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In Colour

『In Colour』

Jamie xx

[label: ホステス/2015]

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UKインディーロックとクラブミュージックシーンのいま

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TEXT BY KiKi

 音楽大国を代表する“イギリスとアメリカ”の両国。音楽にしてもカルチャーにしても、イギリス人はなにかとアメリカを意識することが多い。それはミュージックインディーシーンにおいても、近年しばらくチャートのトップテンを盛り上げ話題になっていたのはアメリカだった。ロンドン出身・メンバー当時20歳だったThe xxの名前がそのチャートに出てくるまでは、そんな事を思いながら誰もがその存在を待ち望んでいた。
 PitchforkやNMEなどの英系音楽誌でも、セカンド以降も音楽的評価の高い彼らの音楽的センスは、いまやロンドンのみならずイギリスのミュージック・クラブカルチャーを象徴する存在感を放っている。果たして彼らの音楽の一体なにがこれほどに絶大な人気を引き寄せるのだろうか?
 その核となる人物、The xxのブレーンがJamie SmithもといJamie xxである。ソロ名義では初めてのフルアルバム『In Colour』がYoung Turksよりこのほどリリースされた。ソロ活動としてはこれまでにAlicia KeysやDrakeなどの楽曲プロデュース、RihannaやRadioheadのリミックスも手がけるなど、多方面から実力を信頼されその活動は多岐に渡る。
 『In Colour』を一通り聴いてまず感じたのは、Smithは記憶のデザイナーだということ。どの音楽も共通して何かしらの体験や記憶から生まれ、それを音楽というツールを通して記録している。彼は自らのインプットを“物語”とは違う、“音の流れ”に落とし込み彩っている。言い換えるならば、音楽を曲単位で聴くことがもはやデフォルトになった時代にアルバムの“ストーリー”としての一貫性よりも、“流れ=繋ぎ”を重視したように感じる。また、今作ではバンドメイトのRomyとOliverが「See Saw」・「Loud Place」、「Stranger in A Room」それぞれの楽曲で参加している。アメリカよりラッパーのYoung Thug、ジャマイカよりレゲェアーティストのPopcaanが参加し、リリース前より話題になっていた「I Know There’s Gonna Be(Good Times)」はロンドンのカフェのBGMで耳にしない日はないし、みんなが口ずさみ始める。
 近年ロンドンはPlastic Peopleをはじめとする老舗のクラブ閉店のニュースが目立つが、Smith自身「クラブではない他の場所に行けば良いし、むしろ僕はそこへ行くのが楽しみだ。ロンドンはとてもクリエイティブな街で、決して廃れはしない。」とDIYのインタビューで語っている。今夏、ヨーロッパの音楽フェスへの参加後、アメリカでの約1ヶ月間のツアーを経てホームに戻ってきたJamie xxが今後どのようなムーブメントを起こすのか、今からとても楽しみにしている。

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