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曽我部恵一BAND

『曽我部恵一BAND』

曽我部恵一BAND

[label: ROSE/2012]

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目には厳しき現実を、唇には美しき歌を

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文:河村祐介

遅ればせながら紹介。曽我部恵一バンドの3年ぶりのサード・アルバム。ここ数年、サニーデイも復活し、実に多様な名義で活躍しているがこの名義での活動は、実に明快。ロックンロールの爆発力や初期衝動を詰め込んだキラキラとした作品だ。だが、少々のレコーディングの難航を得て完成されたというこの作品は少々趣が違う。もちろん、15曲69分というヴォリュームには前述のようなこの名義らしい楽曲もあるが、ある意味でそんな現実を彩るまぶしい情景を際立たせるような、現実への憂いというのか、まぁ、ともかく目の前の状況をまっすぐとした捉える眼差しがそこかしこに溢れいてる。そして、その眼差しは聴き手の想像力を喚起させるタイプのものだ。それは例えば“街の冬”。この楽曲は札幌でおきた老姉妹の餓死について歌われている。その表現は暗いレクエイムの面持ちではなく、むしろソカバンらしい勢いのあるロックンロール、そしておとぎ話のような語り口調だ。おそらくそれ故に、その中で歌われる“生活保護のお願い”といった言葉は強烈なインパクトを持って聴き手にさまざまなイメージを喚起する。この曲の終わり方も含めてストレートなロックだからこそできる表現というのを感じることのできる楽曲だ。もちろん、彼らしい生活の美しい側面に満ちた楽曲も同等のエネルギーを持って描かれている。現実にはロマンスも憂いもある、それ故に感じることのできる生きるよろこびを体現しているかのようなアルバム。傑作ですね。

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