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LEND AN EAR

『LEND AN EAR』

PIGBAG

[label: Y/1983]

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ポップ・グループから派生したファンクの快楽

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文:久保憲司

 マーク・スチュアートの政治性に嫌気がさして、メッセージを発しないバンドとしてピグバグはある、みたいなイメージがあるけど、それは間違いである。
 ザ・ポップ・グループのベーシスト、サイモン・アンダーウッドがザ・ポップ・グループを抜ける前からピグ・バグはあった。ピグ・バクは正確にはブリストルのバンドではない。
 でも、当時はシングル「Papa’s Got a Brand New Pigbag」の大成功はザ・ポップ・グループの理念が証明されたような感じだったのだ。こんな曲がよく売れたと思うが、時代はバブルに向かう頃で、このファンキーなアフロ・キューバンな曲が一般大衆に理解されたのだ。この頃のイギリスは誰もカリブに行こうなんて思ってもいなかった。いや、行けるなんて誰も思ってもいなかった。「Papa’s Got a Brand New Pigbag」はイギリス・バブルのファンファーレのような役目をしたのだ。
 ピグバグが本当に評価されないといけないのは、2枚目の女性ヴォーカルを入れてからだと思う。多分、彼らはニュー・ジャージーのトニー・ハンフリーズの〈ザンジーバー〉に行ったんだと思う。トニー・ハンフリーズのKISS FMを聴いただけかもしれないが。そして、〈ザンジーバー〉で流れていた新しいハウス・ミュージックを自分たちのものとして作り上げた。
 このアルバムは誰も評価しなかったが、彼らの偉大さは、別世界の音楽をレコードだけを頼りに再現していたことから、本当に旅をし、そこの音楽に影響され、自分たちの音楽と作り替えていったことだと思う。そして、誰よりも早くこんな新しいダンス・ミュージックを作っていた。

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