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HYPER FOLK

『HYPER FOLK』

bonobos

[label: SPACE SHOWER MUSIC/2014]

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八百万の神への「ありがとう」 

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text by LIQUIDROOM STAFF

3月は季節が激しく揺れ動く。長い冬を超えて、春に向かってあらゆる命が一斉に息吹いていく。前作 『ULTRA』から2年3ヶ月ぶりに届いたbonobosの6枚目のフルアルバム『HYPER FOLK』は、この季節に生きとし生けるものの一瞬の煌めきを閉じ込めたような快作である。ダブやレゲエ、ロックやポップ、ジャンルレスに縦横無尽に行き来する自由なスタンス。エレクトロニックもアコースティックも関係なく、打ち込みも生楽器も括りなく、正に〈bonobos〉としか形容出来ないバランスで鳴る、柔らかく温かなシンフォニック・サウンドが全開だ。彼らの真骨頂とも言うべき最高にキャッチーなポップチューンであるM1“グッドモーニング・マイ・ユニコーン”、駆け抜けるメロディーと溢れる祝祭感が印象的なM6“三月のプリズム”、7inchでも既にリリースされているbonobos流SKAナンバーM10“うつくしいなまえ”など、今後のライヴ定番曲にもなっていくであろう開放感あるナンバー達は、このアルバムを象徴するようなキラキラとした光に満ちている。
タイトルである『HYPER FOLK』を辞書的な意味に言及すると【フォーク=民謡】。ソングライターである蔡忠浩の紡ぐ音楽は、確かにどこか懐かしい手触りがある。寓話的な匂いがする。物語であり、おとぎ話のようでもある。彼の選ぶ言葉の端々には、この世に生きる人間ばかりでなく、世界のすべての事象への、八百万の神への「ありがとう」が込められている気がする。
3月といえば、311の震災からもう3年が経とうとしている。多くの人びとの日常をあっという間に壊したあの日。その後の原発事故は今現在も進行形で問題は解決を見せていない。消えない爪痕はずっと残っている。しかしそんな中でも絶望してばかりではいられない私たちは、いまを、どう生きていくのか。それでも世界に、「ありがとう」という気持ちで向き合う、ということ。恐れを知らない希望を讃えた現代のおとぎ話として、bonobosの新作はこの春、高らかに響き渡る。

主演はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」でアメ横女学園のセンター・有馬めぐを演じ、テレビ東京系「大東京トイボックス」で連続ドラマ初主 演を果たした足立梨花。友人役でガールズ演劇ユニット「Girl<s>ACTRY」で活躍中の三田寺理紗が出演している。

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