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24アワー・パーティ・ピープル(BOOK)

『24アワー・パーティ・ピープル(BOOK)』

トニー ウィルソン:著、江口 研一:翻訳

[label: ソニーマガジンズ/2003]

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音楽の現場の理想とは?

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文;久保憲司

 この前紹介させてもらった『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側』(編注)という本が売れているのか売れていないのか、どうなのか分かりませんが、『グレイトフル・テッドにマーケティングを学ぶ』という本は売れてます。悔しいです。
 噂なんで、本当かどうかわからないですが、『グレイトフル・テッドにマーケティングを学ぶ』を読んで感動したアミューズの会長さんが、社員に配る為に100冊買ったという噂もあります。
 『ハシエンダ』や、今回紹介するイギリスのインディ・レコード、ファクトリー・レコーズのトニー・ウイルソンの伝記『24アワー・パーティ・ピープル』は、そんなことは絶対ないです。だから、いまは中古でしか買えないです。買えるうちに買って読んでみてください。
 でも、ここに書かれていることはビジネスのビもないです。理想だけです。なんでそんなことになったのかというと、それはパンクがヒッピーの子供だからです。パンクはヒッピーのアンチととらえられていますが、じつはパンクとはヒッピーの子供なんです。
 セックス・ピストルズのマネジャーだったマルコム・マクラーレンがヒッピーというか、5月革命に多大な影響を与えた状況主義者だったということからもわかるように、パンクを作った人間たちは、ヒッピーができなかったことをやろうとした人たちなのです。だから、パンクはヒッピーより過激な思想になったのです。
 『24アワー・パーティ・ピープル』の山場で一番感動する所は〈ファクトリー・レコード〉が倒産しそうになって、〈ロンドン・レコード〉に身売りをしようと画策している時に、ビジネス・ミーティングにキレたトニー・ウイルソンが、「俺たちには契約書もなにもないんだ。俺たちは誰も所有しない、されない」と気がふれたように、彼が一番最初に契約したジョイ・ディヴィジョンとの血で書いた覚え書きを〈ロンドン・レコード〉の人間に投げつける所です。
 この本を映画化した『24アワー・パーティ・ピープル』でも、描かれていましたが、どういうことなのか、わかりにくいですよね。
 でも、要約すると彼らはヒッピーが信じた理想で、本当にビジネスをやっていたということなのです。ヒッピーが信じたというか、人間の根本的な絆の話ですよね。ヒッピーって、進歩的なことを言っていたようで、じるは彼らの思想の原点は人間回帰なんですよね。
 パンクもまたそういう運動だったのです。だから僕としては『グレイトフル・テッドにマーケティングを学ぶ』よりも、70年代から90年代にかけて、ヒッピーを過激に押し進めたパンク思想で時代を作った『24アワー・パーティ・ピープル』『ハシエンダ』を読んで欲しいなと思うのです。
 そして、2010年以降を乗り切って欲しいなと思うのです。
 で、今気づいたんですけど〈ハシエンダ〉、〈ファクトリー・レコード〉、〈クリエイション〉といったパンクの子供達が破綻するのって、イギリスがバブルに向かう2000年前夜なんですよね。
 結局彼らを最終的に殺したのはマネー・ゲームだった部分も伺えるんです。彼らはマネー・ゲームに乗ろうとした部分もあり、やっぱりこんなのくだらないとサジを投げた部分も、両方伺えるのです。ひとことで言えば、時代が変わったということなんですが。最後の海賊達の冒険を読むというのは面白いです。そして、新しい海賊たちが出てくるのを僕は期待してます。

編注:『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側』のレヴューはコチラ

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