FEATURE

REVIEW

かけがえのないもの

『かけがえのないもの』

MONO NO AWARE

[label: SPACE SHOWER MUSIC/2019]

Amazon

成長と青春の中で触れる優しさと寂しさ

twitter facebook

text by 奥冨 直人(BOY)

言葉遊びの活きた歌詞や思いもよらないメロディー展開、ギミックの効いたユニークなサウンドで
ポップロックを奏でる4人組バンド・MONO NO AWAREが、
10/16(水) 3rdフルアルバムとなる【かけがえのないもの】をリリースした。
今作は、『子どもの成長と青春』がテーマとなっており、Vo&Gtでありソングライティングも
担当する玉置自身の、少年時代の実体験から制作に反映した部分も大きいと言う。
その影響は歌詞のみならず、”えんぴつ”等の楽曲タイトルや、
漫画家/イラストレーター・つのがいによるアートワークにも、エッセンスが大きく感じられる。

 

未知への冒険の行進曲”新人類”から作品の幕が開け、全編に渡りMONO NO AWAREらしい巧妙でいて
ソフトリーな世界観は、不思議とノスタルジアに溢れ心地良い耳触りを生む。
NHK『みんなのうた』への書き下ろし曲”かむかもしかもにどもかも!‟は、
早口言葉を大胆に取り入れた、玉置ならではの複雑で遊び心のある1曲。
カラオケでも断トツの難易度になるであろうこの楽曲、ライヴでどの様にユーモラスな時間を
生み出すか楽しみである。
クリーンでいてサイケデリアなギターと強弱・大小の繰り返すリズムが印象的な”ヒトノキモチニナ~ル”、
四つ打ちビートとミニマムなバンドサウンドが新鮮な”ゲームは1日30分”と、
作品中盤ではこのバンドのアレンジの斬新さを強く感じられる楽曲が続く。
その後の”女子高生”は、バンド結成当初からの楽曲であり、彼らと出会った時に特に好きだった楽曲の1つだ。
MONO NO AWAREから漂う日本的な儚さや憂い・疾走感は初期から持ち合わせたまま、
2019年にアップデートされる形でリアレンジされた。

 

次曲”言葉がなかったら”は、先行配信リリースされ既に話題を集めているリード曲。
「言葉がなかったら/迷わず抱きしめたろう/手紙を読み返し/泣く手間も省けたろう」と、
悲哀ながらも何処か光の当たる美しい曲調・真っ直ぐな玉置のヴォーカルに心掴まれる、
バンド史上最もストレートなミディアムロックナンバー。
2010年代の終わりに、彼らの金字塔的とも言える楽曲が誕生した。

 

アルバムは、映画【沈没家族】主題歌”A・I・A・O・U”で優しく幕を閉じる。
【沈没家族】監督・主演の加納土は、玉置と少年期を共にした友人でもある。
映画は、実際に加納が少年期に体験した『沈没家族』という親を不特定数に一般募集し、
そのコミュニティー内で育てるという新しい共同教育の形を実録ドキュメントで振り返る。
そんな稀有な環境で育った加納とは、玉置を通じ何度か酒を交わした。
稀有であった事をポジティヴに受け止め、底抜けに明るい彼の優しく強い笑顔は、
【沈没家族】で是非目に映していただきたい。

 

青年期から少年期を眺め生まれた今作【かけがえのないもの】は、どの楽曲も作品テーマに疎通しながら、
成長で感じる気付きと青春で感じる興奮や寂しさを、優しさで飲み込んだかのような壮大な1作となった。
独特なバンドアンサンブルとともに、生み出す言葉もより真っ直ぐ大切に、ナチュラルに全面へ抜き出た感覚を抱く。
かけがえのないものは、過ぎゆく時間の中で既に触れていて、最も自然な具合で傍にいるのかもしれない。

RECENT REVIEW

REVIEW TOP

RECENT REVIEW

REVIEW TOP