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REIWA

『REIWA』

清 竜人

[label: キングレコード/2019]

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平成と昭和のハイブリッドで描く令和

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text by 兵庫慎司

 いわゆる普通の……という言い方は語弊があるが、「これ以降と比べると」という意味で、そう言わせてください。いわゆる普通の男性ソロ・アーティスト「清 竜人」として2009年3月にデビューし、4年半でアルバム6枚をリリース。次は、2014年から「一夫多妻制アイドルユニット」である「清 竜人25」で活動をスタート、2年半で2枚のアルバムをリリース。その後半の2016年からは、並行して「リスナーとバンドを結成する」「音源もライブも無料」「ライブで一緒に歌っても楽器を持ち込んで演奏してもよい」という「清 竜TOWN」を立ち上げ、2017年にツアーを行い、ライブ・アルバムを作ってリリース。

 

 

 そして2018年、7月リリースのシングル『平成の男』から始まった音楽は、名義としては普通の(……という言い方は……以下同)男性ソロ・アーティスト「清 竜人」だが、今回は本人曰く「昭和の時代から活躍している音楽家と平成元年に生まれて平成の時代を生きてきた自分が手を組んで、次の時代への橋渡しになる音楽を作りたい」というものだった。その目的の下に作られ、新元号発表と同時にアルバム・タイトルが発表されたニュー・アルバム『REIWA』は、ミッキー吉野、井上鑑、原田真二、星勝、瀬尾一三という、昭和の時代から活躍する大物プロデューサーが、2曲ずつアレンジを手がけている(自身も2曲担当)。

 

 曲を書いて歌詞を書いてアレンジすることが「音楽を作る」ことではなく、「自己表現として」と「商業音楽として」の両面で、今この時代に自分が音楽を作って世に発表するだけの意義や必然を求めるまでを含めて「音楽を作る」ことである、だからそのたびに何かしらのコンセプトが必要になるのが清 竜人であり、その形が今はこれ、ということだ。逆に言うと「ずっとこれ」ではない、ということでもあるし、本人的にもこのアルバム一作で終わって次のプロジェクトに行くつもりなのかもしれないが、でもこれ、もうちょっとやってもよくない? というのが、本作を全曲聴きおえて最初に湧いた感想だ。

 

 この声と、このメロディと、このアレンジの相性が、とてもいいのだ。本人もここまでとは予想してなかったんじゃないか、というくらい。本人の作詞と作曲も、各アレンジャーの編曲も、よく聴くと意外なほど「攻めている」ものだったりするのも、このコンセプトだからこそ生まれ得たものではないかと思う。あと、何も知らずに聴いたら「懐かしい」とか「昭和っぽい」とか思わないのではないか、ただ新鮮でおもしろいポップ・ミュージック集として受け取るのではないかとも思う。ずっとやれとまでは言わないが、もう一作くらいは続けてくれることを希望します。

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