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音盤時代の音楽の本の本——グレート・ハンティング・オブ・ミュージックブック

『音盤時代の音楽の本の本——グレート・ハンティング・オブ・ミュージックブック』

音盤時代:編

[label: カンゼン/2012]

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アレも聴きたい、コレも読みたい

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文:河村祐介

 本著はその名前の通り“音楽の本”のガイドブック。内容は大きく分けて次なる3部構成。音楽本に関するベテラン音楽ライターたちへのインタヴュー、アーティストや大学教授らによる「音の聞き方が変わった本」というテーマのエッセイ、そして本著の中心とも言える100冊のレヴュー。この3本柱で延べ200冊ほどの書籍を紹介している。その内容は、大型書店の音楽本の棚同様、分厚い評論集や評伝、アーティストによるエッセイ、ときには人文科学系の棚ににある学術書や理論書、哲学書まで多岐にわたる。
 編著は00年代のある種の現象ともなった〈RAW LIFE〉を主宰した浜田淳率いる、音楽雑誌『音盤時代』編集部。この本は『音盤時代』の別ラインとして生まれたもの。この本でも、プロモーションではなく、音楽と結びついた文章を“読む”ことを主眼とした『音盤時代』らしいセレクトが並ぶ。
 登場する本は、いわゆる「このジャンルを勉強するには、この本を」といったカタログのようなものはあまりなく、音楽を媒介に、その後ろに広がる社会や文化、そこにいる人々へ、その思考へと広がっていくようなものばかりだ。もちろん「無粋な理論はイイから考えるな感じろ」というのも音楽だが、同時にある種の理解から楽しめる出会いや興味が生まれるのもまた音楽のひとつの姿だ。そういった理解を助ける本たちが紹介されている……いや極論を言えば、いくつかの本に関しては、その音楽に実際に触れずとも(現存せず、触れることすらできない音を紹介した書籍すらある)、その音に思いを馳せる、いや、単にその音楽と文字との戯れをひそやかに楽しむのも良いだろう。それも素敵な音楽との接し方のひとつではないだろうか。

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