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Take Me Down

『Take Me Down』

Pepe California + TAKEDA KAORI

[label: PPC RECORDS/2019]

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日常の延長にある桃源郷
相思相愛を感じる幸せなコラボレーション

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text by 山田 佳緒里

ペペ・カリフォルニアの新譜である。ペペ!ぺぺの新譜……!!久しぶりの朗報に興奮してしまった。前回リリースされたアルバム『White Flag』は2010年、その後は2014年に3枚連続で7インチ・ヴァイナルを発表。それから5年の月日を経てこの度2019年秋にドロップされた今作は、ヴォーカルにTICAの武田カオリを迎えて共同制作された5曲入りのミニ・アルバムだ。

 

優しく煌めくような電子音と、ギター / ベース / ドラム に加えてスティールパン、時にはハンドクラップなどの生音を有機的に組み合わせたトラックはまさに、待ってました!というペペ・カリフォルニアサウンドの真骨頂。それは丸みを帯びて一層メロウに円熟しながらも、程よくポップな心地の良いキャッチーさである。
そこに武田カオリの深く、それでいて透明感のある伸びやかな歌声が、ある種の“憂い”のようなものを纏いながら、ペペの夢心地サウンドに溶け込むというよりも意思を持って立ち上るように、一曲一曲の芯として全体をきゅっと纏め上げている。
控えめに言って、相性抜群である。風通しの良い、相思相愛を感じる幸せなコラボレーション。思わず口ずさみたくなるようなフレーズ。生活にそっと寄り添う、日常の延長にある桃源郷のような芳醇で瑞々しい楽曲群。

 

個人的な思い出を交えると、筆者が初めてペペの音楽に触れたのはおそらく10年ほど前のライヴ現場である。フィッシュマンズにも通じるような独特の浮遊感と、東京代表多幸感ダンスバンドという彼らのキャッチフレーズにも表される、圧倒的なグッドメロディーとリズムに思わずノセられた。また彼らが主催/不定期開催する“ぺぺ祭り”というイヴェントを通して(武田が属するTICAがゲストの回も最高だった)、彼らが創り上げる夜に何度かじっくりと向き合った。それは幸福な音楽体験として身体の隅々まで染み渡り、網膜に焼きつき、今でもふとそのパーティーの光景やそこに居合わせた人々の顔を思い返すたびに、そして彼らの音楽に家でひとり耳を傾けるとき、じんわりと温かい気持ちになる。
笑顔の友人に出逢った瞬間に思わずこちらまで笑顔になってしまった、という経験はおそらく誰しもにあるのではないだろうか。そういった単純に、当たり前に緩やかに穏やかに、生活にたゆたう、連鎖するポジティブなエネルギーのようなもの。ギフトのようなそれを、今までも彼らや、彼らがイヴェントに呼び込むアーティストたちから受け取ってきた。
ひとりひとり、感じ方はもちろん違っていい。ただ、個人的にはぺぺ・カリフォルニアの音楽はひときわ、友人と共有したくなる。だから“祭り”、とは正しい在り方だなと思う。

 

話を戻すと、今作のリリースを記念して、この11月に久しぶりに“ぺぺ祭り”が開催されるらしい。もちろんライヴはwith武田カオリ。マイペースに活動を続ける彼らの音楽に現場で触れられることは本当に嬉しいことである。あぁ嬉しい。このミニ・アルバムを聴きながら、その日を楽しみに待ちたい。

 

 

▶︎LIVE INFO
「9年ぶり(!)アルバムリリース記念スペシャル!」
ぺぺ祭り 2019 ― Take Me Down Release Party ―
当店2F Time Out Cafe&Dinerにて11月23日(土曜日/祝日)17:00より!お楽しみに!!
詳細は以下より。

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