを弾かせてくれ!!」と、普段ステージであまり言葉を発しない山下が、声を大にして叫んでいた。みんなとひとつになりたい、と言って観客にリズムを求め、そのリズムに合わせて、ギター・セッション。とても気持ち良さそうに幸せそうにギターをかき鳴らす姿に、会場中から笑顔が溢れた。
 山下が捌けると、合田・櫻井のリズム隊が出てきてふたりでセッション。言葉はなかったが、今日この場に対する熱意が熱いグルーヴに込められてい
 4人に戻り、新曲“何も怖くなどなかった”を披露。「恐怖や悲しみはなくならない。でも、何度だって明日は来る。だから、何度だって僕は行くんだ」、そんな前向きで、痺れるほどのパワーの宿った曲。吠えるような、叫びにも似た歌に、貫禄さえ見えた。
 本編の締めくくりに「これは僕らのとても大事な曲で、はじまりの曲」と、“僕と樹”。パワフルな空気から一変、切ないムードが会場を満たす。そこには、これからに対しての希望と決意が、確かに込められていた。

 フロアからの溢れる期待に応えて出てきたアンコールでは、これまた新曲の“泥日(ないわつ)”を披露。“泥日”とは、仏教用語で涅槃(ねはん)、ニルヴァーナのこと。「昔は汚れてしまうことが怖かった。けれど、それを知ったからこそ強くなれた」という叫びに、一皮も二皮も剥けた姿が眩しい。全身全霊を込めてしぼり尽くすように声を張り上げメロディーを鳴らす姿に、いまのランクヘッドの強さをドカンとぶつけられ、鳥肌が立った。
 会場からの拍手は鳴り止まず、ダブル・アンコールで再々登場。「これで本当に最後です! 家に帰るまでが承転結起だ!」と奏でられた“月光少年”。きらきらと溢れた希望を掴もうと、全員が必死にてのひらをかざしていた。
(知念正枝)

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