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world’s end girlfriend

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深淵な世界の構築——world’s end girlfriendという体験

 “ライヴ”というよりも、“ライヴという体験”、などと言ったほうが適切なステージだった。音色や旋律、というよりステージ上で一体となった音、映像が感覚にダイレクトに訴えかけては、世界や物語を想起させまくる。元よりアルバム・タイトルや、本人の名前からも伺いしれるように、世界や物語を感じさせる“感覚”をつねに示唆している。緻密に織りなされるステージに見る者の入り込む余地はなく、しかし音の世界が会場全てを侵すように広がっては聴く者を捕らえる。彼の音楽を既に聴いたことがあったとしても、ライヴハウスという環境のなかでこそ生まれる、映像と結びついた一瞬一瞬の新鮮さが感覚を捕らえ続けていく。world’s end girlfriendのキャリア初のワンマン・ライヴは瞬くような刺激に満ちていた。



 BLACK HOLE CARNIVALは物語不在の叙景的なサウンドに感情を掻き立てられるようだった。変拍子で刻まれるリズム、どのような意図で出されているのかが瞬間瞬間では解らない音の要素たちがそれぞれに気を惹く。旋律として奏でられる音はそう多くなく、想像の余地があまりに多いサウンド。それでも明確に景色が移り変わっていく。打ち込みという素材が生音で立体的に、より強靭に仕立てられていくのがまた印象的だった。五人だからこそのシンプルな強みを湛えた演奏だった。


 対して言うならばPOLTERGEIST ensembleは叙情的。何よりも弦楽器が演奏に深みを与え、それ自体がまさに琴線であるかのように感情に触れる。静けさをも奏でる音色に感覚が満たされるような、濃密な音色。冒頭から言葉、肉声不在のままに進んでいくステージ。楽器の入れ替わりもごく静かに行われる中、舞台右手にひとりの女性の影が現れた。聴き覚えのあるフレーズが女性で美しく奏でられ、ファンから事前に「あの曲」と予想されていた曲が歌われた。 湯川潮音が静かに登場し、『ナウシカ・レクイエム』の冒頭のあのフレーズを、そして『君をのせて』を歌いあげる。映画「天空の城ラピュタ」を飾るこの名曲は『キラキラジブリ』というコンピレーションにも収められているが、生演奏での『君をのせて』の旋律にレクイエムのあのフレーズが絡む様は圧巻。映画の情景を思わせつつ、wegのオリジナリティがぐんぐんと曲の世界を広げていく。深遠な世界を描いた終盤であったが、演奏は加速しギターのノイズ、リズムの激しさが増し、再度荒々しさを見せての終幕となった。扇情的なギターリフを奏でるwegには喝采が送られ「THE END」と背景に映し出された文字を背負い、メンバーは舞台を降りた。

当日の会場は、ロビーもフロアも照明演出が施され、開演前・転換中・終演後の会場BGMも全てwegによってセレクトされた音楽。音楽を耳で聴くだけでなく、ライヴハウスという会場で彼の世界観を堪能するという実に贅沢な一夜だった。(渡邉祐子)



<セットリスト>
「第一部,world’s end girlfriend & BLACK HOLE CARNIVAL」
1:Singing Under the Rainbow
2:Teen Age Ziggy
3:Galaxy Kid 666
4:Bohemian Purgatory Part.2
5:Decalogue Minus 8
6:Birthday Resistance

「幕間」
7:Nobody Comes Ghost Goes
「第二部,world’s end girlfriend & POLTERGEIST ensemble」
8:100 years of choke
9:Ulysses Gazer
10:YOU
11:YOU 2nd
12:Scorpius Circus
13:君をのせて ~ナウシカ・レクイエム(Feat. 湯川潮音)

14:光を映す影
15:Les Enfants Du Paradis
16:We are the Massacre
17:The END
「終演」
18:水の線路 / 生命は
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