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from My Window

『from My Window』

Calm feat. Moonage Electric & Acoustic Ensemble

[label: MUSIC CONCEPTION/2015]

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電子楽器と生楽器を用いてCalmが描いた、美しいサウンドデザイン。

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TEXT by 渡辺克己

DJ/プロデュサー、そしてライブアクトやサウンドエンジニアなど、さまざまな側面を持っているCalm。振り返れば90年代から00年代にかけて、新しいビートの旗手として、Organ LanguageやFarr、そしてBoss The MCとのJapanese Synchro Systemなど、さまざまな名義を使い分け、ジャズ〜エレクトロニカのシーンを横断できた唯一無二の存在だった。その理由は、まず美しいサウンドを創造する作曲家/編曲家としての才能。そして、クリアでハッキリした音を創造するサウンドエンジニアとしての手腕もあったと思う。
 Calm Feat.Moonage Electric & Acoustic Ensemble名義としての新作は、ペリー&キングスレイやジョルジオ・モロダーを彷彿とさせる、幻想的で美しいシンセサイザーのアルペジオの「Room Of A View」で幕を開ける。SF映画のエンディングで使用されても不思議ではないほど、映像的な楽曲だ。しかし、「Night Ride」からシンセサイザーの音色と、ピアノや琴の旋律がバランスよく共存し、曼荼羅のような世界を描き出す。「Love Velocity」や「Floating Point」を通過し、5曲目「Cosmic Language」を堺にシンセのアルペジオが鳴りを潜め、ジャジーなドラムのリズムに、エフェクトをかけたシンセ音がパーカッションのようにビートを際立たせる。ラテン(ちょっとタンゴ)な6曲目「Shadow For Two」、レゲエ/ダブ色の強い7曲目「Ascend And Descending」など、さまざまなリズムの解釈とシンセの融合が並び、ピアノとスティールパンのメロディが美しい「Pearl And The Sun」で幕を閉じる。生楽器と電子楽器、そしてバラエティに富んだ世界のリズムの共存。こう書いてしまうと、少し過剰な音楽に感じるが、Calm特有のバランス感覚で、時に美しく、穏やかにまとめている。
 現在、青山にあるの音響プロデュースに携わっているというCalm。例えば、DJ NORIがプレイする「TREE」(毎週水曜日)では、往年のディスコから最新のハウスなど、さまざまなダンスミュージックがプレイされる。思わず時間を忘れて踊る時もあるけど、ただフロアに立ち尽くし流れる楽曲の美しさに耳を傾けてしまうこともしばし。DJの手腕も大きいところではあるが、クラブでありながら、優しい音を設計したサウンドデザインにもあるのではないだろうか。

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