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Sons and Fascination

『Sons and Fascination』

SIMPLE MINDS

[label: VIRGIN/1981]

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あのU2のライヴァルとも称されていたポスト・パンク・バンド、初期の傑作

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文:久保憲司

 80年代なティアーズ・フォー・フィアーズやトーク・トークのことを書いてもスルーされるだろうと思っていたのですが、けっこうみなさん、興味があるようで嬉しかったです。
 オッサン連中しか読んでないのか、という恐怖にもかられていますが。
 80年代、30年近く前の話ですからね。
 「僕がこれからはパンクだ!」と言っていたとき、パンクが敵と考えたヒッピーの音楽なんか、7年くらい前の音楽でしたからね。
 たった5年くらい前の音楽を聴いている人に「お前らいつまでディープ・パープル聴いてるんや、髪切れ、髪」とクダをまいていたんだから、恥ずかしいです。
 なるべく、いまの時代に必要とされる30年前の音楽を紹介していきたいです。ポスト・パンクというくくりで。パスト・パンク名盤100くらいみたいな感じで100アルバムくらい紹介したいです。
 というわけで、シンプル・マインズです。”ドンチュー”という凄いメロディが頭にこびりついている人は、もう完全にオッサン、オバハンでしょうね。
 この曲が入った映画『ブレックファースト・クラブ』のサントラがありえないくらい売れて、シンプル・マインズはビッグ・バンドになったのですが、このアルバムが出る3枚前に、シンプル・マインズは凄いアルバムを出しているんです。それがこの『Sons and Fascination』です。僕はこのアルバムがニュー・ウェイヴ、エレクトリック・ミュージックの頂点のひとつと思っています。ノイ!というか、コニー・プランクのヘヴィーなサウンドに影響され、完成された素晴らしいヘヴィでエッジーな音楽です。
 リズムから音色、メロディ、いろんなアイデアに溢れています。本人たちもそれを自覚してたんでしょう。アルバム2枚分を一度に作ってしまいました。当初は『Sons and Fascination』『Sister Feelings Call』と別々に時期を少しずらしリリースされました。CDリリース時に一つにまとまり『Sons and Fascination/Sister Feelings Call』となってしまいましたが、僕的には『Sons and Fascination』だけのほうがいいと思います。
 『Sister Feelings Call』のほうがアヴァンギャルドとかそういうのじゃなく、曲のレベルが『Sons and Fascination』の曲より落ちているというくらいなんですよね。だからこそ、いい曲だけを集めた『Sons and Fascination』はすさまじく凄いのです。捨て曲なしですよ。CDだと8曲目までですね。だまされたと思って聞いてみてください。しかも、プロデューサーはスティーヴ・ヒレッジ(元ゴング、現システム7)ですよ。
 この斬新なアイデアを下地にこの後シンプル・マインズはビッグなバンドになるのですが、このトンがってた時のシンプル・マインズが一番かっこいいと僕は思うのです。
 シンプル・マインズはデヴィッド・ボウイの“ジーン・ジニー”の歌詞からつけられた名前ですが、とろい奴とか、知能が遅れた人たちへの差別用語で、いい言葉じゃありません。ザ・スペシャルズと一緒ですね。ザ・スペシャルズも自分たちが特別とか言っているんじゃないんです。自分たちは変わっている奴ら、頭のおかしい奴らという意味なんです。この辺が両者ともさすが、元パンク・バンドという感じですね。

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