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Back To Basic

『Back To Basic』

BTB

[label: Pan Pacific Playa / 2014/2014]

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ハマのトークボクサー BTB が夏の終わりに贈る、聴いて嬉しい 11 曲詰め合わせギフトボックス

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text by 斎藤寿大 (Pepe California) http://pepecalifornia.com/

いきなりですが、ヴォコーダーとトークボックスって似てるようで全然違うって知ってました? シンセサイザー(合成された)サウンドをマイクで拾った声でフィルター (加工)するヴォコーダーは、ヒューマン風ではあっても間違いなく電子楽器。一方、ギターやシンセの音を実際に口の中で鳴らしてマイクで拾うトークボックスは、物理的にもサウンド的にもやっぱりボーカルなわけで、ヴォコーダーの先にはアンドロイドに歌わせる初音ミク的なビジョンがあるのに対して、トークボックスの先には、声帯が電子化されたサイボーグとしてのボーカリストが存在し続けるのです。

そんなトークボックスの、生身の肉体から発せられるからこその温度&湿度が、横浜のアーバンな景色&海からの湿った風と絶妙にミックスされて、LUVRAW & BTBというデュオの世界観を決定づけてきたわけですが、今回はそのBTBが初のソロアルバムをリリース。山達から和田アキ子、はたまたプリンスからカーペンターズまで、自身の敬愛する音楽をカヴァー&再構築。LUVRAW & BTBファンはもちろん、間口の広い選曲と安定感あるアレンジ、トークボックスの魅力が相まって、それこそ子どもからクラブミュージックファン、年配の音楽ファンまで楽しめてしまうんではないかと思える、とってもキャッチーなアルバムに仕上がっている。

BTBの魅力を伝えようとすると、どうしても「メロウ」とか「アーバン」とか「サマー」とか「ブリージン」とか言いたくなってしまうし、実際そういうサウンドがこれまでも人気を博してきてるんだけれど、それはデュオ時代から持っているものだし、聴けば5秒で分かるのでここではスキップ。このアルバムならではの魅力、そしてBTBソロの魅力は、BTBと音楽とのちょうどいい〈距離感〉なのではないかと思うわけです。

アーティストとしての情熱とエゴ(そして時には挫折)。パーティピープルとしての盛り上げ欲と隙あらばモテたい欲。音楽ファンとしての気取らない興味。そういう音楽にまつわるエトセトラがないまぜになって、アーティストという面はもちろんありつつも、(カヴァーアルバムという選択も含め)リスナーと一緒になって自分も音楽を楽しもうとする、いい意味での軽いノリが、音楽とBTBとリスナーをよい塩梅な〈距離感〉に置いてくれることが、押しつけがましくなく気楽に、けれど愛着をもって楽しめるアルバムに仕上がっている理由ではないだろうか。BTBには是非カヴァーものをシリーズ化して欲しい。

BTB公式ツイッター/ウェブサイト
https://twitter.com/btbtok
http://www.panpacificplaya.jp/blog/

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