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As If

『As If』

!!!(チック・チック・チック)

[label: Warp Records / Beat Records/2015]

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人力でハウスミュージックを再現させた、最高のパーティバンド。

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text by 渡辺克己

「夕方からパーティが始まり、ゆっくりしたラテンやジャズで踊ったら、あとは明け方までシカゴやアシッドハウス、ディスコで盛り上がる」とは、80年代からヒップホップやパンクのアーティストやライブを撮影してきた写真家のジャスパー・ヘインズに、NYやサンフランシスコで遊んだパーティの内容をたずねた時のコメント。倉庫を利用した大掛かりなウェアハウス・パーティだけではなく、都市部に住むバンドやDJなど音楽好きたちは、ギャラリーやカフェにもサウンドシステムを持ち込み、日々小規模のパーティを楽しんでいるという。
 !!!(チック・チック・チック)のメンバーも当然、常日頃からパーティを楽しんでいる様子。“最狂のパーティバンド”とは大袈裟なワケではなく、新作やライブの告知に紛れてSNSに、ハングアウトしているメンバーの写真がアップされている。明け方に醜態をさらしたものもあり、どうにも親近感が持てる。改めてSNSの利便性を感じる瞬間だ。
 2年前に『THR!!!ER』(13年)という、もうタイトルからして、かなり思い切ったパーティアルバムを発表した!!!。当時のライブ動画はもちろん、これまで来日公演を見て体感しているが、非常に演奏技術が高いグループだ。ただでさえ上手いにも関わらず、『THR!!!ER』の演奏面はとても生演奏には聴こえないほどだった。意図的にハウス/テクノといったダンスミュージック的な音響、音圧の加工が施されているのかもしれない。常態的に筆者も日々世界中から届くダンスミュージックのヴァイナルをチェックしているが、一聴した限りでは生演奏とは信じ難い曲も多かった。なぜバカテクバンドがわざわざこうしたアプローチを実践したのか。取材をしたわけではないので正確には不明だが、音圧や楽曲の構成などから鑑みると、すべてはパーティのため、すべてはフロアで音楽を楽しむ人のために、というようなバンドの意志を汲み取ることができる。現時点ではこう考えて合点いくしかない。
 10月6日にリリースされたばかりの新作『As If』。さすがに最狂のパーティバンドだけあって、ハウス/テクノを中心としてダンスミュージックのいまを、!!!独特の解釈で切り取った傑作になっている。まず、冒頭の「All U Writer」からいきなりインストメントゥル。シカゴ/西海岸で活動するハウスミュージックのプロデューサー、デリック・カーターのようなハネたビート、ブリブリと揺れるエレクトリックベースに、パット・メセニー とスティーヴ・ライヒ 「Electric Counterpoint 」な美しいギターのフレーズが奏でられる。そして「Sick Ass Moon」や「ooo」、「Bam City」にはシカゴハウスの廃退感と叙情性が交差するシンセに、ニックの美しいファルセットボイスが乗る。ダンスミュージック特有のアッパーさを伴いながら、どこかセクシーなNY/西海岸を席巻するディープハウス/ロウハウスからの影響も大幅に投入されている。これがライブでどう再現されるか、楽しみなところだ。

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東京公演はこちら!
https://www.liquidroom.net/schedule/20151009/25696/

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東京公演完売の!!!(チック・チック・チック)、深夜の追加公演を緊急発表!!!
海外からKINDNESS、日本からYOUR SONG IS GOODら豪華ゲスト陣を迎えた狂乱のミッドナイト・パーティー開催決定!!!
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