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ナマで踊ろう

『ナマで踊ろう』

坂本慎太郎

[label: zelone records/2014]

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text by 古田泰子(TOGA)

寓話に潜む教訓のように道しるべを残す

現実では見る事のない特撮は映画で充分、毎日を過ごすノルマが先。
衝動に掻き立てられる感情を、我がテリトリーで探し、妄想し、現実になる事を願うまでもなく朝がきて忘れる。

言葉で表している感情は、自分のほんの一部分。みんな!私って言葉にしてる以上にもっと複雑なのよ。
って言葉にしてみたとたん全てが現実、台無しだ。
私の感情はそんな単純なもんじゃない。そして説き伏せる勇気はない。
そんな部分を言葉にしようと試みる文章はやたら難解になる有様。

歌詞は日常会話を安易に想像させる範囲にとどめ、その代わり言葉で説明できない感情を
豊かなメロディにする。
そしてそのメロディとリズムはそんな現実と対比させるかのような現実離れした浮遊感が全篇に奏でられ、
まるで浦島太郎は海の中の竜宮上、お路姫と酒と素敵な音楽、こんな浮遊感に包まれていたなら、
得てしてかわらないであろう現実を過ごしても、幸福感に溺れたのでないのかしら?と想像させられた。

おらは死んじまっただ。おらは死んじまっただ。

人というより、人が社会と関わらざる得なくなった時、見知らぬうちに加わる残虐性、やるせない不条理を感じながら
現実の受け入れをどう行っていくのか。坂本さんが寓話に潜む教訓のように道しるべを残す。

近代国家から取り残された日本は、融通のきかない真面目さだけがとりえとなったような気がします。
そんなの嫌だ。ぶちこわせ。
外から強い刺激をうけて心動かすこと、それが衝動。それを行動におこすには
そうさ、生が必要!生がたりないよ!
ナマナマって聞きなれたこの言葉。 耳にはよくするけれど、生って最近経験してる?
食べ物だけじゃあないのよ。
生意気、生ぬるい、生あくび、生つば、生乾き、生傷、生演奏、生放送、生中継、生ギター・・・
生ってつく言葉は艶かしさがとなり合わせ。
坂本さんにぴったりだ。
そんな中2009年12月30日最後となったゆらゆら帝国最後のライブ後、2014年5月11日YO LA TENGOのライブ
アンコールでの一曲、スペシャルゲストでステージにあがりギターを弾く坂本さんを生で見て聴いた。
久しぶりに経験したナマ坂本。
胸がときめいた。

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