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teto <br>ロマンチックでマジカル、tetoが描いたロックンロールの夢<br/>

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ロマンチックでマジカル、tetoが描いたロックンロールの夢

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interview by 小川智宏 photo by トヤマタクロウ

12月7日、初のフルアルバム『手』を引っさげてのツアー「結んで開いて」のファイナルを開催したteto。2016年に結成されてからまだ3年たらずだが、そのあいだじわじわと注目度を高め続けてきた4人組だ。ヴォーカル・ギター小池貞利の書く歌詞のリアルさ、その言葉をまっすぐに届けるメロディ、そして何より、ある種の危なっかしさとヒリヒリした焦燥感を爆発させるライブパフォーマンスが身上のロックバンドである。リキッドルームでのツアーファイナルは、もちろん彼らにとってこれまでで最大規模のワンマンライブ。ソールドアウトした場内には、ティーンからかつて「青春パンク」に心を燃やした世代まで、幅広いオーディエンスが集っていた。

 

ライブの幕を切ったのは「光るまち」。繊細なタッチのナンバーでライブハウスという空間に充満するロマンを顕在化させ、ここ恵比寿にロックンロールの灯火をともすと、2曲目「拝啓」からはいきなりフルスロットル。小池はさっそくフロアに飛び込み、一気にオーディエンスのヴォルテージを上げてみせる。そして続く「Pain Pain Pain」で早くもこのライブ最初のハイライトが訪れる。自主音源で初めてリリースされ、ここまでバンドを引っ張ってきた代表曲である。幾本もの拳が突き上げられ、ステージとフロアの一体感がいやがおうにも増していく。この一体感こそ、まさにtetoがスペシャルであることの証明だ。小池の書く歌詞はどこまでも小さな、まるで日記の断片のような物語だ。にもかかわらず、それが爆音のバンドサウンドとともに叫ばれた途端、その物語はそこにいるすべての人のものになる。それは彼らが、飾り気のない「本当」だけを歌い続けているからだろう。

 

「暖かい都会から」、「散々愛燦燦」、「マーブルケイブの中へ」……「ひとり」の感情をさらけ出すナンバーを次々と繰り出し、このライブハウスに集まった「ひとり」同士を結びつけていくteto。「9月になること」で描き出される夏の情景も、フォーキーな「忘れた」が醸し出す優しさも、まるでこの騒々しいフロアで自分だけに歌われるような錯覚をもたらす。小池は曲の合間にも言葉にならない言葉を叫び、バンドは叩きつけるような演奏を繰り出していくが、そのすべてがしっかりとメッセージとして伝わってくる。ロックンロールのマジックを目の前で見せつけられるようだ。

 

アルバムのタイトルトラック「手」のあと、小池の「本当にこの曲が歌いだけなんです」とという言葉とともに歌われた本編最後の楽曲「高層ビルと人工衛星」。tetoのディスコグラフィの中でもドラマチックなメロディをもつこの曲に込められた、世界に押しつぶされそうな切ない感情は、tetoというバンドが生み出すロマンチシズムの原点のようだ。もみくちゃになるフロアと、最後まで全速力で駆け抜けるバンド。アンコールの「36.4」、そしてダブルアンコールで披露された「新しい風」まで。あっという間に駆け抜けたライブには、ロックンロールの希望と美しさが凝縮されていた。

 

 

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